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派遣王女☆ウルスラ / 第16話(4,401文字)

■第16話■


龍姫城へ


扉絵


1頁 フーテンのドラゴンゾンビ


海中

ドワーノフ潜水艦に乗るカフカとアリス
カフカは
「え? なんだ……ウルスラ…」
アリスは
「私たちの後ろになにかいるの?」
アンコウ型の潜水艦の後ろに巨大な影が現れる

ぎゃああああああああああァ〜〜ッ鳴呼ッ△ッAh▽!!

グゴッゴゴゴゴゴ…ガゴグギッ…ゴガッ…ガゴ…ゲア!!
全身が腐って溶けて骨だけになったドラゴンのゾンビがさけんでいる

ぐごごごごごごごごッ!!
(ぶくぶくぶくぶくッ…)
ウルスラは水中のなかで泡でさけぶ

アンコウ型の潜水艦ドワーノフは
「なにをいっているのでしょう…調べてみましょう」
ピピッピピピッ、ピピッピピピッ、ピッコマーン!!
「整いました」

《グゴッゴゴゴゴゴ…ガゴグギッ…ゴガッ…ガゴ…ゲア!!》
(ぎゃああああああああああァ〜〜ッ鳴呼ッ△ッAh▽!!)

ズコーッ!!

「一言一句、おなじことを言うてたんかいッ!!」

ドラゴンのゾンビはしゃべる
「ゴゴガヴァギゴギ…ドモボルンビングブ…ヴェ…」

アリスとカフカはコソコソ話をする
(なんか某薬局の名前と某化粧品名をいってない?)
(えーそれこそ……空耳アワーだろ)
ドワーノフ潜水艦は通訳をする
「整いました……」
「ココカラキヨシとドモホルンピンクルといっています」

ズコーッ!!

ドワーノフ潜水艦は
「ドラゴンゾンビ殿がもうしているのを意訳すると」
「ここからこの(私)キヨシどもが…」
「…ホルンピンクル宮殿にお供します」

カフカとアリスは手をそろえてふる
「いやいやいやいや……まじっすか……」

ウルスラはドラゴンゾンビと握手をする
「キヨシさんていうんだね」
「ソウデガス!!」

ズコーッ!!

「そこはバッチリと通じるんかいッ!!」

ドラゴンゾンビはガニ股で構え、私はあなたに対して下手(したて)に出ていますという意味で手のひらを上にむけ、同時に片方の手は後ろにまわして短刀を隠しもち、相手の口上に不手際があればその場で切りかかっても文句は言えないのだというふうにガニ股で構えて仁義を切る。ウルスラもドラゴンゾンビの下手に対して礼をもっておなじように両足を開いて手のひらを見せる

ドラゴンゾンビは
「私の姓は(聖闘士)セイント、名は(清)キヨシ…」
「アッシの名前はヒト呼んで…」
「フーテンのキヨさんと申します」

ウルスラもおなじガニ股で後ろに短刀を構え
「ささ、おひけえなすって…あたしゃ姓はウルスラ…」
「名はイクリプス…ヒト呼んで『派遣☆王女』と申します」

ドラゴンゾンビは
「ささ、おひけえなすって…」
ウルスラは
「手前、旅中のモノでござんす。ぜひともお兄(あに)いさんからおひけえくだすって…」
ドラゴンゾンビは
「ありがとうございます。再三のお言葉、逆意とは心得ますが、これにて控えさせていだだきます」
ウルスラは
「早速、お控えくだすってありがとうごぜえます」
ドラゴンゾンビは
「いやいやそちらこそ。ささおひけえなすって…」

ウルスラとドラゴンゾンビは
「では、一緒におひけえなすって…」
「これにて仁義を切らせていただきます」

カフカとアリスは
「どちらさんも、そろそろ…よろしいでしょうか?!」



2•3•4•5頁 海底の宮殿へ


ドラゴンゾンビが案内する海中は、全国津々浦々から寄せられた読者からの海中シーンで使われるキャラが満載だ…一つ目海獣やクジラの妖精や海蛇などの新キャラのイラストで溢れかえっている…30分ごとにびっくりしたような目で一段しっぽが増える岩に潜むウツボ、噛みついたり唾を吐きかけたりするイソギンチャク、出歯タコ、たこ焼きを食べるダイオウイカ、エビ鍋アレルギーでぶっ倒れるカニ一座、エレキギターをぶんまわすエイ、漫才をする虎魚(オコゼ)兄弟、溺れるフグ、合唱が騒がしいクラゲ、リウマチに悩まされるウミヘビ、カラスそっくりなサメ、オシャレな黒いロシア帽子をかぶるオキアミ、腹に光る巨大なドアが開くプランクトン、イリュージョンで消えては現れるギンポ、バジルの香りを漂わせるサンゴ礁、クマノミ軍と戦争をするウミウシ軍、オニヒトデ宮殿群、赤いチョッキを羽織るウニ一家の団欒、甲羅に錬金術の絵が彫られたウミガメ師匠と背中に漏斗やフラスコや蒸留器具や銅の寸胴や硫黄や鉛や錫や硫酸などをガラガラと担いだ弟子ウミガメ、ありとあらゆる楽器を打ち鳴らすマグロの一軍、海底で闘う盲目の軍鶏サバ、遊郭の谷で呪術的な罠やハニートラップにひっかかるカツオ、それぞれの磁場を辿るように移動するタラ群、とてつもなく大きな乳房で男どもをたぶらかしている雌イワシたちの宿場街、青龍刀を構えて立つサンマの巨像群、過去への流れに揺れるワカメやコンブの林、海藻の海原、筆舌に耐えがたいほどの音色を奏でる口のない深海生物などが通り過ぎる。そんな海底の道が何日かづついた。それでもそれまではこれといった障害物や盗賊などにでくわすことはなかった
数週間、巨岩が割れた狭間の道を進んでいると一行は、戦士の甲冑と骨がゴロゴロと転がる海溝の滝にでた。そこをロープで降りて海底の森へと入っていった。
一行は沈没した高度な文明をもつ宇宙船が積みあげられては潰れた狭い暗渠の森をあるき、食料が尽きてくると目のないワーム獣を射止めて、炙り肉と塩肉にしてやり過ごし、さらに暗い森の道をすすんだ。眼のない金剛インコがせせら笑う森をすぎると、海中の草木はますます油断できないほどの獰猛さで脚元に絡みついてくる。岩が笑い、囀り、森の木々はさけぶ。その絶叫する声は次第に遠のいたり近づいたりで、かぎりなく陰鬱な景色の沈黙の森を歩くことになる。みなは下を向き力なくうなだれ、各々の、最もひどかった過去の森に悩まされ、どす黒い花菖蒲やホトケノザがゆれ、黒く照りひかるサンショウウオがゆっくりと這いながら襲ってくるので刀で首を刎ねて進まねばいけなかった。
ドラゴンゾンビが飛び降りたその穴からは光はなく、ついにドワーノフ潜水艦の明かりはきれ、わずかに発光する苔の灯りを頼りに、みなは夢遊病者のようにそれぞれが見る魔王の悪夢に苛(さいな)まれながら、ほとんど口を聞くこともなく、炭坑の穴のような岩の穴をひたすら進んでいく。ドラゴンゾンビは途中《気にするな、前に進め》と言う看板を見て「もう引き返すことは叶いません」とふりかえる。カフカたちは力なくうなずくだけでドラゴンゾンビに誘導されるがままに先へとすすんだ。
それからいくつか魔王の古城のシルエットが見える魔の台地をぬけて、とうとう海水が一滴もない闇を抜けでた。その闇はなぜか澄み切った爽やかな大気に満ちあふれていた。一行はその巨大なエアーポケットのなかで2週間ほど眠りつづけ、その壁が蠕動するようにうごめく暗闇のなかで深い眠りに落ちた……



6頁 到着




「みんな見て、ついたみたいよ」
潜水服を脱いだウルスラの声で一行は目覚めた
日は高く昇っていた
ドラゴンゾンビはぶちぬき4頁にも渡って案内役という大役を務めた安堵で腰から地面に崩れた。カフカたちは新大陸のあまりにも美しい景色にあごを外し呆然となった。目の前はシダや椰子に囲まれ、穏やかな朝の光を浴びて、石でできた白い粉をふいた無数のプロペラがついた巨大な帆船が横たわり、わずかに右舷に傾いた船のマストから甲板にいたるまでが真っ白な蘭の花でおおわれていた。船体の底はフジツボと小判鮫が化石になって海底の崖と新たな陸との狭間にがっしりと食いこんでいた。カフカたち一行は崖の先端に立って下をのぞいてみる。すると、孤独と忘却と悪意に満ちみちた無数の手がこちらに揺れている。ウルスラは密かな興味や欲望をもって手を伸ばしてみる。無数の手は襲いかかってきた。
ドラゴンゾンビは目印の巨船を指して
「着きました。あそこに横たわる未来船の先がホルンピンクル宮殿です」
ドラゴンゾンビはひざまづいて、ドワーノフ潜水艦から降りたカフカとアリスに向かっていった
「ドワーノフ殿、私はここからはお供はできません」
「巨船の向こうに見えるのが龍姫のお城であります」

骨になったドラゴンゾンビは眼窩の奥を赤く光らせ
ガシャンガシャンガシャンと音を立てきた道を引き返していく

カフカとアリスとウルスラはアンドロイドの戻ったドワーノフを見て
「ドワーノフ殿?」

ドワーノフは目を赤色と黄色と青色に点滅させ
「私(わたくし)にもこれは一体どういったことか…」




7頁 城下町 



ぎょぎょぎょッ!!

街にたどり着いて、一行はおどろく
街を行き交う商人から屋台で商いをするもの、遊郭の格子窓から手を伸ばすもの、走る飛脚、宦官のような風体のもの、籠をを担ぐ人足、お姫さま、茶屋や団子屋の主人、地蔵までもがすべてドワーノフだった

ドワーノフは自分を指さして
「え、私ではありませんよ」



8頁 軍都龍姫城




ウルスラたちは巨大な門を見あげる

目の前には広大な広場があって、その先に城が豆粒ほどに見える
カフカは双眼鏡をだしてのぞく

《龍姫城》

と叢書体で書かれてある

広大な広場では、木人相手に拳法を組み手をする坊主集団や素手とナイフで殺し合いの練習をする軍団、甲羅でできた巨獣を相手に各方面から機関銃で三点バーストを浴びせかける集団、壕を掘って手榴弾を抱えたまま飛びこむ集団、毒料理を試食するクッキング集団、裸になってお色気ポーズを取る集団、みんなドワーノフとまったくおなじ型のアンドロイド兵だった

ズコーッ!!

みなはドワーノフに気づくと動きを止め、最敬礼をして固まった

「えっッ!! ええ〜〜!!」
みんなおどろく

ウルスラはドワーノフに向かい
「ドワーノフあんたッ!! だれ!?」

ウルスラはドワーノフの肩を叩く

すると、城の広場にいたすべてのドワーノフ兵はウルスラに向かって襲いかかる

ぎゃあああ〜ッ!!

カフカとアリスは抱き合って震える

ドワーノフはアゴに指をつけて考えこむ
「相手が自分ですからね、対応策はどうすれば……」

何十万というアンドロイド兵士がウルスラに迫りかかる

「まちなさい!!」

声が聞こえる



9頁 龍姫




雲(筋斗雲)に乗った天女のような女が現れる
女のサイズは人形のように小さい。まるでカラクリ人形のようだ

「皆の者、やめなさい…」

アンドロイド兵はみな一瞬で、片膝をつき両の手のひらの六指を地面につける

「ぎょい」

雲に乗った女は
「よろしい、顔をあげよ」

アンドロイド軍団は
「龍姫さま」

龍姫は
「そのお方は、ロンゾ将軍ではありません」
「みなは心の修行をつづけなさい」

アンドロイド兵は持ち場の訓練にもどっていく

雲に乗った女は手を宮殿へとさしだし
「ドワーノフさま御一行、どうぞこちらへ」

ウルスラはドワーノフに
「よかったじゃん、ぶっ壊されなくってー」
バキッボコッドカッバシッ、となぐる

何十万というアンドロイド兵士は眼を真っ赤に光らせ向かってくる

やめんかーいッ!!

雲に乗った女は額にかいた汗をハンカチで拭い

「やっぱり…お約束なのね」



第17話へつづく


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