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派遣王女☆ウルスラ / 第4話(7,994文字)

■第4話■


密林の国、グレナダ


扉絵


1頁 コンテナハウス



広大な海の上
無国籍のコンテナ船(ナダル国御用達の武器密輸タンカー)に積まれた、国外に向けて軍の兵舎用に輸出されているコンテナハウスのなか

ウルスラはカーテンを開ける
「あ〜あ、よく寝た」
ボッチはベッドの横にあるノートパソコンをパタンと閉める
「現代の戦争設備はすごいですな武器の商いも手広い」
カテリーナはうなずく
「コンテナハウスが兵舎になる時代なんてね」
ウルスラは両目を札束にして光らせる
キラッーン
「ナダル王、儲かってるわね」
カテリーナは手狭だがキッチンで手を濯ぐ
「普通に住むには狭小住宅すぎるけれど、でも」
「太陽光発電、ガスボンベ、バス、トイレ、水まわり…」
「…上下水完備、Wi-Fi対応、災害・火災保険つき。それに」
アゴのホクロにひとさし指をつけて
「車輪をつけたらトレーラーハウスになるから」
ボッチは話を受けて
「住民税も固定資産税なしですぞ!!」
ルーシーは起きる
「おなかすいた〜」
カテリーナはテーブルに皿を並べ、エプロンを外す
「みんな朝ごはん。できたわよ」

うぉー!!
美味しそうッ!!

みなは合掌。ルーシーは小さな呪文を唱え、食べ始める
窓の外にコンテナ船の護衛のために並走するナダル国海軍巡洋艦が見える
ボッチはパスタをくるくるさせながら
「それにしても、お嬢ッ!!」
「前回のナダル王への石油開発ファンドの妙案でしたぞ!!」
ウルスラはルーシーとおなじお子様ランチをガツガツと食べながら
「えっへん!!」
カテリーナは笑って巨峰を口に入れる
「ナダル王、目が点でアゴが外れてたわ」
ウルスラ両手にフォークをにぎって
「ダテに皇女派遣学院の首席ではありまっすえん!!」
カテリーナは思い出すように
「私が学院生のときは、ファンド講座なんてなかったわ」
「私は18期生で料理と音楽と絵画と語学だったわ」
「1期生のおばあちゃんは刺繍と縫い物と読み書きと、あと」
「…男性を魅了する術だっていってた」

「へー。時代によって花嫁修行って変わるのね〜!!」


2頁 軍港イグノア



グレナダ王国の最大の軍都イグノア
イグノア=マルケス軍港
コンテナターミナルに接岸する様々な船、タンカー、豪華客船など

岸壁に備えついたクレーンはぞくぞくとコンテナハウスを降ろしていく

ガタンッ

わっ!!

「ハウスがクレーンにつかまれましたぞ」
「そろそろ到着ですぞ」

ぐらぐらっ

カテリーナはさけぶ
「みんな、なにかにつかまってッ!!」

きゃはははッ!!

ウルスラとルーシーはコンテナ室内を右に左に遊びまわる

がた、がた

カテリーナはどなる
「ゆれとるわッ!! 静かにせんかーい!!」

「ぎゃー〜ー〜ー〜ー〜ッ△!!」
ウルスラはガラス窓に両手のひらをついてさけぶ

「お嬢、どうなさいました?」

みんなでウルスラが目を飛びだす先をみる。コンテナターミナルに巨大な豪華客船が接岸する
船腹には「NA★DA★RU★MA★RU」と書いてある

数え切れないほどのグレナダ国民が小旗をふっている

ワーッ!!

「もしや………」

ボッチ、厳かに双眼鏡をウルスラに手渡す
「現実、嬢のまなこでお確かめください」

ウルスラ、双眼用を覗く


3頁 カフカ夫妻の凱旋



大勢のグレナダ市民に喝采と大歓声で迎えられるカフカ王子とアリス王女


ズコーッ!!


4頁 落下で入国



クレーンにぶらさがったコンテナは、カフカ夫妻がのる豪華なパレード車の上を通過する

ガタッ

カテリーナ
「すごく、嫌な予感しない?」
ボッチは汗だくで笑う
「これは…仕来りといいますか…」

ガタッ

「儀式といいますか…」

クレーンの爪からコンテナハウスは外れる

「お約束といいますか…」

ヒューッ

ガッシャ〜ンッ!!

瓦礫の山からみんなの足がでる
カテリーナはボロボロになって笑顔で読者にピースサイン
「こういうことね」


5頁 パレード



高級オープンカーに乗るカフカ夫妻、グレナダ憲兵・軍法警察・地元警察・私服警官などに偽装したナダル軍特殊部隊が警護についていた
グレナダ盛大な大パレードに祝福される
で凱旋門、斜塔、寺院、港町、工業都市、炭鉱、競馬場、オペラハウス、スポーツスタジアム、病院、駅前ビル、大統領府、などをカフカ夫妻はパレードで通る
オープンカーのバンパーに縄でつながれたミニゴーカートにカテリーナ、ウルスラ、ボッチ、ルーシーの4人が引きずられながら乗る
ウルスラたちも笑顔で手を振るが目線の高さは市民の膝下だ

次第に、群衆は消え、その賑やかさは衰え、オープンカーが通る街並みは寂れて行く
黒死病やレプラに罹った牛がうろつきまわる村、軒先にヘビばかりが下がる村、羅針盤がぐるぐるとまわる村、広場で眠れる巨獣が横たわる村、人身御供だったと思われる白骨遺体を無数のハゲタカがつつく村、至る所に空の鳥籠がぶらさがる村、穴が空いた所から土気色の手が突きだし力なくおいでおいでをする村、村の中心の教会に石でできた巨人船が乗りあげる村、廃屋の中から絶え間なくガラスの割れる音がする村、どの家の玄関にも「奇跡よとまれ」と描かれた表札が下がる村などを通り過ぎる

オープンカーは巨大な森へとつづく一本道を進む

ガタガタと進んでいくと、木々はひらけて巨大な岩の要塞のようなターミナル駅が現れる

カフカ王子夫妻が乗ったオープンカーはウィリーをして
「ヒヒィ〜〜〜〜〜〜ッン、ブルブルブルブルブルッ」
と停車する

ズコッー!!
ズッコケるウルスラたち

「ウマだったんかいッ!!」

ウルスラたち4人はツッコむ

高級車は人参を食べてきた道を帰っていく

アリスは大きな声で
「あらぁ!! ウルスラたちじゃないの!!」
カフカ王子も
「えッ!! きみたちも表敬訪問かな!?」

ウルスラは畦道に唾をはき
「知っとるくせに!!」

カフカ王子とアリスは見つめあう
「ぼくたちは本当になにも知らないんだよー」
アリスは両手を組んで目を輝かせ
「私たちは、いま…」
「新婚旅行の真っ最中なのよッ!!」

薔薇や百合やさまざまな花びらがパッと宙に舞う

へいへい………
……お熱いようで

ジャングルの中央に一本立つしだれ柳からカラスが飛びたつ
カァ、カァ、カァ


6頁 ジャングル・トレイン



森の中、炎天下、
「ンぎャーー〜ーっおッ!!」
恐竜がうめくのような鳴き声が聞こえると
ジャングルの樹々の葉だと思っていた無数の鳥たちは飛びたつ
巨岩の要塞ステーションが現れる
カフカ夫妻と護衛たち、ウルスラたちもぞろぞろと薄暗いなかへと入っていく
カテリーナはいう
「戦争ってお金かかるのよね」
ウルスラはルーシーが乗るカートを押しながら
「遊園地みたいでわくわくするね」
カテリーナはさけぶ
「ここは見せ物じゃないの!!」
「ここは敵から身を隠す場所!!」


7頁 ロックステーション



広大な駅構内にでる
「わあッ!!」
ウルスラとルーシーは感動でさけぶ

中央のプラットフォームから、何本の軌条が伸びる

古びた列車がホームに止まっている
「族長行き」と書いてある

アリスとウルスラは首を傾げ
「族長行き? これに乗るの?」
近衛兵にひとりが耳に手を当て
「ここにもスパイが大勢ひそんでおります」
「この構内には首都グレナダ行き列車は…」
「……ありません」
ウルスラは驚いて
「え!? ないの!! じゃ帰ろう!!」
ズコーッ!!
振り向いて帰ろうとするウルスラに
「そういう意味じゃないわい!!」
近衛兵は顔を真っ赤にさせる
カテリーナ
「ふっ、子どもね」
ボッチ
「お嬢、まわりに敵がまぎれておるばあい…」
「…ウラをよむ。符丁や暗号で知らせるのです」
ウルスラはさけぶ
「わたし……」
「ルーシーだいっきらい!!」
ルーシー大声で泣きさけぶ
ズコッー!!



8頁 ジャングル・クルーズ



列車は発車すると、いきなり断崖絶壁を登り始める
「きゃっほ〜!!」
ウルスラとルーシーは食堂車を走りまわる

滝壺のようなジャングルに降り立ったグレナダ国王列車は、川辺の水牛をかみくだく百合の群生やニガウリを掻きわけ、レールの上に眠りこけているオオトカゲや大蛇や極楽鳥やマントヒヒを跳ねのけ、古文書にしか書かれていないはずの消えた古代都市の目ぬき通りをかけぬけ、土壌を漕いで走る外輪船と並走し、人魚が池からあがって出産するおめでたい場面を見届けて、一瞬、森が切れた先の山脈の頂をふんで一列になってあるく巨像の群れに手をふり、対岸で国旗がわりにニシキイモの葉っぱをふりまわす原住民に挨拶をし、夕陽が沈む湾でシロナガスクジラをのみこんでいる大王牡蠣を見物し、途中カフカ王子夫妻の新婚旅行のために停車をし岩だらけの河岸にキャンプを張ってバーベキューとキャンプファイヤーと花火大会を付きあい、土石流と火砕流で全滅した村を六つほど越えて、中古の戦争と思われる白骨の山を踏みつぶし、鏡の垣根に囲まれた家が立ちならぶ山岳の村の無人駅でスイッチバックをして三つの火山と二つの塩湖と、五つのカルデラを越え、ようやく砂漠のど真ん中にたどり着いた

「お嬢、到着しましたぞ!!」
「首都グレナダですぞ!!」

みんなひと塩の歓声
「おお〜!!」
ウルスラはさけぶ
「でも長い旅だった〜!!」
カテリーナはうなだれて
「三ヶ月かかったわ…」
「本来なら三日で来れるのに…」
ウルスラは訊ねる
「なんで!?」
ボッチはウルスラの耳に手をあて
「道中のすべては……」
「カフカ王子夫妻の新婚旅行プランに入っておるそうで……」
ズコッー!!
カテリーナはハンカチで額の汗をふき
「いま流行りのジャングルツアーね」

カフカ夫妻は砂漠を見まわす。なにひとつ街らしき建築物は見えない
アリスは護衛に訊ねる
「ええと、首都グレナダは……街はどこかしら!?」
門衛はカフカ夫妻に敬礼する
「首都は地下要塞になります」


9頁 ドワーノフの出迎え



グレナダ国
地下王宮

王の間がひらき、グレナダ国王のドワーノフ王がでてくる
「カフカ王子殿、アリス王女殿!!」
カフカ王子夫妻
「おおッ!! グレナダ王!!」
ドワーノフ国王は笑って
「婚礼の儀、以来ですな」
それから縁のないメガネをさわり
「見ておりましたぞ、ブラックスワンの舞」
「素晴らしい踊りっぷりでした」

ウルスラは股にダチョウの首をつけたチュチュをきて画面の右端から左端までスタスタと移動する

ドワーノフ国王とカフカ王子は見なかったことに
「ささ、王の間に、馳走が用意してありますぞ」
カフカは深々と頭をさげて
「ありがたき、幸せ」
ドワーノフ国王
「皇女のアリス殿には温かい浴室もご用意がある」
アリスは喜んでスカートをつまみあげる
「わあッ!! ありがたき幸せ!!」
ドワーノフは高笑いをし
「新婚なんだ、夫婦みずいらずで…」
「ロイヤルプレミアルームの浴室で…」
アリスはグーでドワーノフをぶっ飛ばす
バヒューン!!
「ヤダァーーッもう。まだ新婚旅行ですわ!!」

ドワーノフはピンボールのように宮殿内を飛ばされる
ガンッガンンッドンッガンッ、パンッゴン、ピコーンッ!!
♪パンッパカパーーン♪
ビューン!!
びゅ〜びゅ〜びゅ〜ッ!!

カフカは笑って汗を垂らす
「ジャックポットに入っちゃった…」



10頁 ウルスラ幽閉される



グレナダ城のスウィートパラス
円卓に豪華な食べ物がならぶ、瑞々しい果物をはじめ、東國の寿司、ヌードル、ピッツァ、ホットドッグ、パエリア、豚の丸焼き、たこ焼き、火鍋、ボルシチ、ティラミス、フォアグラ、マカロン、エクレア、ランプステーキ、小籠包、アサリ料理、ラーメン、ロブスター、生牡蠣、ボッコンチーニ、ダルバート、カジャ、カリー、ローストビーフ、ケジャリー、フィッシュ&チップス、風牛肉の黒ビール煮込み、ブルーベリースコーン、タコわさび、ガスパチョ、あんこう鍋、おでん、キムチ鍋、ぶり大根、シチュー、ミートパイ、クリームブリュレ、みぞれ鍋、カロリーメ◯ト、ゴルゴンゾーラ、ザッハトルテ、腸詰ソーセージ、ムサカ、チョバンサラタス、メネメン、ビーフストロガノフ、ピロシキ、ハンバーガー、塩おにぎり、中央海風のサバのオイル漬け、チョコレートブラウニー、パンケーキ、ロコモコ、メカジキのグリルレモンチーズサワーソース仕立て、ドーナツ、黒トリュフ、ポンデケージョ、たい焼き、濡れせんべい、ナシゴレン、ボボティー、クスクス、卵かけごはんなどが、勢ぞろいしている


ウルスラは目を輝かせ
「いっただきま〜っす!!」

ドワーノフ国王はさえぎる
「またれい!!」

ウルスラ第五王妃殿、ルーシー第六王妃殿、それとちっさいの…
ヌッと顔をだすボッチ
「ボッチでございます」
ボッチは瓶底メガネをひとさし指であげて
「私の名は、アウレリャノ・ダイダラボッチ・セグンド…」
「…以後…お見知りおきを…」


11頁 ボッチの名


「ぎゃっ!!」
ウルスラは目を飛びださせ息をのんだ
「アウレリャノ・ダイダラボッチ…」

カテリーナは目をほそめて鋭いまなざしでボッチを睨める
(……アウレリャノ)

ウルスラはおどろおどろしい劇画風の顔面になって、息をのむ

ドワーノフ国王
「アウレリャノぐうたらなんたらだって?」
「知らん」
ドワーノフ国王は小さい鐘をふる
チャリンッチャリンッチャリンッ
近衛兵が入ってくる
ザッザッザッザッザッザッザッ

「ナダル第五第六王妃…」
「アウレリャノ・ダイダラボッチ殿を……」
「地下牢までお連れしろッ!!」


12頁 地下牢


ウルスラ
「あ〜食べたかったなぁ〜」
ウルスラはルーシーにいう
「美味しそうだったよね〜」
ルーシー
「ね〜」
ウルスラはルーシーと正座で向かい合う
「ルーシー、イメージごっこしよう」
「イメージディナーしよう」
ウルスラとルーシーは牢獄の土をこねてままごとを始める
ボッチはメガネをあげて、ウルスラに
「お嬢」
ウルスラはふりむく。思い出したように劇画タッチの顔になって驚く
「ダイダラボッチ!!」
ウルスラは妖怪ダイダラボッチの真似をする。
「ぎゃおー!!」
ルーシーはゴ◉ラの真似をする
「ギャオー!!」
ボッチは
「お嬢、そっちのボッチじゃないです!!」


13頁 魔物といっしょ



チャリン
真っ暗な地下通路に女の影が現れる
松明に照らされ、影はカテリーナになる

牢の鉄棒をにぎるウルスラたち
「助けに来てくれたの!!」
カテリーナは牢の鍵をチャラチャラまわし
「私、悪いスパイだったのを忘れていたわ」
ガーンッ!!

ウルスラ、ボッチにヒソヒソ声で
(このマンガの主役ってだれ?)
ボッチは考えこむ
ふたりで考えこみ、ふたりはルーシーに訊ねる
ルーシーはカテリーナを見つめる
「えっッ!! えええッ!!」
カテリーナはわさわさと慌てて
「わわわ!! ちがいます!」
「私は鍵をもって地下牢に現れた…」
「…グレナダ王国の女スパイですッ!!」
ウルスラたちすごくがっかりする
「なーんだ」
カテリーナはへこみ、膝から崩れ落ち、女座りをする
「ここまで準主役級の働きなのに…」
カテリーナにスポットライトがあたる
映画監督になったウルスラはぼやく
「オーラってか、映えが足りねえな」
ズコーッ!!

カテリーナは指で鍵の輪っかくるくるとまわし、笑う
「アウレリャノがいるんなら…」
「…鍵がなくとも後ろの魔物…」
「へっちゃらなんじゃない!?」

ウルスラ、ボッチ、ルーシーふりむく
「ズズズ…ズズズズ…ズズズズズ…」
真っ黒な影の真ん中にふたつの目が光る

「ぎゃーーーーーーーッ!!」
「魔物!!悪魔!!デーモン!!」

地下牢の壁に魔物の下半身はめりこんでいる
ウルスラからは上半身がだけが見える
魔物の半身はまるで極北の冬の暖炉の部屋にある鹿の剥製のように下半身は壁に埋まっている。魔物の実体は見えない。地下牢に対流する黒い空気のようだ。ズズズ、ズズズという音は魔物の肺が呼吸するような音だ。肺が膨らむと胸のところの影の表面が張ってそこだけ黒いワニ皮のように照る。魔物が息を吐くと、ワニ皮の皮膚は縮まってまた黒いぼんやりとした気体の黒い影になる。魔物の肉体からあふれでる黒い気体はドロっとした赤黒い液体になって石畳に血の海のようになって広がる
魔物は口をひらき、ぺっと口から人骨のようなものを吐きだす

「ぎゃっっっっっっ!!」
「ああぁああッひあ!!」


14頁 ルーシーは魔物ハンター


ウルスラはボッチの肩をバンバンと叩いて
「パパの名前とおなじ勇者アウレリャノほら…」
「アウレリャノという名前は」
「この世にたくさんおりますぞ」

カテリーナは笑って
「本性を顕しなさい、古(いにしえ)の勇者アウレリャノ!!」
ボッチはカテリーナに
「私は、悪魔でございます」
ルーシーは呪詛を唱える
「……コノカギハオボカギ…ススカギ…ヒンカギ…ウルカギ…ウシロテニタマヱ…」
ボッチは苦しがる
「ぎゃあああ!!」
「やめ、やめてください!!」
「ルーシーさま!!」

ウルスラはきょとんとし
「どうしたのボッチ!?」
「ルーシー様は…ほ本物の魔物ハンターです!!」
ズコッー!!


15頁 ボッチの詠唱


ウルスラは腹を抱えて笑う
「ぎゃははは!!」
ボッチは顔を青ざめて
「ルーシーさま!!やめて、やめて!!」
「私、消滅しちゃいます!!」
カテリーナは頭にゆびをつけ
「どうなってんじゃ、このパーティーは…」
「…バトルロワイヤルだわね」

ぜえぜえ、ぜえぜえ
ボッチはルーシーの両肩をつかみ、ルーシーの呪詛をくるっと壁の魔物に向ける
「……コノカギハオボカギ…ススカギ…ヒンカギ…ウルカギ…ウシロテニタマヱ…」
カテリーナは驚く
ボッチは魔物を睨む
「コヤツ、魔物ではありませぬぞ!!」
ウルスラとカテリーナは見つめあう
「へ!? 魔物じゃないの!?」

魔物の腹の奥から声がする
「助けて………24期生のウルスラ、18期生エカテリーナ」
ウルスラとカテリーナは抱き合って震える

「グルジイ…ワダジヲコロシテ……」
ボッチは4本の指をパッとひらき詠唱する
「………ゴ・グランゴー・ズーラ・ルオイズィ・ガンドロン・デーマ・ド・リヌーダリ・ノヅマの獄炎の罪罰読約盟約書に従い、アウレリャノン・セグンドの奈落の荒野よりきたれ、ゲルヘナン・ガルカナンの大地の火蓋よ、開かれし!! 死爆炎となり魔界から呼ばれしすべてを消滅しつくせ!!」


「超蝕(ウルスラ・エクリプス)!!」

蝕(エクリプス)!!

ウルスラは眩いばかりに光った。


16頁 魔物はキューブリック先生


シュー、シュー、シュー、シューと壁に黒く張りついていた魔物の姿が現れた
ウルスラとカテリーナはさけぶ
「アンナ・キューブリック先生!!」
ウルスラは人間の姿になった老婆に走っていって抱きつく
カテリーナも鍵を開けてかけていって抱きつく
アンナ・キューブリックは二人を抱きしめて
「あーしんどかった!!」
二人は顔をあげて
「どうして、皇女派遣女学院の料理の先生がここに?」
キューブリックは正座をする

……かくかくしかじか……

「ぎゃっひあ!!」
ウルスとカテリーナは白目を剥いてぶったおれる
ボッチはきく
「かくかくしかじかとは…その」

キューブリックは
「私はドワーノフ国王に怪物にされ…」
「この牢に入れられた人間を食べ…」
「壁の後ろの部屋に繋がった調理装置で宮廷料理を排泄していたんだ」

「じゃああの料理ってぜんぶ…」
「オゲー!!」


17頁 次のマネタイズは観光業


カテリーナは指で鍵をくるくるまわしていう
「で、チームはそろったけど」
ボッチはメガネを光らせ
「ウルスラ嬢の今回のお助け案は!?」
カテリーナは
「しっかりとこの国を救ってもらうわ!!」
ウルスラはルーシーとすごろくをしている
ズコッー!!

「料理のキューブリック先生がいる…」
「この国を観光立国にマネタイズします!!」
ボッチはメモ帳を取りだしてペンを舐め「まねたいず?」と書く

「コンテナ船から運ばれた無数の軍事用コンテナハウス」
「カフカ王子夫妻とクルーズしたあふれる大自然」
「キューブリック先生のお料理レシピ!」

「このグレナダ王国を観光大国で収益化よ!」
ウルスラ、読者にピースサイン
カテリーナは
「石油掘削の件は?」
「地下資源は戦争の素です!!」

キューブリックは微笑ましくウルスラ派遣王女チームをみつめる

ザザッ

牢の奥から影が現れる


第5話へつづく


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