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文章教室とSEと二十六億円/20221221wed167

辻仁成の文章講座を受けたという記事をよみ流行作家もついぞ文章教室に手をつけ(染め)始めたのかと思った。図書館はまだ彼の本が平積みされていたが。いや、流行作家だからこそ今のうちに文章教室へとシフトチェンジしているのかもしれない。

まったく話は変わるが、

数年前、京都のスタバでものすごい速さでタイピングをする人を見かけた。「パチパチ」というより「バチバチ」とあまりの凄さに興味が湧き、声をかけた。

彼はシステムエンジニアだった。三十代のスキンヘッドでユニクロなどでは並ばぬようなおしゃれな服を着て首にヘッドホンを掛けていた。
「SEって誰にでも出来るものなんでしょうか?」
いきなりの僕の不躾な質問に彼は優しく答えた。
「プログラミングは覚えてしまえば誰でもできます。速さが勝負になります。時間内にどれくらい量を入れられるか。百メートル走に似ています。それから体力のピークがあります。それが過ぎると若手に駆逐されます。一生はできないですね。稼げる時に稼いでおく。スポーツ選手とおなじです」

翌る日、別のスタバで、二六億円を稼いだというバイトの子と話をした。

二六歳の青年だ。スタバのバリスタの服のせいかまだ学生バイトといっても違和感なく若く見える男子だった。

その子は、あるコンピューターサーバーシステムを開発した。ハッカーから守るためのものだった。それに大手企業が目を付けて、彼は二六億円で売った。

「で、どうすんの? その二六億円」
「来年の春に、新婚旅行に行きます。船で半年間」
「で、どうすんの? その残った二十数億円」
とまでは聞けなかった。
彼は新婚旅行までの間、暇だからスタバでバイトをしているのだといった。
僕はというと当時(今でも変わらぬが)貧乏で、京都大学(吉田寮)で劇団を旗揚げしようと思っていて
「一芝居、打ちたいんだ。百万。貸して」
聞けなかった。

今から新たなサーバーシステムを作る。できない。辻仁成に文章を習ってライターやろうか。嫌味ではない。辻仁成が文章教室、暗澹たる時代だ。

でも、一回で二六億の収入って、その年の課税申告と来年の課税がすごない?
ん? 半分の十三億は税金で取られるのか。でも十三億か。

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