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派遣王女☆ウルスラ / 第9話(7,663文字)

■第9話■


バックトゥー・座・フューチャー PART2



扉絵


1頁 エンスイとの出会い



25年前(若かりしフリードの物語)

フレディシマ国王軍地下基地

試験会場の入り口に看板がさがる

《フレディシマ国家警察・国境警備隊および
内務省直属国家安全保衛部および
国王軍直属勇者討伐遠征軍特殊第八軍団転属試験会場》

一次筆記試験会場

「あと5分です」

最後列で濃紺のフードを深くかぶった青年フリードは頭をかかえる。となりでは赤い服を着た青年は口ぶえをふき、合口でえんぴつを削っている

「終わりだ。えんぴつを置いて紙はそのままだ。帰ってよし」

廊下にて

「おい。でかいの!!」
フリードはよばれてふりむく
「なんだ。小さいの」
「初めてだな。飲みにでも行くか!?」
「落っこちたやつの奢りでな」
フリードはいう
「ふたりとも落っこちたらどうすんよ!!」
フリードは背の低い男を見て笑う

居酒屋にて

奥の小あがりにて、背の低い男はいう
「おれはイノウエ・エンスイ」
「フリードだ」
「フリードか……いい名だな」
「エンスイ。ここでは聞かない名だな」
エンスイはおしながきの裏に字を書いてみる
《井上円水》
「なんだ? この記号は?」
「やっぱ、読めねえわな」
エンスイはガッハッハと笑う
「それがさ…ここだけの話だが…」
「おれ、異世界からきちまったんだ」
「イセカイってなんだ? 歌か?飲み物か?」
エンスイはおしながきの裏に絵を描いてみる
「なんだ? この胃袋の中に島があるのか?」
「いや、ここはオレの故郷じゃないんだ」
エンスイは楊枝を口に入れて
「ここはなんつーか。通過点?」
「通過点?」
指で弾かれた楊枝は空中でくるくるとまわる
「奇術の回転ドアみたいな場所だ」

酔っ払う二人
エンスイはいう
「一次試験を通ったら絶景と謳われる」
「ラゴ・デル・ガルダ湖だな」
フリードは真面目な目をし
「バカいえ」
「あそこは地獄より地獄だって噂だぞ」



郵便配達がチャリンコで路地を通り過ぎる
郵便配達は郵便受けに封筒を入れる
デスクの上に合格通知の紙

……1週間後

フレディシマ領最北端
アブドゥル・ドルフィ辺境伯領地との国境境
ラゴ・デル・ガルダ湖の畔
勇者討伐特殊第8軍団907部隊秘密訓練駐屯地

二次試験会場(合格者は数名のみ、脱落者多数)

「おっ、また会ったな」
エンスイは手をあげる
「おうっ」
フリードが答える
「今日はバディだな」
エンスイは笑う
「互いに助け合おうぜ」

ガシッ

ふたりは手を組む

エンスイとフリードは会場を見渡して
「それにしても……」
「ヘリや戦車や沼やなにやら…揃ってるな」
「実戦よりも武器のフルコースだ」
二人は苦笑いをする

実技試験は始まる
徒競走、木登り、射撃試験からはじまり、せまい空間に閉じこめられた仲間を救助する試験、ヘリコプターや飛行機などが着陸できないエリアから仲間兵士を潜入あるいは脱出させるためのヘリコプターからずっと吊り下げられる試験、三分間のあいだ急所を蹴られつづける試験、武器をもった相手に素手で反撃する試験、低高度の飛行機からとびおりパラシュートをひらく試験、催涙スプレーを顔に噴射される試験、濁った水のなかで浮かぶ試験、有刺鉄線をくぐりながら沼をあるく試験、ノルドン太公領地や他の辺境伯領地に生息する熱帯の大蛇やタランチュラが体を這っても動かない試験、仲間に首にナイフを突きつけられながら首を絞められる試験を終えた

夕暮れ
ふたりはノルドン領地方面の遙とおくにかかる虹をみながら
「相手に催涙スプレーは試験ではありえんだろ」
「ありゃ入隊後の訓練だよな」
がっはっはっは!!
「でよ、同志!!」
「なんだ、いきなり!!」
「フリードちゃん!!」
「だからなんだって!!」
「じつは……あそこの美女…」
エンスイは、空挺部隊の戦闘機のヘルメットを片手にさげて格納庫から帰っていく女性兵士の後ろ姿を目で追う
「お前なァ……ここは昇級・転属試験場だぞ!!」
エンスイは無邪気な子どものように笑う
「なにを考えて生きてるんだ!?」
「だってみろよ、あれ」
エンスイはいうと、女はふりむき、固まったまま立ち尽くす
女はじっとフリードを見つめている
エンスイは女をじっと見つめている

夕暮れが湖上に沈んでいく

2人の男と1人の女が飛行場に尽くす小さい影


最終試験日に残ったのは3名だけだ
エンスイが見初めた女がいた

「これより三人はそれぞれ部屋に72時間、閉じこめられる。以上」

最終試験は拷問
自白剤を飲まされても自白しない試験

72時間後

「3人とも合格だ」



1頁 政略的電力供給



雪山連峰の断崖の上にフレディシマ王立孤児院・特別養護老人総合サービス福祉事業複合施設がさまざまな形で建ちならぶ。高度は成層圏の位置にありはるか雲の上なので雪はないがうす暗い

施設は、地上からのびる長いながいトンネルをぬけて葛ら折りの道をジグザグにあがった崖山の頂をちょっと均しただけのでこぼこの敷地に建つ正門をくぐって、右手から順にぐるっと、まずは特別介護施設からシルバーパワー・派遣センター、社会福祉協議会・評議会、ふれあい福祉センター憩いのいえ、地域健康センター・元気いっぱい館、ふれあい児童館ひまわりっこクラブ、王立子育て支援センター、あったか湯、総合葬儀やすらぎの杜がたちならぶ

親族などの訪問でカボチャの馬車などを停める停車場は中央の敷地に円となってある。だが入居者への訪問客はほとんどいない。職員の車はない。高速エレベーターが施設内にありdoor-to-doorで山の麓にある城下町のシネコンモールの地下駐車場に直結している

太陽光が射さないフレディシマ王国の電力供給は太陽光発電だった。日がささなない国が太陽光発電。それは政略的な電力供給の方法である国に依存している。フレディシマ王国のどこの公共施設の建物にも共通していえることだが福祉事業施設施設関連においては建物の敷地には砂漠のハイウェイに立つ巨大看板のようなソーラーパネルが、ノルドン大公国を向いて垂直にたつ。その看板一面に、ノルドン領地から光線があたる

50メートルプールを縦にしたような真っ黒いソーラーパネルにこの断崖の上に建つ複合福祉事業施設の名が連なる

◇介護保険事業部
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・通所介護(デイサービスセンター)
・認知症対応型通所介護
・訪問介護(ホームヘルパー)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・委託介護支援事業(ケアマネージャー)
◇障害者事業部
・委託介護事業部
・生活介護事業部
・短期入所事業部
・移動支援事業部
・相談支援事業部
・生活サポート事業部
◇公益事業部
・介護タクシー
・配食サービス

《広げよう・やさしい心・ホスピタリティ》

寄附:ノルドン大公国領主、ノルドン・ゴダルゴ大公爵


2頁 わいわい・鈴鳴苑



《わいわい・鈴鳴(すずなり)苑》

施設内をつなぐわたり廊下を、看護士たちが餅が入った木製のばんじゅうをかかえて忙しなく動きまわる。右手の腕時計を見る
「あら、もうこんな時間、始まっちゃうわ」

タッタッタッタ

食堂

日ごろ整然とならぶ長机はたたまれて、ホワイトボードがある後方へと整理され、広大なスペースになった大食堂ルーム。そこには入居者の面々が集まっていた。車椅子に乗った老人たちと子どもたちと介護士たちと看護士たちと保育士たちはがやがやがやしている
ノルドン公爵領地にむいた窓際で瞳孔を開かせ呆け顔の老人、目を瞑って手芸の針に糸を通そうとする老婆、刮目する盲目の老人、突発性リウマチで縮んでしまった身体の現実に耐えきれなく無数のリストカットの跡が見える美少女、あまりに長く生きすぎて生き霊となった猛将などが車椅子に座らされ、それらの隣に盲導犬やゴールデンレトリバーやシベリアンハスキーや狛犬などの大型の犬がすわる。車椅子の老人たちと大型犬の間を縫うように、右手にぬいぐるみ左手に目が光って胸が開くロボットをつかんだ園児ががやがやとさわぐ。「ぎゃー、あっくんがぶったー」「ぶったのはさやかちゃんが先だろ!」「仏陀がブッタ」「私は仏陀」「仏陀がふっとんだ」ほうぼうでぬいぐるみの引っ張りあい小競り合い喧嘩が起こる。廊下側の入り口では内股でモジモジする園児が「おれのまゆだ結婚しよう」「ごめん昨日さとしくんに告られたんだ」「ウ〜ウ〜!!ジジッ…警視こちら101から警視庁…ジジッ」「六本木6丁目火災事件が発生…ジジッ」「ズドドドドドドドドドッ」「バキューッン!」「バタッ」「…るまサンが……ころ・ん・だ!!」「♪かーごめかごめー」「ここは、外じゃありっまっせ〜ん!!やめなっさーい!!」小型犬と大型犬が猫を追いかけまわす「ガルルルルッ」「コケェーッコッコッコッコッコ……」「キャンキャンッ」保育士や看護士たちの声が聞こえる「ナースコール、なってるわよ」「え、私の?」「あ、私のだ」「208号室」「私、点滴チェックのついでに、いってくるわ」「もー、沢渡さん、またお尻触った?」「それ、ボケてる真似よ、ボケ真似…」

食堂ルームの前に設営された学校の教壇ほどの小さな舞台がある
裏でスタンバイしている人形劇団員は腕時計を見、ハンドベルを鳴らす

シャンシャンシャンシャンッ

会場のみなは静まる

ざわつく最前列に美女のウルスラとルーシーと美男子のボッチが手刀を切って割り込んできて、体育座りで座った。
ウルスラは幕の内弁当をひらき、ルーシーに
「わくわくするね〜」
 

大型の紙芝居の枠ほどの舞台の緞帳が横にひらく


3頁 人形劇の寓話


暗黒の山の模型の背後からヌッと巨大な人形が現れる
その巨大な人形は胸から乳房をふりまわして暴れている
「極悪の勇者だ!!」
会場はいっせいにどよめく
ざわざわざわ

山に現れた勇者は、怪獣のように暴れまわる
そこへ討伐隊が現れて、戦いを挑む

舞台の裏からセリフが聞こえる

大きな戦争がありました
男たちは兵になってみな死んで居なくなりました
村の女たちは困り果てました
そこへ勇者と名乗る男がやってきました
女たちは勇者に事情を話すと、勇者はいいました
「おれの条件をのむなら助けてやる」

勇者は剣をだして丘の城をさしました
「あの城にくればお前らは息子が産まれる。ただし産まれるのは息子だけだ。金貨も好きなだけくれてやる。どんな暮らしもできる。好きなように暮らせば良い。ただし17年だ。17年たったらお前たちの息子はみなおれのものだ。おれの兵隊として次の戦争に連れていく」

女たちは男がひとりもいない村で全員が老いて死んでいくか、少なくとも17年は幸せに暮らすか、悩みました。
結局、女たちは勇者の条件をのむことにしました

勇者の条件はこうでした
17年後に北の山に魔王が現れる。そいつを倒せたら、息子たちはぜんぶ返してやる

村は発展しました。息子たちは馬や馬車を乗りまわし剣術を身につけ狩りを覚えました。母になった女たちはごちそうやお酒を食べ、息子たちと贅沢な暮らしをしました

17年の月日が経つ日、女たちは森に入って車座になって相談しました
そこへ魔女がやって来ました
「どうしてこんなところに座っているのか」
女たちは事情を話すと魔女は
「森の奥へ行くと、岩が崩れ落ちて小屋のように見えるところがある。そこへ入って行くとお助け道具が一式そろってるよ、楽器とか箱とか鍵とか壺とか色々なものがあるよ」と教えてくれました
年増の女は「そんなガラクタばかりで魔王が倒せるわけがない」と一笑しました
ですが若い女は無駄でも森へいってみようと出かけていきました

森の中を歩いていると、岩が崩れた小屋がありました。こっそり中をのぞくと老婆がひとり座っていました。外から声をかけようとしたそのとき、丘の城の勇者がこの岩小屋をめがけ駆けてきたのが見えました。若い女は慌てて物陰に隠れました
勇者は小屋の中に入ってくると、中の老婆は勇者にたずねました
「今日はどうだった? いくつ滅ぼしたのだい?」
「なかなかうまくいかないぜ。だが明日も村を抑えてあるから、あいつらの息子たちを兵士に頂きだ。あいつらに魔王は倒せっこない」
「あんただったら魔王をどう倒すんだい?」
老婆が聞くと勇者は
「殺した法王の血をワインに混ぜて魔王を城に招いてワインを盛るのさ」
物陰で聞いていた若い女は、大急ぎで村へかえって話して聞かせました

女たちはさっそく村で17歳になった武術や剣術や馬術に秀でた息子たちをあつめました。武勇に長けた男は17人いました。村は17人の魔王討伐隊をつくって北の山へ向かわせました
法王は、命乞いのいとまもなく心臓に17本の剣を突き立てられ、最期に真実をいいました
「…魔王を倒したあと…勇者はどこへいくと思うね…」
みなは顔をあわせ、沈黙しました
法王の血を皮袋に入れた副隊長はいいました
「魔王と勇者はどっちが悪だ?」
「悪だとか正義だとかの問題か?」
意見や答えは17に割れて、仲間われが始まりました
隊長は
「おれは村の掟のとおりに魔王を倒しにいく」
副隊長は
「おれは勇者の城へもどって勇者を退治する」
それからさらに割れた隊員は
「オレたちは村を守る」
「おれは好きにやらせてもらうよ」
「隊は抜けられるのか」

「そのように大地は17の領地と…」
「領主に分かれることになりました」

パラパラと拍手が湧いた

「来週は、『ザルツニルベン辺境国の謀りごと』をやりますので」
机の下から出てきた大男がいったが、だれも聞いていなかった
老人たちは車椅子で寝ていた
幼児たちはみな外で遊んでいる
職員たちは十分前には職場に戻っていた
食堂ルームにはウルスラたちしかいなかった
ウルスラは目をまん丸くさせて
「笑える所がひとつもなかった」
「そこで採点すなッー!!」

大きなトランクに人形劇の道具をしまう男
ボッチは
「興味ぶかく拝見しました。この劇は史実ですか?」
男は顔をイカらせ
「…どういう意味だ」

「いやその。事実に基づいたお話なのかと」
「だったらどうなんだ?」
「いえ、別になんでも…」
「子供のころベッドで寝る前に母親に聞かされてた話さ」


4頁 フリードの家(ウルスラの予言)



雪山の峡谷の崖にへばりつくようにある貧民窟
標高は高い。左手の遠くにフレディシマ城が見える
右手には断崖の丘の特別養護老人施設が見える
貧民窟は炭鉱の洞窟のように岩石を掘った街で、暗い。汚水が流れる溝にドブネズミの死体が流れてくる
暗渠のような下水の隧道に扉がある
隧道は奥へ進むにつれ暗く、コンクリート壁が剥がれ穴になってそこに人が住んでいる。まるで岩が崩れ落ちた小屋の扉のようだ。フリードはその穴のひとつをほって部屋にしたようだった

フリードの家は狭い。壁はコンクリートだ。部屋はガラクタがあちこちにデタラメに積まれている。弦の切れたバンジョー、鶴のような妙な形をした壺、フォーク、スプーン、割れた壺、長持、宝石箱、オルゴール、化粧箱、賽銭箱、輪に無数に繋がる鍵などだ
角の奥に小さなベッドが置いてある


サクラはフリードにさけぶ
「フリードさん! 明日どこへ行くんですか?」
「だからおれの勝手といったろうが」
「なん度いえばわかるんですか!?」
「なにがだ!! おれは明日の火事のことなど知らん!」
「赤ん坊が火事で死んじゃうんです!!」
「なにが赤ん坊だ!! なにが火事なんだ!!」
「オレにはさっぱり分からねえぞ!!」
「まずはそっちが説明をしてくれ!!」
「いったいなにがどうなってるんだ!!」
「………」
「………」

「わかった、いうから帰ってくれ」
「それから、頼むから、聞いたらもう……」
「二度とここには来ないでくれ」
「………わかりました」

「おれは、いまは泥棒家業なんだ」
「明日は、断崖の丘の特別養護老人施設を狙う」
「なんでそんなところを」
「あそこはノルドン大公国領主のノルドン公の寄附によって建てられ、電力もすべてノルドン公からの供給だ……」
「…パパを殺したノルドン公の!!」
「エンスイはおれとサクラの母であるスミレの身代わりになっただけだ」
「サクラはおれたち三人の出会いを知っているのか?」
「知りません。だけどママはフリードさんの話ばかりします」
「いつも三人で行動していただけだ。仕事でな」
「どんな仕事だったのですか?」
「いえない。特級守秘義務で破ったら国家反逆罪だ」
「特殊第八軍団の諜報部だったんですね」
ズコッー!!

フリードはズッコける
「へ?」
サクラは自分の胸をガバと開き、フリードの手を胸に当てる
「なにをするんだ!!」
フリードは顔を赤らめて周りを見まわす
「胸の跡、見てください……」
サクラの肌はフリードの手の体温で冷える
フリードの手が離れるとサクラの胸に薔薇と白百合の紋章が現れる
「おまえ…勇者討伐軍特殊第八軍団…907部隊…なのか…」

フリードはため息をつく
「雪山の崖上に建つあの施設は職員入口が安易に設定されている」
「それと一度、紛れたら迷宮だ。盗みは簡単にできる」

「そこには孤児院……ありましたよね?」
「あるが孤児院は狙わない。孤児の誘拐なんて誰がするんだ?」
「そうじゃなくて……」
「なんだ…どうした…もう帰ってくれ!!」
「私、その任務に同行させてください!!」
「ダメだこれはただの泥棒だぞ!!」
「おれが今やってる仕事は…」
「ただのゴロツキのやる軽犯罪だ!!」
フリードはケロイドで溶けた顔を真っ赤にさせて、両手で机を叩く

ウルスラたちが現れる。買い物袋をさげたボッチはいう
「嬢、寓話に笑いを求めてはいけませんぞ」
ルーシーは隅にあるベッドに寝転がるとすぐに眠る
ウルスラはルーシーを見て
「やっぱ、中身は子どもなのよね。私も今日は疲れたな」
ボッチは買い物袋を机にドンと落とす
「あー、そういう。あーそうなんだ」
「おでん作ろうと思ったのに見てこれ」
「これみんなスーパーで嬢たちのいった食材ですぞ!!」
ウルスラもルーシーが眠るベッドに横たわる
二人は狭いベッドで抱きつくように
「で、話は決まった?」
ウルスラ眠りに落ちそうなはサクラと口をモゴモゴさせいう

「森の奥へ行くと、岩が崩れ落ちて小屋のように見えるところがある。そこへ入って行くとお助け道具が一式そろってるよ、楽器とか箱とか鍵とか壺とか色々なものがあるよと教えてくれました。年増の女は、そんなガラクタばかりで魔王が倒せるわけがない。と一笑しました。若い女は無駄でも森へいってみようと出かけていきました………」

「えっウルスラ、なにいってるの?」
サクラはボッチに訊ねる
「さっき、断崖の丘の特別養護老人施設にいってきて、その人形劇で魔女のがいった予言のことばです」

「ん?」

ボッチはハッと何かに気づく
ゆっくりとムーンウォークをしてフリードの部屋を出て、ドブが流れる暗渠の通路にでる
フリードの部屋のなかから、ウルスラの寝ぼけ声が聞こえる
「……奥へ行くと、岩が崩れ落ちて小屋のように見えるところがある。そこへ入って行くとお助け道具が一式そろってるよ、楽器とか箱とか鍵とか壺とか色々なものがあるよ……」

部屋の奥に発光する何かを見つけるボッチ
ボッチはゆっくりと、恐るおそるフリードの部屋に入っていく


第10話へつづく


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