「竜胆〜」Vol.11【祇園の夏、パパ編】
プロの作家に文章指南を受けている。前回までの流れは下記、
授業がないので、スピンオフを書いて、空白を埋めていこう。
上の記事のように、全部をただ陳列のように形骸的にならべちゃうと、創作の熱、意欲が一瞬にして冷めてしまう。
これは作家の質によるという。
以前、ラインのグルチャにいたことがあって、「ぼくはそこの作りこみが一番楽しいんです!」という方がいた。なるほどと思った。
2パターンあると思う。ぼくの分け方をする。
⑴取材派、
データをまず揃える。がっちりと、世界の見取り図、人物の青写真、ストーリー、プロットの構成を考える。揃ったらヨーイドン。あとは書くだけ。
例)松本清張、山崎豊子、中上健次、村上龍、主にエンタメ系、歴史小説系、サスペンス小説系作家など。直木賞(ベテラン作家)系。
⑵書きながら、
じぶんが主人公になって、主人公がみた、触った、味わった、世界の内側を物語に描いていく。
例)村上春樹(初期、短編)、よしもとばなな、町田康(中、短編)、川上弘美(中、短編)、純文学系のデビュー作、(ラノベ系はわかりません。「涼宮ハルヒ」はどうなんだろう?)短編純文学(新人作家)系。
ちょっと脱線したが、
つまりそれら、ぼく(筆者)が創作意欲をなくすような情報の羅列は、ただの、
死んだ情報。
なのだ。生きる情報、メインのストーリーに活用できる「断片」として書いておくならば、少なくとも、Vol.9【祇園の夏、少女編】のように、
筆者が頭にえがく物語、その主軸と共鳴するような「物語の断片」として記し(残し)ておかなければいけない。
と思った。
今回の「断片物語」も、メインの「竜胆〜」に活かせるかどうかは不明だが、かかなければなにも始まらない。
捨てる(死ぬ)情報になることを前提にかけばいい。
ということで、
今回は、路地で、ビニールプールを膨らませているパパ。に焦点を当ててみました。
もしかしたら新たな登場人物とかでてきたりして、「竜胆〜」の世界からパパが消えて、ママ(書き始めてないのにもう登場してる、笑)に焦点があたったりと、ラフスケッチです。
「竜胆〜」Vol.11【祇園の夏、パパ編】
連日の猛暑がつづいていた。きょう夏にきりかわったような太陽の光が路地を焼いている。
ちょっと、なにやってんの。聡の後ろから女の声がかかる。妻の佳世の声だった。あなた聴こえてる? 聡は聴こえないふりをし、大きな子ども用のビニールプールに顔を真っ赤にして息を吹きかけている。あなたなに考えてるの? これから出掛けるのよ、凪をつれて今宮さまに初宮参りして、その足で大徳寺の住職さまにお見せまわりするって、いってたじゃない。なんでいまビニールプールなのよ。それに、口で入るわけないでしょ。ポンプでいれるのよそれ。
あなた聞いてるの! 玄関から佳世がでてきた。だいいち、これから凪が乗るベビーカーをずっと外にだしてたら、ほら。熱くなってるじゃないの。乗れないわよこんな熱かったら、死んじゃうわよ。聡はベビーカーを触ってみた。火傷するほど熱していた。腕時計を見る。妻が肩越しに聡をのぞいた。顔が近かった。佳世のしっとりとした柔らかな髪が鼻にかかった。出会ったときの佳世の臭いのままだった。
やだ、なにあれ。聡は佳世をみあげる。佳世は聡の肩ごしで、あんぐりと口をあけ、絶句していた。佳世の目線をおうと木造の二階建てにすむ噂の男が部屋に全裸でたっていた。聡はビニールプールから口をはずしかたまったまま全裸の男を眺めた。
変態なのかしら、でもあちらのヒトって、教育がないから、トイレ終わっても手を洗わないし、お箸の持ちかたひとつできないんですって、解放センターの八嶋さんから聞いたわ。トイレットペーパーがない水洗のない集合住宅で育つから小学校にあがってすぐじぶんでお尻が拭けないんですって、あーこわ。佳世は玄関に入っていった。16時からよ。ビニールプールは仕舞っておいてね。家の奥から聴こえてきた。気がつくと木造アパートの男の姿は消えていた。
解放センターというのは部落解放センターのことだ。聡は北関東の生まれだった。聡は実家のちかくに被差別部落があることさえ知らずに育った。実際はどこかにあったのだろうが、祖父母も両親も家の食卓などで話題にしたことがなかった。大きくなるまで存在さえ知らなかった。佳世と結婚をしてこちらに婿にきてみると、京都のあちこちに部落解放センターがあった。いったいどういう団体で、どういう活動をしているのか、聡にはまったくわからなかった。だがひとつわかったことは、京の地、京都のひとの無意識の深いところまで差別あるいは被差別のことばが、どこまでも根づよくあった。
聡のおでこに勢いよく水が噴射された。
以後の問題、自明、の備忘録
①聡がここから動けない。聡の独白にはしたくない。
②少女編とおなじように、男の描写(角度、受ける印象(パパ)が変わっただけ)
③男が去ったあと、ベビーカーを押して今宮神社と大徳寺まわりをする。
④この断片自体のテーマ(家族、夫婦愛)が「聡」と「佳世」(凪を交えた)の心のすれ違いになる。
⑤動きがないと停滞するばかりだ。
2022/01/09/Sun_01:09_Vol.11
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