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派遣王女☆ウルスラ / 第12話(8,000文字)


■第12話■


バックトゥー・座・フューチャー PART5


扉絵


1話 電撃発表、ガルド婆


サクラは目を丸くさせ
「あなただれなの?」

地蔵の婆は
「元魔王じゃ」

ズコーッ!!
ボッチ、フリード、サクラはズッコケる

3人は顔を見合わせる

ははは、まさか

笑う

3人は地蔵の婆に向かってもう一度ゆっくりと尋ねる
「で、いったいぜんたいアンタ……」
「本当はどこのだれなんだい?」
「だからさっき元魔王っていったろうがね」

3人はまた顔を見合わせ
フリード
「……これが勇者の種と言われる元魔王…」
「国と国、伯爵や太公、教皇が連合軍を組織をして……」
サクラ
「何千年と私たちが挑んで倒しつづけてきた大厄災の根…」
ボッチは鋭い目つきになる
(こんな所にまで勇者の種が…)

地蔵の老婆は錫杖を石の床にふりおろす

シャーン、シャンシャンシャンシャン

「名は訊かんのか?」
フリードは
「な?」
地蔵は
「わしの名じゃよ!!」
サクラは
「あ〜ね」
地蔵は
「あ〜ねってなんじゃッ!」

ボッチはガラクタの山から箱をもってくる
箱には《投票箱》とマジックペンで書いてある
「これは先週、読者から応募した…」
「…来週の新キャラの名前の投票箱です」

ボッチは投票箱をかかえ、ツカツカツカとウルスラが眠るベッドまで歩く
ウルスラは寝返りをうつと片手がだらりと箱の穴にはいる

スポッ

ボッチは
「これでようござんすね?」
地蔵はうなずく
フリードとサクラは喉をあげる
ボッチはゆっくりと箱をさげる
ウルスラの手は一枚の紙をつかんでいる
ボッチはその一枚の紙を取って広げて読みあげる

「ジャカジャカジャカジャカ……ジャン!!」

「東京都世田谷区、赤堤8丁目にお住まいの…」
「…遠近了くん5歳が当選されました!!」
「彼のつけた今週初登場の新キャラの名前は」
「ジャカジャカジャカジャカ…ジャン!!」

ノルドは紙を掲げる《ガルド婆》と書かれてある

フリードは
「意外と普通だな」
サクラは
「もっとおどろおどろしいのかと思ったけど」
地蔵は
「わしの考えていた、かわいい名が…」

ボッチはメガネのブリッジをあげてハガキを読みあげる
「今回応募してくれた5歳の了くんには理由があるそうです…」

「こんにちは初めまして、東京都世田谷の慶明大学附属小学校五年の遠近了です。今回の魔王の名前は、ガルド婆がいいと思います。なぜなら物語は最初の仲間アリスたちと離ればなれになってから随分と経ちます。いまは雪氷のエピソードは停滞していると思います。だから僕はここで登場する新キャラは黒幕のガルドの生みの親がいいと思いつきました。そういう思いをこめてガルド婆にしました」

サクラ、フレッド、ガルド婆は読者にむかてボッチが掲げるハガキを指さす

フレッドは隣のサクラを見
「…これでいいの?……かな……」
サクラは
「東京都世田谷区在住の小学生がここで筋をネタバレしちゃって」
ガルド婆は
「これも定めじゃ。おぬしらそれで良いのならわしは構わんが」
ボッチはつづきをよむ
「P.S.とにかく物語をもっとサクサク進めてください」

ズコーッ!!


2頁 目醒めるウルスラ


「おっはコン!!」
ウルスラは元気に登場

「どうしたの!! 時が止まってるわ」
ウルスラは四人にさけぶ
「おーい!!」
ウルスラはルーシーに
「さっぽろ雪まつりみたいだね」

ぎゃははははッ!!

ウルスラとルーシーは腹をかかえて床を転げまわる

三人は汗をかいて、氷像から溶ける
ウルスラとルーシーは二人とも登山用の重装備の服装をして、大きなリュックを背負っている

「嬢たち、その姿はどうしたんですか!!」
ウルスラとルーシーは台本を握っている

ズコーッ

わくわく


3頁 登山



雪山の崖、猛吹雪

豪雪が吹き荒れる崖の道をフリード、サクラ、ウルスラ、ルーシー、ボッチ、ガルド婆がつづく

ウルスラは崖の上を見あげる
地上と宇宙の狭間のような頂に光線が見える
それはノルドン大公国からの電力供給の光線だ



4頁 なぜ登山なんだ?



「なんで警備が手薄な高速エレベーターに乗らなかったの?」
「警備やノルドン兵や謎の忍者に見つかって、そこで銃撃戦があるからじゃないか。また、物語が停滞するだろ」
ウルスラ、ルーシー、ボッチ、サクラは劇画チックの驚きの顔になる
ガルド婆は話をつづける
「まずはエレベーターの警備の不備、潜入作戦となるとこの国の不況による警備会社の人材不足の背景、エレベーターの事故関連、他のサブキャラとのキャスティング・スケジューリング調整、それからサブキャラの運命の鉢合わせを考えると…」

フリードはサクラにヒソヒソと
「それって専門用語で『プロット』っていうんだよな」
サクラはフリードにヒソヒソと
「『人物相関図』とかね…」

「雪山の登山であれば、だれとも宇宙人とも遭遇しない、雪崩も自然災害も発生しない、岩陰から動物も敵も現れない退屈な登山なら2コマで目的地に到着するというピッコマ編集部の横槍がはいったのじゃ」
ボッチはガルド婆にツッコむ
「ボツ案をここでべらべらとしゃべるなーッ!!」
「描いたんだけど描写表現がちょっとエグかったんじゃの」
「いや著作権と第三者権利に引っかかたんだろ」
「ここで編集者のダメ出しをいうなーッ!!」

5頁 言えば、こうなる


ドドドドドドドッ!!
上から雪崩が襲ってくる
前から特殊部隊が、後ろから戦車が、崖の下からは忍者軍団が、上からは巨岩が、戦闘機が突っ込んできて、黒い宇宙からは宇宙ステーションから光線がサーチライトのように照らす、海では巨大な海獣が口を開けている

どわ〜ッ!!

全員は目玉を飛びださせる

彼方から翼竜が飛んでくる

ひゅ〜

「まいどッ!!」

翼竜の背中に《タクシー・初乗り390ガルド》と書かれてある


6頁 悪意があるわね



翼竜の背中でウルスラたちは弁当を広げて宴会をする

ぎゃはっはは!!

♪ほれ、カッポレ、カッポレ♫

婆さん、いいぞ〜!!

もう一献どうぞ

お、黄金霧島、渋い銘柄だなあ……

サクラは読者にむかって汗を拭う
「なにか、悪意を感じるわね……」



7頁 火事、救出劇




孤児院が火事になっている

孤児院の部屋では、無数の子どもたちが叫んでいる

あづいよ〜!!
助けて〜
ママ〜!!
ぎゃー!!
おぎゃーおぎゃー!!

サクラは必死で昨晩、フリードが抱えてきた赤ん坊を捜す

「いったい、どの子なの?…」
「どの子が昨日フリードが酒場に抱えてきた赤ん坊なの!!」

サクラ以外の全員は立ち尽くし、じーっとサクラを見つめる

「なに?」

全員助けるんじゃいッ!!

ズコーッ!!

サクラだけズッコケる
サクラはお尻や服の埃をぱんぱんとはたき
それから何かに気づき大声でさけぶ

「あッ!!」

鉢巻を巻いて消防ホースで消化活動をするガルド婆がさけぶ

「サクラッ!! どうしたんじゃッ!!」


「初、ボケです!!」

ズコー!!

「二回目」
サクラは読者にピースサイン


8頁 消火された孤児院


シュー、シュー、シュー
消火される音がする

「ふう、これで終わったな」
「一件落着かしら」
「あとはラストまで突っ走るだけですぞ!!」
「なにが一件でどう落着したの?」

ドキッ!!

ぽか〜ん…

カァ、カァ、カァ、カァ

ガルド婆は錫杖で、遥か下界の一角が赤くなっているのをさす
「あれは、炎じゃないかのぉ…よく見えんがの…」
ガルド婆は目をこする

フリードは目玉を飛びださせ
「じぇえっ!!」
サクラとボッチはフリードに冷たい視線をおくる
「…あれは…そのぉ…ふフレディシマ城の敷地内だな…うん」
サクラとボッチはフリードにさらに冷たい視線をおくる
フリードは双眼鏡で覗いたままの姿勢で凍りつく
「双眼鏡、貸して」
ウルスラは凍ったフリードの手から双眼鏡をもぎ取ると
氷像のフリードはガラガラと瓦解する
ウルスラは
「看板に、ここ、《フレディシマ王国領内、スノーデル・ブリンヒルダ城付属孤児院》って書いてあるよ」
氷像が砕けて粉々になったフリードを、サクラとボッチは登山ブーツで踏みにじる

ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ
「だ…か…ら…ちが…うって…明日のじぶんがどこに…」
ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ
「行くかなんて…だれも…わかりっこないん…ぎゃあッ!!」
ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ、ぎゅッ
溶けるフリードの上に湯気のでるねじりうんことおしっこの跡

ウルスラとルーシーは腹を抱えて笑う

ぎゃっはっはっは!!

ボッチは両手を天にひとさし指を突きあげてさけぶ
♪ Hey Yo Ojyo!!  Hime Yo Ojyo! ! ♫
♪  Hey Ojyos!!  You guys Queeeeeeen!! ♫
「あなた方は一国の王妃ですぞ!!」
「王妃の品格があァ!!品がなァ〜いッ!!」

ウルスラとルーシーはアゴを突きだして
「Hey Yo!!」
「ヘイ・ヨー!!」
「ウィー・アー・クウィ〜ッン!!」
ふたりは肘を突きだして
「クウィ〜ッンがアウィーン!!」

サクラとガルド婆はヒソヒソ声で
「悪役令嬢の復讐劇って物語じゃないの?」
「キャスティングミスかのぉ〜」
「私のところにオファーがきたとき…」
「やっぱちょっとおかしいと思ったのよ」
「だって原作はあの蒼井先生でしょ…」
「んで、サクラはいくらで引き受けたんじゃ?」
「あ、それ、いまここで聞いちゃう?」
「わしは年金あるから…これスポット出演じゃし」
サクラは計算機を取りだしひとさし指を舐める
「蒼井先生の相場が1話5000ガルドでしょ…」

湯気の立つフリードは現れ
「みなまでいうな!! 地上に戻るぞ!!」

崖のうえの孤児院のみんなと修道女たちは手旗国旗や《最後までがんばってぇ〜!!》の横断幕をふって
「ありがとー!!」
「ぜひ、またいらしてくださーい!!」
「今ならキャンペーンで30%お得でーす!!」
「隣の介護ホームの食券付きでーす!!」
「足湯ありまーす!!」



9頁 だから、なぜ下山なんだ?



雪山の崖、猛吹雪
豪雪が吹き荒れる崖の道を、手慣れたキャラバン隊を構成する一行。騾馬に乗るウルスラとルーシー…騾馬を引くフリード…後ろにボッチ…ガルド婆…殿(しんがり)をサクラが務める

フリードはぼやく
「だから、なぜ下山なんだ?」
サクラはいう
「だから、高速エレベーターが故障してるとか、地雷があるとか、原案が作画が遅れてるとか、ファックスが壊れたとか、メールの誤送信とかの大人の事情じゃないの…」
ガルド婆はいう
「打ち切りが決まったとか…」

みんな息を詰める

ウルスラは崖の下を見る。街は炎に包まれている
「お嬢!! あまりなん度も現場を…」
「ジロジロと見ないでください!!」
ウルスラは双眼鏡で覗いたまま首を傾げる
「なんで?」
「ええとですね、時間が進行するからです!!」
ウルスラはルーシーに訊ねる
「なんでだかわかる?」
ルーシーは抹茶ソフトクリームを頬張りながら首を横に振る
サクラは苦笑いしていう
「つまり状況が場面が…どんどんと、先に…」
ガルド婆は真実をいう
「コマが進むからじゃ…」
ズコーッ!!


「やっぱりな、やってきたぞッ!!」
フリードたちは身構える

ボッチは半悪魔に化ける
サクラは火薬武器を両手に構える
ガルド婆は錫杖を光らせ構える

ドドドドドドド!!
上から雪崩が襲ってくる
前からノルドン大公国紋章を付けた特殊部隊が、後ろからザルツニルベン辺境伯の符牒「Z」の文字が書かれた戦車が、崖の下からはサクラの同僚達の勇者討伐特殊第八軍団907部隊忍者軍団が、上の崖にミサイルが着弾してか巨岩が崩れ落ちて来、墜落した戦闘機がこちらに突っこんできて、黒い宇宙からは無数のUFOから光線がサーチライトのように照らす、海で巨大な海獣が口を開けているのを滝壺の獣がガブリッ、とやっている

フリードはさけぶ
「蒼井のヤロウッ! アタリも絵も…セリフも…ベタも…スクリーントーンもみな使いまわしかッ!!」

サクラは背中合わせになったフリードに
「これはよくあることよ! さあ…」
合口を二刀流で構える
「チャッチャカやっつけちゃいましょ!」

ババッ

サクラの同僚の同僚達があらわれ
「姉(あね)さん。ここは俺たちに任せて。ほら先いって」
フリードはサクラに
「いい仲間をもったな…」
サクラは同僚達にウィンクをする
「さ、みんな、一気に飛び降りるわよッ!!」
騾馬に乗ったウルスラとルーシーは
「わくわく」
と声にだす
ボッチは汗をかき
「こ、ここから、飛び降りるっていったって」
ガルド婆はがっはっはと笑って
「まずは一歩、踏みだしさえすれば…」
「人生、なんとかなるもんじゃッ!!」



10頁 崖からジャンプ!




ウルスラ、ルーシー、ボッチ、フリード、サクラ、ガルド婆、みんな崖の真下へジャンプ(するシルエット)!!


11頁 無事着陸



地上、バス停《スノーデル・ブリンヒルダ城付属孤児院前》

ボッチは財布からガルド紙幣を取りだして翼竜タクシーにお金を払う
「領収書もらえます? ええ、上様で。はい。お釣りはください」

「ボッチはやくッ!!」



12頁 火事


火災現場、
フレディシマ王城の敷地のなか、空にそびえる城壁、両脇で槍をもった巨人が膝をつく門がある。その脇に立つブリンヒルダ女王直営の孤児院はある。それは勢いよく燃えている。孤児院が見える門から城まで伸びる道の先に、ブリンヒルダ城が月の光にうつる

到着したカボチャの馬車から皇女ヒルダがあらわれる

「ああ子どもたちがッ!! どなたか〜!! 助けえて〜!!」

サクラはヒルダ女王の前にひざまづく
サクラ
「はっ!!ココに!!第九勇者討伐遠征軍白虎旅団長のイノウエ・サクラ大佐であります!!

フリードは、娘サクラの後ろに立ち尽くす
フリードは幼いときに父から聴かされた話を思いだす

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


「裏切られた!! 副将ボーディンに!!
「やつがここに火を放ったのだ!!」
天蓋つきベビーベッドが燃えている。中で赤ん坊が泣いている
「ああ〜!! ヒルダ!! 」
ヒルダ女王の母エイリーンは火の中へ走っていき燃えるベビーベッドから赤ん坊のヒルダを取りだして火だるまになってスノーデル国王に渡す
スノーデル国王は赤ん坊のヒルダをシーツで包み火を消す……
「だれか!! だれかおらぬか!!」
スノーデル国王はさけぶ
「はっ!!ココに!!第九勇者討伐遠征軍白虎旅団長のジーク・ボリス大佐であります!!」

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


サクラは顔を地面に向けたまま
「なかにいる孤児は総勢で何名でしょうか?」
エッダ婆は手板をもち
「28名の子どもと赤ん坊が3名で合計31名です」

炎を吹いて崩れ落ちる孤児院
傾いた門から炎がふきだす
フリードは門の炎のなかへとかけていく
「フリードッ!! まって!!」
「まって!!……パパッ!!」
サクラもフリードの後を追って炎のなかに消える

ウルスラとルーシーは消防士の服装をし放水を始める
ガルド婆は錫杖で渋滞する車の交通誘導を始める
ボッチはエッダ婆からケータイを借りて、緊急病院の受け入れ先に電話をいれている。ぞくぞくと緊急車両は到着する。だが火事の火の勢いはさらに増す。放水はつづき、鎮火は停滞する

サクラは子どもを抱き抱え外へ出て、それを渡し、また火のなかに入っていく、またサクラは出て来、炎のなかに消える……

野次馬は集まって声をだす

「あと何人だ!?」
「のこり2人です!!」
「もう、ダメじゃないか?」
「時間の問題かもな」
「ひとりで救出やってんのか?」
「いやもうひとりいるってきいたぜ」
「どういうことだ?」
「ひとりはなかにずっといるってことだろ」
「え!? 火のなかに?」
「でも、よくやるよ」
「ぜんぶ孤児だ。助けてたって親がいねえ」
「だれにも感謝されねえ、無駄骨だな」

サクラが炎からよろけながら出てくる

ヒルダ王女は
「あなた大丈夫ですか…」
サクラは地面に倒れる
「申し訳ありません、最後の一人は………」
ヒルダ王女は膝をつき
「大丈夫です、あなたはよくやりました。立派です」

孤児院は音を立てて崩れ始める

「みんな避難だ!!」
「炎がくるぞ!!」
「逃げろ!!」

野次馬は逃げていく

崩れた孤児院から男の影があらわれる
フリードだ。フリードは真っ黒に焦げたラグビーボールのようなものを抱えている

ガルド婆は驚いて
「驚いた!! フリードがかぶるのは獣鞣皮で作った防火頭巾じゃ、服は炭と防火油の混ぜた汁を服に染みこませた半天じゃ」
「ハンテン?」
ウルスラは訊ねる
「日出る国の防火服じゃ。背中を見てみい、火消し組の名前がある」
ガルド婆は錫杖でフリードの背中をさす
フリードの背中には「井上組」と書かれてある
仰向けに倒れたサクラは顔をあげ、フリードの背中を見て、涙を流す
「もうひとりのパパ…」

フリードはゆっくりと歩いてきて
エッダ婆に黒い大きな繭のようなものを渡すと黒い繭は割れて、中から赤ん坊が現れ、泣きだす

 ガルド婆は
「おおッ!! 防火鞣で包んだんじゃな!! 通じゃの!!」

フリードは倒れる
フリードの肌は燃え尽き、炭になった木人のようにぷすぷすと音を立てている

「気持ちわりい〜」
「いくら人助けしても、ああはなりたくねえな」
「その後の人生がマジ自殺級だぜ」
「火事、終わっちまったか。ああつまんねえな」
「帰えるべ帰えるべ」
「帰ってピーエSWitchやるべ」
「やるべやるべ」

野次馬は帰っていく

シュー、シューと燃えるフリード
サクラは救急車に運ばれていく

ヒルダ女王は膝をつきフリードの顔に手をあてる
「あなた、名はジーク…」
フリードは黙ったまま答えない
「あなたは、ジーク・ボリスの息子…」

ヒルダ女王はフリードを子供のころエッダ婆から聞かされた回想に重ねる

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


父は、助けにきた兵士を睨んで
「きさまあ!! ジークといったなっ!! 貴様が我がフレディシマ国王がみた最後の勇姿ぞ!! このヒルダを頼んだぞ!!」
「国王は?」
父は優しい顔をしたそうだ
「ジークよ…妻を置いて逃げるような国王に…」
「この国の…どの民がついてくるんだ…」
それから父は笑って涙をながし
「娘を、ヒルダを頼んだぞ!! 窓から逃げるんだ!!」
ジークと呼ばれる男ははさけんだ
「スノーデル国王!!」
父は大粒の涙をながし
「このフレディシマ国王七世…」
「わが妻と灰となり燃え尽きようとも…」
「きさまの命綱はぜったいに離さんッ!!」
父にジーク・ボリスと呼ばれた兵士は…
満月の夜、燃える王妃の間の窓から…
その胸に赤ん坊の私を縛りつけてロープで降りてきた…


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

ヒルダ女王はさけぶ
「エッダ婆!!」
エッダ婆は姫の側に寄る
「はい姫様」
「この男を…絶対に助けて!!」
カボチャの馬車はフリードを連れて王宮へ走っていく


13頁 仮面舞踏会


フレディシマ王宮
大パラス仮面舞踏会会場

外には看板がたつ

☆本日☆
☆第7648回グラン・ケ・フレディシマ王国主催☆
 ☆大舞踏会☆ 


城下町の中、城の敷地内、宮殿内、謁見の間、大パラス内外にはフレディシマ王国ヒルデ女王の変顔のポスターが大々的に貼られてある。世界各国から貴賓、集まっている

賑わう会場、縁も酣(たけなわ)、伯爵も貴婦人もみなハメを外して盛り上がっている。

にギューク・エリントン一行が登場する
「いやあ、すごく久しぶりに出てきて、嫌な予感がするのだが…」
ザルツニルベン太公家の著名な劇作家ジョイフルピア
「賑やかですな。仮面舞踏会といえば上流階級を舞台にした多くのロマンス劇のプロット・舞台装置としては欠かせません。今日は私も遠路はるばる勉強に参りましたぞ!!」

ヒルダ王女登場

「ワーッ!!」
「ヒルダ姫だ!!」
「お美しい!!」

ヒルダ
「国民のみなさまに重大発表があります」

「なんだ?!」

ざわざわざわ

ヒルダは醜い顔の男の手を握って壇上へ連れてきて
「私フレディシマ国王、王女ブリュンヒルダはこの男ジーク・フリード・アウレリャノと結婚をいたします!!」

ズコーッ!!
劇作家ジョイフルピアは思いっきりズッコケる

「え、えーッ!!」

会場は騒然

「なぜならこの人は…」


助監督のボッチが登場して帽子を脱いで読者に深く頭をさげる
「すみません、大人の事情で…今回は…ここまで」

両手をハサミにしてカットするマイム


第13話へつづく








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