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800文字日記/20220519thu/073テーマ「拳銃の持ち方」035(添削前とレジュメ)

★今回から「添削前の原稿」と「レジュメ」をアップすることにします★


■今までワープロ(ワード)で「レジュメ」(現段階で、プロット作りは教わってない)☞「本稿」と書きます。
つまり、パソコンでの執筆で原稿を書くときに、今日まで僕はレジュメを全部消していた。

■恐らく、添削の講師(現在63歳)の現役(特に新聞記者だった23歳〜40歳代)、その門下生の直木賞作家(現在51歳)の時代っていうのは、
❶紙にちゃんとレジュメを書く=頭の中にある単語をぜんぶ紙に一個一個並べていく。
❷レジュメからチョイスした単語を使ってプロットを組み立てる。
❸プロットからストーリを立ち上げる(展開させる)。
上記の手法だったはず。絶対に。だから今回からログで残したいと思いました。

■実際にやってみると、自分の中でかなりの気づきがある。

■レジュメの90%は捨てる(これはどの作家も言っている。原則以上の、鉄則に近い)。
◉もし、レジュメを紙に書き出さずに、頭の中にある(はずの)膨大なレジュメを持って原稿を書いている作家がいるとしても、本当に「原稿の文字になる言葉」はわずか数%です。今の僕にはそれが手に取るようにわかる。


800文字日記/20220519thu/073テーマ「拳銃の持ち方」035(添削前)

一九八七年、警官だった父は駐在所勤務を命ぜられた。家族が越して来たその年、駐在所の花壇はイタズラされた。母と妹は手製で作ったレンガの花壇に種をまいた。花が開いた頃になって僕が学校帰りにのぞくと茎が皆ばっさり切られていた。ホウセンカとヒマワリだった。春から夏の出来事だった。

明くる年の春から夏は花壇のイタズラはなかった。僕は小学六年生になった。僕は学校帰りの道で百円玉を拾って帰る。事務所の玄関を開ける。「百円か。やるよ。書類を書くのが面倒だ」と父は言う。父はそういう種類の警官だった。父は早くして昇級試験を諦めた万年巡査長だった。

ある日の事だった。「本物の拳銃、持ってみたいか」と父は言った。僕は床が打ちっぱなしでひんやりとする事務所に入る。スチールデスクが一つある狭い事務所だ。後ろはガラス戸がある棚だ。その後ろに、薄い壁一枚を隔てて僕と妹の子供部屋があった。気が狂った相談者が良く訪ねて来た。声は子供部屋まで届いた。例えば「死にたいんです! どうやったら死ねるんでしょうか? 」とか。

「しっかり持てよ」と父に言われた。が、拳銃はずしりと重かった。利き手で落としそうになる。両手で持ち直す。僕は拳銃をいったいどう持って良いか分からなかった。だから死んだ魚を両手ですくうように持った。冷たかった。

事務所の中で拳銃が暴発し、父が血まみれで倒れる。想像してしまう。手が震えそうだ。が、僕は父に手が震えるのをバレないようにごまかす。僕はそういうタイプの子供だった。

「二つ方法がある。一つは拳骨を作ってその上に重ねる。両脚を開いて腰を落とす。拳銃と重心を安定させる。狙いを定める。引き鉄(がね)を引く。二つ目はひじを水平に固める。ひじに銃を置き、固定する。狙いを定める。引き鉄(がね)を引く。簡単だろ。やってみろ」と父は笑う。

ひじに重く冷たい拳銃を乗せる。これで人を殴り殺せると僕は思う。

「拳銃、かっこいいだろ」父の目が光った。(799文字)


レジュメ

小学校六年生(10歳)。1988年。ソウルオリンピック。館林第十小学校。成島駐在所。
父。警察官。巡査長。初めて見た。持った。回転式拳銃(リボルバー)。ニューナンブM60。五条右回り。重さ670グラム。九口径。安全装置。昼間。帰り道に100円玉。「その額ならやる」水泳。プール。寺崎さん。背泳。鈴木大地。駐在所の庭に植えた花。ホウセンカ(五月)。ヒマワリ(七、八月)。切られていた。銃の持ち方。拳に乗せる。怖い。片手で持つ。ずしり。冷たく重い。銃砲をつかんで銃把でなぐり殺しができるのでは? 父は面白がっている。拳銃の撃ち方。二つ方法。一つは拳骨を縦に二つ重ねる。拳に銃を乗せる。脚を開いて腰を落とす。拳銃と重心を安定させる。狙いをつけて引き鉄を引く。二つ目はひじを水平に固める。ひじに銃を置く。固定して引き鉄を引く。駐在所の冷たく暗い部屋。スチールデスクの脇で。本番などない拳銃の持ち方、発砲練習。小学生が喧嘩になっても拳銃など携帯していない。実用的ではない。子供の喧嘩では「眉間か顎を狙え」「相手は一撃で沈む」小学生の喧嘩にそんな時間も心の余裕もない。喧嘩はやって初めて学ぶもの。護身術、喧嘩術、小説やドラマ、父に宿る目、拳銃「かっこいいだろ」。相手が格闘家やプロボクサーだったら具体的にどう対処すべきか父は僕に教えなかった。(552文字)



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