クマの妻、第4話「絵本と猫」(209文字編)と(640文字編)
夫が死んで数年が経つ。
今朝、遺品は見つかった。物置に三冊あった。
それは彼の母と前妻と娘にあてた絵本だった。表には「クマの妻」なるタイトルと熊の姿をした私が描かれていた。絵本は開かなかった。
「にゃお」
夫がかわいがった猫が、私をよぶ。私は大きく成長した猫を、両手にさげて、物置の裏まで連れて行った。
「にゃお」
猫がまた、鳴く。
彼が眠るりんごの木の根元でしゃがむと、
「にゃお」と猫は一段、高く鳴いた。
猫をおろして三つの絵本を埋めた。
夫が死んで数年が経つ。屋根裏から遺