タフガール・クライ

1
夜、お姫様を乗せたカボチャの馬車は、
昼間の街では、どこで眠っているのか。
今朝も彼女は瞳に涙をにじませ、
ワインなしではいられない状態だった。

男たちの、彼女の容姿を讃える文句に、
彼女のボンベは酸素を切らしかけていて、
「スマイル」と名づけた唯一のペットも、
アパートを出て行ったきり、戻ってこない。

彼女は「バーには近づかない」と誓ったが、
時間が経つにつれ、指先が震え出した。
彼女を愛する青年はこう呟いた、
「誰がタフな彼女を泣かせるんだ」と。

2
強くて明るかった彼女はどこへ？
どんなナイフが彼女の心を裂いたのか。
誰もが恋をし、妻にしたがった彼女から、
幸せな輝きは何故消えたのか。

ある晩、彼女は車の中で結婚式を挙げたが、
星が沈んだ朝には、離婚届にサインした。
相手は海兵隊のような体に、
赤ん坊並みの脳みそを載せた男だった。

CMや雑誌の言葉は軽く、乱暴で、
彼女をベッドから引きずり出せず、
心理カウンセラーも、「愛と憐れみで、
彼女の頭を撫でてやれ」と言うだけだった。

3
行方不明の「スマイル」のビラを街に貼り、
彼女は午前中をどうにかしらふで過ごせた。
けれど午後は、顔をしかめた女優に変身し、
タバコの煙越しに、賢者や恋人たちを眺めた。

経済学者がヴードゥーで未来を占い、
魔術師がプラグマティズムで人を呪う。
ジェッツとシャークスが大通りで踊る、
指を鳴らし、同じテンポ、同じリズムで。

ジュリエットはロミオ以外の男と密会し、
ロミオは法廷で、毒は偽物だったと証言。
そんな安っぽい興行をずっと見せられ、
彼女は自分のゲロで喉を詰まらせかけた。

4
「Alcohol Ruins You」と書かれた
Tシャツを着た男の前を通り、
彼女はダーツに射抜かれた心臓を手に、
動物園から逃げる猿の気分でバーに入った。

彼女はそこで、久しく顔を見ていなかった、
ウイスキー氏と感動の対面を果たす。
彼女はグラスを覗き込み、そして見たのだ、
愛しの「スマイル」が浮かんでいるのを！

「ここに可愛いお尻を下ろしていたのね、
そうよ私、とうとう見つけたのよ！」
その時、彼女の指がグラスに当たり、
スマイルは顔をゆがめた。

5
彼女を愛する青年がやって来て、
ジンの匂いに埋もれた体を抱き起こした。
彼は彼女を抱え、バーを抜け出し、
カボチャの馬車とは程遠いタクシーに乗せた。

彼女はそのまま遠くに行きたかった。
誰の手も届かない、ずっと先へ。
そのままずっと木星の先まで行って、
誰の演説も聞かずに眠っていたかった。

「誰がタフな彼女を泣かせるのかしら」、
彼女は青年の腕の中でそう呟いた。
瞳には、窓ガラス越しに自分の顔が映り、
背景の深夜の街では警報器が鳴り響いた。