サーカ・A

ハヴ・ア・ナイス・デー、よい1日を!

サーカ・A

ハヴ・ア・ナイス・デー、よい1日を!

マガジン

  • 神秘の森

    「失うものばかり多すぎて、手にするものはほんの少し」佐野元春

  • 初期のサーカ・A

    「密造酒作りの中には、やたらと良い酒を作る奴がいる。しっかりと隠したいのなら、ここには隠す場所が山ほどある」ボブ・ディラン

  • 「新聞紙の空」よりの物体X

    「強姦、殺戮が、始まっている、始まっているーー」ザ・ローリング・ストーンズ

  • 私についての詩(ソング・オブ・マイセルフ)

    「空想的なものは、書物とランプの間に棲まう。幻想的なものは、もはや心の中に宿るのではなく、自然の突飛な出来事の中にあるのではない。それは知識の正確さから汲み上げられてくるのであり、その富は文書の中で読まれるのを待っている。夢を見るために眼を閉じてはならない。読むことである」ミシェル・フーコー

  • サーカ・Aの「水曜ロードショー」

    「イングリット、嘘でいいんだよ」ーーヒッチコックによる、ある女優へのアドバイス

最近の記事

  • 固定された記事

ルイージ

1ー1 マリオは類似を探している。 毎日の平凡な散歩の中で、 イタリアにも、フランスにもない街の、 『ブックオフ』や『サンマルク・カフェ』に寄り、 マリオは類似を探している、 ボブ・ディランの歌う歌詞に。 18世紀のイギリスの詩人と、 フリマに並ぶアンティーク雑貨との間に、 マリオは類似を探している。 カフカに、H・G・ウエルズに、 『サイコ』に、『愛しのシバよ帰れ』に、 エドガー・アラン・ポーの鐘の音に、 マリオは類似を探している。 1ー2 疑念とは、味のしないマスタード

    • フー・ドゥー・ユー・ラブ(ボ・ディドリーに)

      君と出会った最初の日、彼のハートは踊った。 2日目、彼はウィリアム・ブレイクになり、 ロマンスを語った。 3日目、フィリップ・マーロウの真似をし、 4日目はハリー・キャラハンに。 5日目には嫉妬に狂い、 44マグナムを振り回していた。 君はまだほんの子供だけど、彼の母親みたい、 彼のジャンクフード、いや、 彼の赤いコンバースみたい、 彼のミニーマウスか、 彼の地元から出た、 初めてのミス・ユニバースみたい。 「甘えたいなら他を当たって」と君にフラれて、 男たちは、みんなおかし

      • オールモスト・ブルー

        部屋は住人の心を映し出すーー たとえ、その本人が埋葬された後も。 繊細な工芸品のようだった君の心、 僕は近頃、君の部屋で詩を書いている。 すべての時計は止まっていて、 窓は深夜の「伊勢丹」のように閉じられている。 この部屋は君の自画像そのもの、 そしてそのタッチはーー ほとんどブルー。 僕は君のクローゼットで迷子になる。 そこにはあらゆる季節が閉じ込められていた。 帽子についた夏と、ポケットにしわくちゃの冬、 それから理由のない悪態の数々。 僕ら、家族が愛した君の匂いが、

        • 「いつかまた会える」

          話すことは何もない、 君はただ歩くだけだ、 手袋のほつれた部分を気にしながらね。 君は永遠に変わらない、 身長と、下の名前だけはーー 僕たちはただ愛を見失ったんだ。 君はどんどんと歩いてゆく、 宝石屋を過ぎ、花屋を過ぎ、 僕は教会の前まで君を追いかける、 まるで間抜けな、 ジョン・“スコティ”・ファーガソンのように。 君の口が動くんだったら、 僕にやめるように言って欲しかったよ、 今でも君の肌に触れていたいし、 どこまでが罪なのかわからなかったのに、 君は卑怯にも言わないんだ

        • 固定された記事

        マガジン

        • 神秘の森
          12本
        • 初期のサーカ・A
          20本
        • 「新聞紙の空」よりの物体X
          40本
        • 私についての詩(ソング・オブ・マイセルフ)
          28本
        • サーカ・Aの「水曜ロードショー」
          13本

        記事

          2月

          ショーウィンドウ越しの彼女に見とれていたら、 私は親方に頭をこづかれた、 すると突然、空っ風が吹いてきたっけ。 彼女も笑顔でこちらを見ていた、 もしくは大きなアップルパイだったのかな、 とにかく、2月にラブソングも悪くない。 親方は私に「もうクビだ」と言った、 というのも、私は針金のように細く、 すぐに鍵穴を抜け出してしまうから。 店主は物凄いデブで、 私をドアマットくらい踏みつけた、 奴は錆びたダモクレスの剣みたいなもんさ。 そんなわけで、親方が俗物だったために、 私は

          サーカ・A劇場①『ピンク色のイグアナ』

           派手な女だった。顔立ちもはっきりとしていて、濃いメイクが一層濃く見えた。モデルをしていたこともあったという。くしゃくしゃに整った髪に、古着のドレスという出立ちが、どこか、『ファイト・クラブ』のヘレナ・ボナム・カーターを思わせた。  知り合いの結婚式の二次会だった。カラオケでついた席で隣り合った。彼女も私も、歌うわけでも、騒ぐわけでもなく、酔っ払った福山雅治を、松田聖子を眺めていた。  「退屈ね」と外に誘い出したのは彼女の方だった。「タバコちょうだい」とそっけなく言われたが、

          サーカ・A劇場①『ピンク色のイグアナ』

          さよなら透明人間(クーブラ・カーンのラブソング)

          「君が欲しいーー 君があいつに脱がされている、 あるいは、 君が自分から脱いでいることを考えたために」              エルヴィス・コステロ 君は私を誘い、 私に「あなたが欲しい」とも言ったが、 それは人目につかないバーの奥の、 人目につかないボックス席の、 人目につかない不倫小説の中盤で、 ウイスキーの渦に溺れてる時だけだった。 君は私の魂を、 「ビートルズ」のラバーの靴底や、 「ルー・リード」のロックンロール、 「ディラン」の車のダッシュボードやなんかで、 何

          さよなら透明人間(クーブラ・カーンのラブソング)

          物体X(スライト・リターン)

          君が新聞紙の空の下を歩き、 「インク」の太陽の下を進むとき、 世界も、一面から社会面へと通り過ぎる。 もしも君が世界と歩き始めるとき、 けして走ってはいけない、 パールに似た輝きを通り過ぎるまでは。 それは暖かく、そして冷たい。 物事にはいくつもの側面がある。 夜と昼とではどちらが先でどちらが後か、 「答え」とは、何層にも重なるレイヤーケーキ。 君が土砂降りの中を歩き、 「情報」の洪水を進むとき、 世界は、真実と虚偽とを通り過ぎる。 世界が街なかを歩き、 「地域」の路地を抜

          物体X(スライト・リターン)

          ニュースペーパー・スカイ

          「今日、ある記事を読んだよ、オー・ボーイ」                 ジョン・レノン 私の知らない多くの物事が空に広がり、 見知らぬ顔が、光景が、私に覆い被さる。 言葉が、「信念」から、 あるいは「疑念」から生まれ、 太陽に焦がされ、雨に濡れ、 その空の彼方に、 ハーパー・リーの魂と共に消えてゆく。 私は知らない、 彼女の物語が何を暗示していたのかを。 マネシツグミの羽ばたきに似た彼女の旋律も、 私の知らない多くの物事のひとつだった。 「出来事(事態/事象)」から成

          ニュースペーパー・スカイ

          ボーン・イエスタデイ

          言葉は乱暴で、 正義は軽い。 人々は子供、 無知な世界では。 ゲームは荒れ、 選手は薄ら笑い。 観客は愚痴だらけ、 無知な世界に。  生まれたばかりの  無知な世界。  ジュディ・ホリデイは言う、  「無知な世界はとっても危険」。 老いた男は怒り、 若い男は働かず、 赤ん坊は落胆する、 生まれたばかりの世界に。 シーンはカット。 監督が撮るのは、 可愛い仔猫の動画と、 無知な世界。 金持ちは常に食べ、 貧乏人は道に寝て、 森と海は汚されてゆく、 無知な世界に。 車

          ボーン・イエスタデイ

          クレオパトラ・イズ・デッド

          彼女はすみれ色をした瞳の、 かわいい顔をしていた。 そして花嫁の父の前で、 少女から大人の女性に転身した。 彼女の手には『バターフィールド8』のライター、 肩にはミンクのコートが輝く。 しかし、泣いても無駄さーー クレオパトラは死んだのだ。 ボートが湖を滑ってゆく、 陽のあたる場所へと。 そこではモンゴメリー・クリフトが、 不幸なアメリカの青年を演じていた。 彼女は青年をとても愛していたが、 いつでも恐れていたのだ、 青年が処刑台に送られるのを、 そして、クレオパトラが死ぬ

          クレオパトラ・イズ・デッド

          スタローン

          2021年8月の半ば、 部隊は首都を制圧した。 その砂漠の国には、 緊張と混乱が今も渦巻く。 人々は助けを求めて空港に押し寄せたが、 全てのアメリカ人は帰ってしまった ーースタローンの国へ。 彼は聖なる戦士たちと共に、 ソ連軍と戦った。 敵が彼に尋ねる、「お前は誰だ?」、 彼は答える、「お前の悪夢だ」。 映画は「ラズベリー賞」を与えられ、 出演者もほとんど忘れられてしまった ーースタローン以外は。 新聞は書く、「民主主義の危機だ、 権威主義が世界を席巻している」と。 私は

          フラミンゴス・フライ

          5分前の私が廊下を歩き回っているーー 伝令のない伝令兵の身なりで。 錆びた言葉を振り回す武士の前で、 首なしの詩人と刀で戯れながら、 私は飛んで、飛んで、飛び跳ねた。 スランプに陥った時、 私は飛んで、飛んで、飛び跳ねる。 卓上ランプを超えて、 街の上空を飛んでいくと、 図書館のフラミンゴが、 私の後を追ってくる。 ロバート・プラントのキーよりも高く、 2人は「夜間飛行」を続けるーー 私は書き続けた、 味わったことのない刺激を求めて。 ずっと書き続けてきた、 時には「馬鹿

          フラミンゴス・フライ

          真夜中のサーカ・A

          私は太陽を求めて歩く。 一歩また一歩と、休むことなく。 明るい場所に君がいないと、 まだ夜にいるのだと、私にはわかる。 夜の果ての果てに、 君は私の詩を理解するよ、 そうに決まってる。 君は大人にも子供にもならず、 屁理屈ばかりで、笑顔もぎこちない。 声はうわずり、顔も赤らめて、 君は私の場所を避けようと動いてる。 夜の果ての果てに、 君は私の詩を理解するよ、 そうに決まってる。 喜劇が君を不安にし、 悲劇が君を後悔させる。 君は役者たちの演技を止めることに、 無駄な時間

          真夜中のサーカ・A

          舞台恐怖症

          1 開演まであとわずかだが、 ダンサーたちはお喋りをやめない。 司会者はまだチケットの手売りをし、 バンドは錆びたトロンボーンを鳴らす。 彼女は最高のシンガー、 この場末のバーレスクの。 客は彼女のパフォーマンスに興奮し、 メガネやパンツを白く濁らせた。 狭い楽屋では、 チンピラが金を巻き上げ、 パンチを1発置き土産に、 芸人にピエロの目をプレゼントする。 今夜も音楽とともにショウが始まるーー 世界の片隅のバーレスクと、 きらびやかな舞台恐怖症との間で。 2 愛に興味の

          道化と英雄

          人生に退屈しきった時は、 家を出て、別の場所を探すのもいい。 才能に退屈しきった時は、 鏡に向かい、映った顔と対話するのがいい、 こちらが感情的に問えば、 あちらは論理的にボケるーー そのように、英雄は挑み、 そのように、道化は笑わせる。 そのどちらも、君の知識が生む君の分身。 「知性」とは、道化と英雄の会話。 困難に対峙する時でさえ、心が笑うように、 憂いを詩に、絵に、歌に変え、 観客を「もう充分!」というくらい沸かすーー 牢獄の中の英雄を、 舞台の上の道化が、 「今度の