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冷たい月曜日

生きる苦しみにエキサイトした心が、
静けさに疲れた夜に溶け出し、
やがて空は青に染まった。
お前はネクタイを締め、スーツに袖を通し、
世界に別れを告げた、
足元はピカピカの靴で。
ルー・リードの歌詞と、
ゴッホの絵の具を使って、
「神秘の森」から届けられたラブレター。
精霊が導き、警察が指差したその森が、
お前が最後に息をした場所だった
ーーあの冷たい月曜日に。

ヘラジカの王が誇りを示すために、
狼の群れに立ち向かう、
その権利を誰が奪える?
勝者にとって世界のテンポは単調だが、
敗者には敗者の知る音楽がある
ーー「思考と表現の間に生は横たわる」。


神秘的な森の奥深く、
自然と同化したお前の心、
木に吊るされ、朽ちたお前の身体。
時間が監禁された弁当箱、
ポケットからこぼれるジャック・ダニエル、
用途をなくした一束の鍵。
お前は永久に部屋に戻ることはなく、
お前を狙い、身を潜めていたミッチ・リアリーの、
冷徹なプライドをズタズタにした。
そして使命を失ったフランク・ホリガンたち。
ジョン・F・ケネディですら彼らを治せない、
何故なら彼らの心もまた死んだのだ
ーーあの冷たい月曜日に。

軋みをあげる胃、
人前でかく大量の汗、
善と悪とが入り混じるサプリメント。
ノストロモ号のクルーたちのように、
「じゃ、またね」と、
お前は次の惑星への到着まで冷凍睡眠に入る。
しかしブラックホールのような命の限界が、
宇宙からお前の魂だけをひっぺがし、
地元よりも近い煉獄へと突き落としたのだ。
帰れないオフィスや、
恋人の現れないカフェで、
俺はお前がこう口ずさむのを聴く
ーー「人生はまったくフェアじゃないね」。

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