短歌 「みっけ」


そわそわと 救急車待つ 大人どけ  道路の隅に ミノムシみっけ


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ある日、交通事故に遭った。

父の漕ぐ自転車の後ろに乗って保育園に通っていたとき。
交差点で自動車とぶつかった。事故があった瞬間、私は道路に面した駐車場に小さい体を投げ出された。
幸いなことに、ちょっとした擦り傷だけで済んだ。父も無事だった。自動車を運転していた人も常識ある大人だったので、すぐ警察と救急車を呼んでくれた。

警察が来て、父や自動車の運転手と話をしていた。大人たちはなんだかそわそわとしながら、救急車を待っていた。私も、よくわからなかったけれど、いつもとちがう雰囲気にそわそわした。

そんなとき、道の隅っこにミノムシがぶらさがっているのを見つけた。小さくて、今にも糸が切れてしまいそうな弱々しい様子だった。子どもだったから、低い目線の先にちょうどいたのを見つけたんだろう。
「この虫、近くに色紙を置いておくと”カラフルな蓑”をつくるんだよ」なんて父が言っていたような気がする。みの虫を見るのは初めてだったから、なんだかわくわくした。


そんなことを急に思い出したので、記しておくことにする。

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