親の課題。

幼稚園から様々な課題が届く。
プリントの提出や
諸々の経費の徴収から始まり、
用意する物、
服装の指定、
アンケート等々。

時に掲示されるような作品もある。
「自己紹介カード」、
「夏休みの想い出」、
「名前の由来」、
「先生へのアルバム」など。

これらの事柄でミスを犯すと
恥を書くのは子供である。

一人だけ違う服や、
一人だけ掲示がない。
子供の指摘は容赦なく飛んでくる。

そんなこんなで取り組む親は、
学生時代の自分の課題の時以上に真剣だ。

今回は卒園文集の一頁。
「おうちのひとからのメッセージ」である。

文章を構成して行く上で
まず壁に当たったのは、
全編平仮名という事。

粗方文章を作った時点で気が付いた。
これは子供が読むのだと。

平仮名の文章は、
とにかく読み難い。
文脈によって文字と文字が重なり、
変な言葉を作りあげたり、
「は」の読み方に迷う一文も多々出てくる。
「は」なのか「わ」なのか。
そこで言葉を
入れ替え、
差し替え、
句読点を意識して作った。
すると非常に点の位置で迷う。
とにかく多くなってしまい、
意味合いや雰囲気が変わってしまうのだ。
極力句読点は減らして、
字間や行間を微妙に空けてみた。

さらに課題は続く。
子供の読解力を考える事。

意味が理解出来るのか、
想いが届くのか。

もう一度読み返して、
少しでも複雑な言い回しや
難しい言葉は分かり易く変えた。

絵本作家さんの偉大さを
身に染みて感じながら読み返す。

すると新たに問題が。

スペースが足らない。
元々想いが募り過ぎて
長々と綴った文章だったので、
分かり易い言葉に変えて
更に伸びてしまった。
これは長い。
果たして飽きずに
最後まで読み切る事が出来るのか。

いや、それ以前に用紙に収まらない。
米粒ほどの小さな文字では、
子供は読む気にならない。

文章のスリム化を決行。
余分な言葉はカットして行く。

大胆に削除して行きながら、
文字の大きさやレイアウトを考えた。
段落をつけ、
全体の構成も良い感じなった。

罫線を引き、
下書きを始め、
最終的な修正を終えると
非常に感慨深い気持ちになる。
想いも昂り、
いざ清書となったその瞬間、
私の筆が止まる。

子供の見本となる様な平仮名でなければいけないのではないだろうか。

思えばこの何十年と平仮名の本来の形を気にして文字を書いたりしなかった。
幸い習字を習っていたので
字を書く事は嫌いではなく、
どちらかと言うと好きな方だ。
特別達筆なわけではないが、
「汚い字」
と、言われた事も思った事もない。

しかし、
平仮名の「とめ、はね、はらい」等は
とっくに忘れてしまい、
気にも留めず書いている。
これが恐ろしい。

特に気になったのは「た」だ。
二画目の終いを
兎に角「はねる」癖がついていた。
そして、
どうしても一画目の横線から頭が出ない。
一連の流れで書くと、
とても子供のお手本にはなれない。

続いて三画目。
「はねる」か「とめる」か。
どうしてもさらりと書くと「て」の様になって
はねる癖が抜けない。

文化庁によると、
どちらも間違いではないそうだが、
基本的なフォントを見ると
「とめ」が一般的な気がする。
色々な文献を確認したが、
「はねる」を提唱している物はないそう。
はねるのはどうやら、
三画目から4画目に移行する時の、
「筆の穂先の軌跡」という解釈らしい。

そんな事を意識していたら
どんどん清書が恐ろしくなってしまい、
とりあえず別紙に何枚も下書きをした。

この時点でもう感慨や想い出の回想は終幕。
今、私の頭の中はより読み易く、
お手本になる文字である。

一通り書き上げ、
満足し、
時計を見ると深夜一時半。

いい加減清書をしようと
現実に引き戻された。

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