さくらい

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←前話 思い出の賞味期限はいつまでなんだろう。 スーパーからの帰り道、ふとそんなことを考える。 ねぎやら豆腐やらをぱんぱんに詰め込んだエコバッグを手に歩く、家ま…

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6年前
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←前話 「いやー、舞浜くんは変わらないねえ」 夕日のように赤くてかてかした顔をくしゃくしゃにして、教頭先生は笑った。お酒の匂いがふわりと立ち上る。 先生の行きつ…

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7年前
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←前話 あの子はいつもさみしそうな目をしている。 窓際の一番うしろの席で、その小さな手にはいつもの本。分厚い、桜色の表紙の本。彼女はどこかさみしいような、かなし…

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7年前
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6.

←前話

思い出の賞味期限はいつまでなんだろう。

スーパーからの帰り道、ふとそんなことを考える。
ねぎやら豆腐やらをぱんぱんに詰め込んだエコバッグを手に歩く、家までの道。

あんなにぎらぎらと輝いていた太陽は、いつの間にかおとなしくなって、十月の午後はぽかぽかと暖かい。空は澄んでいて、のらねこが塀の上で溶けている。ねこはかわいい。おなかを撫でようとしたけれど、真っ黒なそいつは、にゃあごと鳴いて一

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4.

←前話

「いやー、舞浜くんは変わらないねえ」

夕日のように赤くてかてかした顔をくしゃくしゃにして、教頭先生は笑った。お酒の匂いがふわりと立ち上る。

先生の行きつけの居酒屋「いわし雲」は、路地裏にこじんまりと佇む店構えのせいかお客は僕らしかいない。まさに頑固親父という感じの無口で強面の店主が、何かを刻むトントンという音だけが店内に響いている、そんな店だった。

しかし、先生のおすすめだけあって

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2.

←前話

あの子はいつもさみしそうな目をしている。

窓際の一番うしろの席で、その小さな手にはいつもの本。分厚い、桜色の表紙の本。彼女はどこかさみしいような、かなしいような目でそれを眺めている。僕はいつもそれを見つめている。

五月のやわらかな木漏れ日があの子の机の上踊っていた。休み時間の教室はひどく騒がしいはずなのに、彼女を見ていると何故だか何も聞こえなくなる。僕と彼女だけ、透明な箱の中にいるよ

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