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4歩歩いた先にコーヒーがある 4
巡さんと私は、あまり休みが重なることが多くない。私は土日休みになることが多いけど、巡さんは土日に仕事が入ることが多く、なかなか2人で一日中家でゆっくりしたり、どこかに旅行に行くなどができなかった。奇跡的に休みがあったときは、二人でショッピングに出かけたり、ピクニックだと言ってお弁当を作って散歩に行ったりしていた。
そして今日も休みがあった。もう昨日からテンションが上がってしまい、どこにいこうかとか、何を食べよう、とかもう本当にわくわくして修学旅行前で眠れなくなってる小学生みたいになっている私だったけど・・・
「雨・・・・・・」
昨日まできれいに晴れてたのに。しかも今日に限って大雨だ。小雨ならまだしも、思いっきり大雨。風も強い。ニュースで嵐だ、とも言われている。
「菫、仕方ないじゃん。楽しみにしてたのは俺も同じだけど」
窓際でうなだれる私の隣に巡さんが立って、そっと肩を抱いた。そうやって温かい言葉をかけてくれるけど、現実とは冷たいものだ。
「だって!せっかく休みがあったんだもん!滅多にないのにさ」
「まあまあ。その分家で一緒に過ごそうよ。実は昨日DVD借りてきたんだ。それ一緒に観よう?」
「ほんとに?!観たい!」
でも待てよ・・・。
「怖いやつ?」
ホラー系が私は苦手なので、一応そう聞いてみると、
「ううん。普通の純愛モノだよ。久しぶりに観たいのがあって」
そういって巡さんは鞄からレンタルビデオを取り出した。少し古そうだけど面白そうな洋画だ。
「観る!!」
「じゃあ決まり。ちょうど昨日ポップコーン買ってきたからそれ食べながら観ようか」
「え!それほんとにいい!映画館来たみたいにしよ!」
私はそう言って、冷凍庫から冷凍ポテトを取り出した。
「そんなのいつ買ったの?」
笑いながら巡さん。
「おととい食べた過ぎて仕事帰り買ったの!」
「そうなんだ。でも俺も食べたいし、全部揚げちゃおうか」
「うん!」
そうして私たちは映画の準備をする。巡さんが買ってきたポップコーンというのは、アルミのフライパンのような形の皿にトウモロコシが入っているという、よくお店で売っているやつだ。小さい頃お母さんに食べさせてもらった思い出があって懐かしい気持ちにもなる。
机にポテトとポップコーンとコーラを並べて、私たちは二人でソファに座って映画を観始めた。
有名な映画だから菫も観たことあるかも、と言われたけど観たことのない映画だった。洋画は『天使にラブソングを』と『チャーリーとチョコレート工場』と『ハリーポッター』しか観ていない。基本ジブリかポケモンの映画しか観ない私である。
でもすごく面白かった。笑いあり涙あり、で結構王道モノの恋愛映画なんだろうけど、もの凄く感動した。戦争で離ればなれになってしまった主人公たちの再会のシーンで、私は涙があふれた。
ああ、思いが報われたんだなあ。沢山待ったもんな・・・。本当に、本当に報われて良かった。
私は机の上のティッシュに手を伸ばして、涙を拭いた。でも、それだけじゃ足りなくて何度も涙を拭く。本当に良い映画だ・・・。
そう思っていると、泣いている私に気づいたのか、巡さんが私にそっと寄り添ってきた。
「巡さん?」
「俺も、このシーン好きなんだ。思いが報われたってわかって」
巡さんも同じだ。
「私も、そう思う・・・!」
思いが報われるというのは、人生滅多にないことだ。恋愛に関しても、仕事とか人間関係にしても、全部そうだ。どんなに頑張ったって手に入れられないものもあるし、信じてたって裏切られることだってある。それでも何かを、誰かを信じるということは、やはり報われたときの喜びを知りたいと思うからだ。
巡さんは私の頭に自分の頭をくっつけて、
「ははっ。一緒だ」
そう言ってフライドポテトを手に取り、私に差し出す。私は照れ隠しにそれを食べて見せた。
「かわいい」
「え、映画に集中してよっ。もう終わっちゃうよ」
「はいはい」
本当は嬉しいけど。でも今更恥ずかしいから絶対に嬉しいなんて言わない。
スタッフロールが流れる頃、あんなに派手に降っていた雨は止み、日が差していた。
「あ、晴れたじゃん。片付けたら、散歩にでも行かない?」
巡さんは窓の外を眺めながら言う。
「うん!行く!」
よく見ると、窓の外に虹が出ていて。
やっぱり二人で過ごす何でもない日って、最高だな。その思いをかみしめながら出かける支度をした。
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