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No.476 トンビもカッコイイ、アヒルも美しい

換気をしていると、外からピーヒョロロロという鳴き声が聞こえてきた。お祭りの音ではなく、トンビの鳴き声だ。久しぶりに聞いて、なんだかうれしくなった。なんでだろう。

世の中の非日常があまりにも長く続く中で、自然の日常を感じられるとほっとしたからか。心穏やかにいられる場所があるなって、ちょっと非日常から離れられる。


トンビの声を聞きながら、ちょっぴり苦い記憶を思い出す。私が幼い頃、「あれはタカ?ワシ?」とトンビを指さして親に聞いた記憶。「タカやワシなわけないでしょ。あれはトンビだよ」と返されたような気がする。

テレビか図鑑で見たタカやワシは大きくて勇ましくてかっこよかった。小さい私から見ると、遠く高く大きな羽を広げて飛んでいるトンビも、タカやワシのように見えた。ま、今でも鳥の区別はあまりつかないから、単に目利きが悪かっただけかもしれないけど。


「トンビがタカを生む」、なんてことわざがある。平凡な親から、非凡で優れた子が生まれるたとえのようなことわざだ。トンビはタカより下なのか。

たしかにタカはかっこいい。狩猟もするし。おそらく古くから日本で愛されて尊ばれている鳥なんだろうし(大河ドラマ『麒麟がくる』を思い出しながら)。鳥ヒエラルキーの上位なのかもしれない。

でも、トンビだってかっこいい。今だって悠々と空を飛ぶトンビを見るの、私は好きだ。ゆったりとした時間の流れを感じて、ピーヒョロロロという鳴き声は自然に呼ばれたような気持ちがするから。

生物学上のことはよくわからないけど、タカもトンビもかっこいいのになって私は思っちゃう。


ちょっと違うけど「みにくいアヒルの子」、なんて物語もある。「みにくい」って言われていたアヒルの子が実は白鳥で、めちゃくちゃ美しく成長しました、って話。

いや、生まれから美しかったからめでたしってなっちゃうのか。結局美醜の優劣なんか、と思っちゃったり。物語を否定するわけじゃないよ。よくできた物語だなぁと思うし。

たしかに「みにくい」といじめていたアヒルの子には「みにくい」と思うけど、アヒルだってかわいいよ。美しくもあるよ。そりゃあ白鳥はすらっとしていてバレエになるほど美しいけどさ。アヒルだって美しい。


それぞれのかっこよさや、それぞれの美しさがあるんだよね。ことわざや物語を否定したいわけじゃない。何かと何かを比較するだけじゃなくて、それぞれの価値に気づけたらいいなと思った話。


とんびが飛んで気持ちいい空の下、人がいない道を散歩したくなる。気持ちと風はもう春だね。世の中も耐え忍ぶ冬が長く続くと思うけど、早く、早く春が来てほしいな。

2020年4月8日(水)

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