見出し画像

社会人一年目の私と、今の私へ

私にとって、社会人一年目とはいつのことだろう。経歴を簡単に書けば、中卒、いろいろ中退、ニート期間多々があってライターになった。新卒フリーランスなんて言葉も聞くけれど、私は中卒フリーランス。なりたくてなったわけじゃない。

中学まで、私はものすごく勉強ができるのだと思っていた。自分は特別だと、心の中で感じていた。小さな世界でずっと1番だと、自分が特別みたいに思えてしまう。

でも、広い世界に出ると、自分のたいしたことのなさを知ってしまう。勉強だけでなく、きっと何でもそうなんだろう。

思っていたよりも勉強ができなくて挫折して、改めて自分なりに勉強を頑張ってみたけど挫折して、別の新しいことを将来の夢にしようと思って挫折して…挫折した後には家に引きこもって、外に出て仕事なんかできなかった。立派な無職。


そして、私は引きこもる。外に出るのが怖い。たぶん人一倍プライドが高いのだ。惨めでダメな自分だと他人に見られることがすごく怖かった。今もそういうところがある。ちょっと太ったり肌荒れたりすると、すぐに外に出たくなくなる。

孤独も怖い。ひとりぼっちは怖い。社会から断絶されて、何の価値もないよって思い知らされるみたいで、怖い。

そんなダメ人間でも、ダメ人間なりに「これではダメだ」と思っていて、ダメ元で仕事をしようと、でも外には出られないダメっぷりだから、家でもできる仕事と思って、クラウドソーシングに登録して、“書く”仕事を始めた。

一年目の収入は微々たるもんで、収入と呼べるような金額なんかもらえない。1文字0.1円とか、もっと下かもしれない。そういう仕事ばかりしていた。それでも、働いてお金を得る、それだけでうれしかった。

今考えると、ライターという仕事を始めたそのときが、私の「社会人一年目」なのだろう。だけど、そのときはライターを生業にできるなんて思っていなかったし、とりあえず少しでもお金を稼がなければという気持ちだけだった。

一般的な社会人一年目は、くっきりと区切りがあって、始まるように思う。大学を卒業して、入社式に参加して、研修をして、部署に配置されて、先輩から学んで…知らないからイメージだけど。

私はふわっと始めてみて、途中何度も立ち止まりながら、今も奇跡的に続けられていて。社会人一年目と言っても、なんだかグラデーションのようで、はっきりとした区切りがない。


二年目以降から、Webメディアで書かせてもらえるようになって確定申告もして納税もした。国にお金を払うたびに「生きていくって大変…」と思いながらも、社会に参加しているんだなという気持ちにもなった。

失敗もたくさんした。ネットリテラシーを知らなくて、私が個人で迷惑をかけたこともあった。突然ぷっつんすることもあった。騒動に巻き込まれたこともあった。

たくさんの人の支えもあった。私が失敗するたびに、挫折するたびに、家族は心を痛めただろう。悲しくて、情けなくて、呆れて、家族はそういう感情を持ちながらも、どうしようもない私に居場所を与えてくれた。

仕事でも、優しく誠実な人たちにもたくさん出会った。決して人付き合いが良いとは言えない私に、優しいつながりをくれた。

そして、ライターという仕事を今まで続けてこられた。文章を書くということの誠意を日々考えながら、ときどき立ち止まったり戻ったりして、それでも誠意を持って文章を書こうと努力している、まだ道半ば。

初めて確定申告をするときに、職業欄に「フリーライター」と書くのは恥ずかしかった。名乗って良いものなのか、という気持ちで。横文字で気取ってるように見えそうだなという恥じらいもあったりして。

今はさらりと書けるようになった。自信とか誇りとかではなくて、ライターとして仕事をしてきた私が体になじんだから、違和感がなくなったのだろう。


「社会人になった」と実感できたのは初めて確定申告をしたとき。そして、最近もあった。

無職のときにクレジットカードを作って、限度額が10万円という最低金額だった。今年、新しいパソコンを買うためにカードの限度額を引き上げる必要があったので、申請した。そしたら、限度額が結構上がっていた。

私はこの金額は払えると思われているんだ、と思うと、社会人として認められたようにちょっとうれしかった。頑張って働いてきたんだな、と自分も誇らしく思えた瞬間だった。


この仕事を始めるきっかけの私がいなかったら、今の私もない。そこで出会えた人たちの素晴らしさ、知ったことの素晴らしさも、きっと私は知らない。だから、ライターを始めた自分を褒めたい。偉いぞ。

そして、今ライターという仕事とどう向き合っていくか迷っている私には、「社会人一年目の私」の思い切りと行動力が欲しい。「とにかく何か始めなければ!」という焦燥感は同じように抱いているのに、今の私は行動に出ない。行動に出たから、今があるのに。

だから、社会人一年目の私にアドバイスできることなんてなくて、見習わなければと思う。

あ、でもこれだけは伝えておきたいな。今も支えてくれている人たちを大切にしなさいと。感謝しなさいと。言葉で伝えて、行動で示しなさい。

今の自分にも言わなければならないね。少しずつ恩返ししているつもりではあるけど、返せないほど大きく温かく支えてもらっているな。

もしキリンのビールがもらえたら、私はお酒が飲めないから、そんな人たちにあげるんだ。「ありがとうね」って。

舵を切ってここにたどり着いて幸せを実感している私は、未来への舵をどう取っていこう。迷いの中にいる。未来の私が、今の私を見て、「あのときの自分に感謝したい」と今思っているのと同じように舵を切れたら。今を、そのときにしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?