No.366 心を氷面に写して

フィギュアスケートの全日本選手権が行われている。このニュースを聞いたり、実際に演技を見たりすると、「ああ、年末だな」と毎年感じる。

去年、noteを始めたときに書いていたのが、まさにフィギュアスケート全日本選手権のことだったので、「noteを書き始めて一年経ったんだな」という気持ちが今年から加わった。

昨日は休みで時間もあったので、女子のFSを見た。生中継していると気づいたときが遅かったので、最終グループになっていたのだけれど。

フィギュアスケートをリアルタイムで見るとき、とても緊張してしまう。ジャンプが飛べるか、飛べないか。両手を重ねて、はっと息をのんでしまう。

表彰台確実だろうと思われていた、宮原知子選手や坂本花織選手がジャンプで調子を崩して、他にもほころびが出てしまっていて、悔しそうなつらそうな表情を見ているこちらまでつらくなる。二人とも本当に良いプログラムだと知っているだけに、切なかった。

一方で、樋口新葉選手の復活はうれしかった。他の選手にはない力強さが私は好きで、大人の女性らしいしなやかさもあった。ジャンプは高くて幅もあってやっぱり力強かったけど、美しくもあった。タンゴの曲に合わせたステップは最高だった。

優勝した紀平梨花選手は圧倒的だった。以前も地球の誕生というテーマのプログラムで難しそうだなと思ったけど、今回も概念のような難しいプログラム。ジャンプはクリーンで余裕があるようにも見えるほど美しいし、全てのエレメンツが途切れないし、曲との調和もあるし、ほぼノーミス!最終滑走で見終わった瞬間「これは優勝だな」と思うくらい圧倒的だった。本当に素晴らしかった。これでさらに4回転ジャンプを加えるという伸びしろもある。期待がまだまだ膨らむ。

見ていると、フィギュアスケートは“心”が氷面に写し出されてしまうようなスポーツだなと感じる。心の揺らぎがあれば、凍り付いてしまうように。逆に燃えたぎるような闘志があれば、溶けてしまうかのように。それが輝きにもなるし、美しさにもなるし、感動にもなるし。繊細なスポーツだ。

誰一人同じ滑りや演技はしなくて、それぞれに個性があって、私はそれぞれの美しさが好きだ。もちろん順位や点数といった結果も大事だけど、何よりもプログラムを完成させる改心の滑りをすれば、どんな順位や点数だって人の心を打つ。

誰よりも悔しいのは、つらいのは本人たちで、私がどうのこうの言うことではないけど、まだ今シーズンも試合はあるから、プログラムを完成させるような滑りができるといいな。氷面が華やかに写し出されるような、そんな滑りが見られますように。


2019年12月22日(日)


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