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萌ゆる緑の秋の日に、さよならを言わせて

夏に祖父が亡くなった。整理はつかないけど日常は過ぎていって、季節はいつの間にか秋。母が生まれ育ち、祖父と一緒に暮らした土地に、骨を納めることになった。父と、母と、一緒に、私は初めてその場所へ。

そのまちの緑は、同じ北海道なのに私が暮らすのまちの緑と違って、秋なのに萌ゆる春のように淡くて、見慣れなかった。

納骨の前に、母が学生時代に通ったというパン屋やカレー屋へ行ったり、クイズを出したり、こんなときなのに、こんなときだから、どうしようもなく日常的な家族の時間を過ごした。

骨を納めて、さよならを告げた時間はあっという間だった。最期に祖父の顔を見たとき、目は私を私だとわかっていなかったけど、苦しそうに開いていた口を真一文字に結んで、引き締まった表情になったのを思い出しながら。

たぶん似てるね、私たち、みんな。

帰り道、見慣れた緑に戻る頃、私はやっと萌芽の時を迎えたような気がした。

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