『狂乱家族日記 壱さつめ』感想

今から約15年前に単行本が出た『狂乱家族日記』を、今更読み始めています。

単純に好きなゲームのシナリオライターの過去作であること、そして「家族」が題材である点に惹かれ数ある作者の作品からこの作品にまずは着手しました。

以下ネタバレ込みの感想です。

「どうだ、世界は適当と欺瞞でできているだろう。」

ただひとつ、「世界を脅かす存在の子供かもしれない」という可能性だけで作られた乱崎家。

彼らは権力という強制力を持って作られた「家族」です。

しかし、だからこそ暖かい。それぞれがそれぞれの意志を持って互いを尊重し家族を傷つける存在を許さず時には一致団結して問題解決に奮闘する。敵が「家族」の「血の繋がりのある家族」だとしても、それに怯むことはありません。

適当だって欺瞞だって構わない、意志を持った人間が望んだら、あらゆる手段を使ってでも叶えてあげる。悲劇を選択したとしてもその悲劇を回避する為に立ち上がる。

彼らが「家族」になったのは彼らの意思ではないかもしれませんが、「家族」になってから「家族」であり続けたいと思う彼らには間違いなくその暖かみが存在しています。

「だって彼女は捨てなかった。人間である自分自身を。」

姫宮千子さんがその環境故に歪み、自分を守る為に更に下の妹を虐げた。その中で生じた、加虐の為に人間性を捨てた者を鬼と呼び、被虐に耐える為に人間性を手放さざるを得なかった者は人形と呼ばれる。

この対比が好ましかったです。作者の「人間性」というものの捉え方と描き方が好みなので、また別のディティールで見れたことも含めよかったです。

優しいが故に他者を加害することを選択せず他者を慮りすぎて自分の意志を押さえ込み耐えて耐えて耐えてきた姫宮零子さん、いえ乱崎優歌さんのその優しすぎる人間性が認められる環境に恵まれて本当に良かったと思います。そして不幸にもその優しさを保ち続けられずに鬼となってしまった姫宮千子さんが乱崎家に「再教育」の名の下迎え入れられてよかった。

姫宮家のまとめ方や迎え方にやや強引な点があるとは感じましたが、その強引さこそを痛快と捉えることもまた楽しみ方のひとつなのでしょう。


気になる点並びに今後への期待

ひとつめが、大変キュートでありながらその振る舞いのお陰でキュートさが迷子になってしまいそうになる「母」の乱崎凶華様、そして一見常識人でスマートな語り手のように見える「父」の乱崎鳳火さん。先に関係性を与えられたこのふたりの「夫婦」関係がどう発展していくか楽しみです。正直、凶華様はかなり意識しているのでいいものの、鳳火さん、彼は常識人のように見せかけていますが流されがちな経歴や語り口やら行動の端々に見える異常さが垣間見えているので…。可愛らしく言うと鈍感というか、かなり感覚が麻痺しているような印象ですので心配です。

ふたつめが、乱崎銀夏さん。銀夏さんの生い立ちや現在の在り方は、あんスタの読み取りという点においてもかなり気になっております。15年前の作品というのは勿論ありますが、「オカマ」という呼び名を使っているのも気にかかる点ではあり、しかし「男らしさ」を押し付けることを時代錯誤と評している点に於いても、この気がかりに折り合いをつける何かがあることも期待しています。

あとは余談ですが、雹霞さんがかなり可愛らしいので今後の出番も楽しみです。

冊数があるのと、自分が集中力が無いのでいつになるかはわかりませんがまずは本編シリーズ読破を目標に読み進めていこう思います。

あとは小説とは関係ありませんが先日あんスタの方で開催されていたイベント『骨董奇譚』の感想もぼちぼちまとめたいです。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


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