後期高齢者の心を鷲掴みにする5つのポイント

後期高齢者。そう聞いて、あなたはどう思いますか?自分には縁のない人たちだと思いますか?

現在の日本は少子高齢化社会。後期高齢者(75歳以上)はおよそ1,691万人、総人口の13.3%を占めています(平成29年版高齢社会白書)

人口の10人に1人は後期高齢者、という時代…街を歩けば出会わない日はないというくらい高齢者の数は増えています(もし見かけたことがなければ、平日の午前中に整形外科へ行けば嫌というほど出会えます)

つまり、あなたの生活やビジネスに後期高齢者が入ってくる可能性というのはどんどん高まっていくということなのです。……ピンときませんね(笑)でも高齢者がビジネスの対象となるのには根拠があります。

今の高齢者はお金持ちでヒマだから

高齢者がビジネスの対象…あまりピンとこないかもしれませんが、いわゆる生産年齢(15歳~64歳)に比べてライフイベントの少ない高齢者は、そもそも支出があまり多くありません。加えて、年金は今の高齢者が一番「貰える世代」とも言われています。つまり「持っている人は持っている」ということなのです。

身体のどこも痛いところがない、という高齢者は殆どいませんが、それにしても足腰の丈夫で元気な方が以前よりも増えてきました。70代はまだ現役で働いている方もいるほどです。それほどにお元気な方が定年退職してずっと家にいる、となると、膨大な時間を持て余すことになるのです。

高齢者と仲良くなるのは簡単

高齢者は自分たちとは世代も離れているし生きた時代も違う。下手に関わればお説教されるかもしれないし、言いがかりをつけられるかもしれない。そもそも頑固。そして大体顔が怖い(特に男性)…なんて思う方が大半かと思います。ですが、ポイントを押さえれば高齢者の心を掴むのは非常に簡単です。

中高年の女性接客5年、接骨院勤務7年、通所介護勤務1年の私が仕事を通じて得た高齢者の心を掴む5つのポイントを今からご紹介したいと思います。

介護職だけど高齢者とのコミュニケーションが取れない、高齢者対象の接客業をしている、高齢者対象のビジネス展開を考えている人はぜひ以下のポイントを参考にしてみて下さいね。

1.テッパンのネタは天気と健康

そもそも会話の導入に困っている方は、とにかく「天気」と「健康」の話を振りましょう。これには理由があります。

まず「天気」というのは高齢者にとって死活問題なのです。何故かというと、その日の天候、気温、湿度が自身の体調にものすごく影響を及ぼすからなのです。そしてこれはかなり個人差があるため、あなた自身が「快適」と感じていても高齢者にとっては「不快」と思うということが多々あることを理解しておいて下さい。

例えば、若い世代にとって晴れている日は気分がいいと感じるかもしれませんが、「日差しで目が痛い」「暑いけど腕を出せないから」「膝が痛い(その日晴れていても数日後に天気が崩れる場合既に痛みを感じる人もいます)」等と言う人もいます。ちょうど良い気候でも「暑いのか涼しいのか分からない」「肌寒い」「膝が痛い」等と言う人もいます。

ですから天気の話を振る時は「今日は晴れてて気持ちがいいですね」と最初から感想をくっつけて話を振らずに「今日はよく晴れてますね」とか「今日は曇ってますね」といった風に「事実」で話を振ってみて下さい。すると相手の方から「そうね、何だかこういう日は○○なのよね」といった風に「自分がどう感じているか」を話してくれます。(もし引き出せなければ「こういう時あなたの調子はどうですか?」と聞いて引き出してみましょう)

相手から「感想」の部分を引き出せたら、そこに「共感」を寄せます。ここでの共感はあくまで「嘘っぽくなく」共感することが大切です。「こういう天気は膝が痛くなる」といった言葉に「そうですよね!膝痛くなりますよね」と答えると、「あなたくらいの歳で膝の痛みが分かるわけない」と思われるので信頼を得ることができません(実際膝の痛みを持っているなら話は別ですが)ですからここは「そうなんですね、どういう時が一番痛いですか?」や「痛い時はどういう風に過ごしているんですか?」など相手の情報を更に聞く姿勢を見せたり「私は膝の痛みが分からないけれど、○○と思います」と正直な気持ちを伝える方が相手の信頼と共感を得ることができます。ここは無駄な演技をしない方が良いところです。

2.相手が一番長く住んでいる土地の情報を振る

少し親しくなってきたら、相手が最も長く住んだ土地がどこなのかを聞いてみましょう。今いる場所が地元なのか、それとも別の場所にずっと住んでいたのか、ぜひ確認してみて下さい。もしそれがあなたの良く知っている場所だとすれば、「昔は○○でしたよね」「あそこに××がなかったでしたっけ?」など、どんどん「昔こうだったよね」情報を振りましょう。長く生きた人たちにとって過去の情報は「懐かしさ」や「共感」を生む一番の材料です。(もちろん反応を見ながら振って下さいね)

また、相手が長く住んだ土地があなたが殆ど知らない、もしくは全く知らない場所だったとしても大丈夫です。今度はあなたがインタビュアーになってどんどん質問して下さい。質問はなるべくピンポイントかつ具体的にしましょう。例えば「この辺りは坂が多いけれど、あなたの住んでいた○○はどうでした?」とか「△△って冬はとても寒いって聞いたことがありますが実際どうでした?」など。相手が答えやすい質問を投げてあげる方が話が展開しやすくなりますよ。

3.ネガティブや謙遜は逆手にとってネタにする

高齢者は基本的にネガティブな発言しかしません。あれができない、これもできない、あそこが痛い、ここも痛い…そして二言目には「どうせ死ぬ」「早く死にたい」「ポックリ死にたい」と死の話になります。

これは非常に難しいのですが「そんなことないですよ」「そんなこと言わないで頑張りましょう」というのは一番話が展開せずつまらない結果を招くことになるのです。ですから、高齢者のネガティブ発言や謙遜は批判してポジティブに持っていかない方がいいです。若いあなたの言葉一つでポジティブになっていたら苦労はないですからね。

ではどうすればいいのか。実はこれも基本は「同調」するのがオススメなんです。ただ同調の仕方についてはいくつかコツがあります。

まず基本スタイルは「同じ発言を言い回しを変えて繰り返すこと」です。これはどういうことかと言うと「今日も膝が痛い、腰も痛い」という言葉に対しては「そうなんですかー、いつも通りですね」とか「痛いところばっかりですね」とか「逆に痛くないところって数える程度ですね」とか、そういう感じです。ほんの少しだけブラックな言い方をしているのが分かるでしょうか。これが非常に重要になってきます。

この僅かなブラックにはぜひ慣れて頂きたいのですが、どうしても抵抗がある、自分のキャラに合わないと感じるならば「あなたの視点」ではなく「一般の視点」として答えることをおすすめします。具体的には「もうさっさと死にたい」等の発言に対して「みんなそう仰るんですよね(笑)」とか「終活流行ってますもんね」とか、そういう感じです。あなた個人の意見、というよりは「周りはこうだ」というワンクッションを挟む感じです。

4.最終目標は笑わせること

高齢者をポジティブにさせる唯一の方法があります。それはどんな手を使ってでも「笑わせる」ことです。芸人でもあるまいし笑わせるなんて無理、と思うかもしれませんがいくつかポイントがあるのでご紹介します。

基本的にはブラックユーモア一点推し

なぜブラックユーモア一点推しなのか。実はブラックユーモアによる笑いで中高年の心を鷲掴みにした成功例の持つ有名人がいます。この方です。

そう、皆さんも御存じ「綾小路きみまろ」さんです。

彼の芸風はまさに「中高年をディスったブラックユーモア」そのものです。彼のネタを聞いて「高齢者を馬鹿にしている」「高齢者を敬う気持ちがない」と怒る人はいるでしょうか。確かに一部はいるかもしれませんが、もしそれが大多数ならば彼はここまで笑いを起こすヒットメーカーにはならなかったでしょう。

実はこの高齢者におけるブラックユーモアには強烈な「共感性」が含まれているのです。「あれができない、これができない、何にもできない」といって綾小路さんはブラックジョークを言いますが、聞いている方は「そうそう(笑)」とそこに共感してしまうわけです。それが事実だから。

そしてこれは綾小路さんではなくても誰でもできることなのです。ある一定のコミュニケーションを取り関係性を築きあげれば、綾小路きみまろさんの芸風のような「高齢者ブラックジョーク」は絶大な求心力を発揮し大きな笑いを生むことになるでしょう。

ただし綾小路さんレベルのネタを振るのは上級者テクニックです。まずは「事実に少しだけブラックを入れる」ことから始めてみて下さい。出来ていないことに対して「こういうのが出来なくなってくるんだよねぇ」とか「みんなこう言うんだよねぇ」が基本スタイルです。

とはいえ相手を見て使うこと

ブラックユーモア一点推し、と言いましたが相手をよく見て使い分けることが大前提です。まずブラックユーモアを振るのは99%女性にして下さい。男性、特に昭和前半の男性はまだまだ男尊女卑の色が濃い時代を生きた人たちであり、プライドも高くユーモアや冗談が通じる人はなかなかいません。ここで「全然できてなかったですね」などと言うと「けしからん」とまず怒りを買うことは必至です。綾小路ファンの殆どは女性ですよね。それが答えです。

またさじ加減も相手に合わせましょう。強烈にいじってあげた方が喜ぶ人もいれば、その雰囲気をそっと楽しむという人もいます。忘れてはならないのは「どんな手を使っても笑わせる」ということ。これは通所介護などの集団空間ならば「全員が平等なレベルで」を常に頭に置いておいて下さい。誰かはとても楽しかったけれど誰かにとっては最悪の時間だった、とならないようによく相手を観察し様子を見ながら話を振っていきましょう。

5.相手に対する敬意を忘れないこと

距離感が近づいてきたり親しくなってくると、疎かになってしまうのが「敬意」です。

特に高齢者というのはできなくなることが増えてきて、我慢がきかなくなったり子供じみたことを言ったりすることが増えてきます。そういった場面で絶対にしてはいけないのは「子供扱い」です。

相手への敬意を忘れて接すると、一気に態度に出て相手に伝わります。これは単に「敬語を使わない」とかそういった話ではありません。逆に言えば、砕けた話し方をしていてもきちんと相手に敬意を払っていれば失礼にはあたりません。

現在の後期高齢者は「戦争体験者」です。そして「物の無い時代」を経験し、生きるか死ぬかを体験してきた人たちです。たとえ排泄に介助が要るようになったとしても、あり得ない間違いをすることがあっても、子供じみたわがままを言ったとしても、彼らが激動の時代を生き抜いてきたことを忘れないで下さい。

もちろん、高齢者のお小言やお説教を全て受け入れなくてもいいのです。「あなたの時代はそうだったんだね、今はこうだね」とただ事実を言えばいいのです。私たちが昔の価値観を理解できないのと同じように彼らも私たちの価値観を理解できることは無いのです。でも、コミュニケーションは取れますし、楽しい時間を過ごすことは可能です。敬意を払うことと相手をまるごと受け入れるということは別だということを理解しておきましょう。

いかがでしたでしょうか。高齢者とのコミュニケーション術についてお話しましたが、もちろんこれは他の世代とのコミュニケーションにも応用することができます。ぜひ今後の活動のお役に立てれば幸いです。

最後に、高齢者にウケるテッパンネタをいくつか紹介します。また思い出したら追記しておきます。

・昭和9年生まれは教育改革の世代(新制中学世代)

・祭日の言い回しは昔「秋分の日→秋季皇霊祭」「春分の日→春季皇霊祭」「昭和の日→昭和節」「文化の日→明治節」「勤労感謝の日→新嘗祭」だった

・「旅の夜風」という曲は映画「愛染かつら」の主題歌でめちゃくちゃヒットした曲

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