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【詩】地下坑道五百羅漢 静かな夜

静かな夜がそこにある
 
時々遠くの方から
踏切の音が聞こえてきて
故郷の集落を思い浮かべる
 
深海と海辺を行き来する
不思議な浜風
 
置き去りになった
朽ち果てた遊覧船
 
気まぐれな画家は
記憶をたどる
ほとんど描き終えた絵を
じっと見つめて筆を置く
 
熟れた桃の果肉を
アラビア文字の書かれた
皿に置いて ひと口
 
コーヒーカップに口をつけて
途切れ途切れの記憶を再びたどり
波しぶきとなった言葉を紡ぐ
 
 
  孤独なツグミの泣く声は
  読み人のいない古書のようです
  萎えた向日葵はそれでも咲きます
  夏の黄昏を割く雷が
  鬱蒼とした草むらに落ちて
  隣で曼珠沙華が揺れています
 
 
新聞紙を広げて爪を切り
それから
くたびれた枕を一度撫でた

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