君はどう読む!?ノルウェイの森 《漫画家志望の読書感想文》
暇である。暇。
僕はブラジルに家族の都合上、約4年も在住して今はなんやかんや通信制の学校に通っているがまーー暇である。読書にハマるというよりかは読書という穴に自然に流れていったという感じであるがーー
っていう流れで読むことになった 『ノルウェイの森』
日本を代表する文豪、村上春樹氏による上下巻が存在する長編小説である。
なる...hodo..... これがそうか、これがかの村上作品なの...か....?と言わざるを得ない独特の雰囲気とすごみがそこにあった....
:ノルウェイの森 ストーリー要約
高校二年生のワタナベは友人、キヅキとその恋人、直子とよく遊んでいた。が、高校三年生の5月に自殺。その衝撃は二人に消えない傷を与え、二人はそれぞれの道、大学へ進学していく。その一年後、直子と再会し彼女の20歳の誕生日に寝た。しかし、彼女は渡辺の前から霧のように消えてしまう。彼女は京都の精神科の病院に入院したのだが。。。
《感想文》
要約を始めるともう長ったらしくて仕方がないのでこのぐらい簡易でいいと思うのだが、これは上下巻の上の半分もいってないぐらいのものである。ここから女あさりが趣味のハイスペック先輩に絡まれたり、超積極的な肉食演劇少女にあったりするのだが、まぁつまりこれは、ポッカリと穴ができた心を埋めていくこと、そこを子供の成長劇というものに浸したものだと認識している。。。気がするのだが(自分で書いていてなんだが)
何か、こう、やはり言語化しにくい、魅力が詰まっている作品である。
心情の巧みさ
最初に読んでいて感じたのは村上春樹氏の心情描写の巧みさである。僕というのは劣等感によく苛まれることがよくあるのだが、その感じ取り方、それがまんま文章化されているのである。
例えば主人公がハイスペック先輩の部屋に行くと先輩はスペイン語の勉強をしていて、二ヶ月後には完璧に仕上げると断言している。それは四カ国語目というから驚きだ。主人公はそんな彼と友達なことに胸を張れたし、優越感があったが、そんな彼を見て、自分のことが惨めに思えてしまうのだ。比較して自分の格というものを再確認してしまったのだろう。
その気持ちを一文で気持ちよく表現してくれている。そんな劣等感の心情が淡々と出てきて、それがまた痛々しい。
レイコのピアノを挫折した話などもう、わかるよぅ、漫画書いていてそういう感じだもん、僕(僕はレイコほどの境地に一切達していないが。)という心からそういう気持ちが水に浮く油のように出てくる。
そしてまたその練習生の子の性格の気持ち悪さよ。こんな少しアングラな人から完全無欠な人の心情までよく書けるなと、もう尊敬するしかない。すげーよ、小説家。
好きなシーン
緑が....いいんだよなぁ。( ´Д`)y━・~~
そう、そうなのである。僕の漫画でもよくやる現象なのだが、主人公に思いを寄せている女キャラは何かきらめく効果を追加するフィルターのようなものを通して見ているかのごとく、魅力的に見えてしまうのである。自分でもいって浅はかである。あっさはかー
このノルウェイの森に彼女とこーいう感じのやりとりが何度かある。
「ねぇ、今私が何やりたいかわかる?」
「見当もつかないよ、君の考えることは」
「あなたと二人で海賊に捕まって、裸にされて体を向かい合わせにして、紐でそのままグルグル巻きにーーーーーー」
「ーーそれが君の一番やりたいことなの?」
「そう」
「やれやれ」
このやりとりがなんかいい。幾度か出るという時点で形式化されたそういうキャラ表現みたいなのは好物(物語シリーズとかの)なのだが、このやりとりも緑と渡辺の関係性の雰囲気を楽しめる面白いものだ。こーいうの作りたい。
突然の死
この物語、よく人が死ぬ。出てきた人物の半分くらいはお亡くなりになられているのではないのだろうか。それもしれっと死ぬ。漫画で言えば、最初の目次前の人物紹介ページに載るような重要なキャラがころっと死ぬ。それも伝え方が一文で、彼が死んでから〜ヶ月たった、という感じでしれっと情報で出る。いわば、漫画の見開きでインパクト強く死亡したシーンを見せるところを、物事の説明のセリフしか入らなそうな小さなコマにそれを描くようなもの。
ほら、大事なキャラが死んじゃいましたよ、ここ重要ですよ!
という作者の意志の力で物語の中に想像じみた(創作物なのだが)歪みを発生させるのではなくて、しれっと
え。あれ、今、死んだ?え、死んでんじゃん!? と印象付けるような、言葉に言い表せられないスタイリッシュさを感じた。いやー少しかっこいいよね。
最後のレイコ
これは読んだ人なら絶対に思う。
え、お前、そいつとアレやるの!!?
ええ、と最初は思った。如何せん、性描写の多いこの作品。
最後の最後、物語がどういう風にまとまっていくのだろうか、もうページも少ないよ!!?
うわっ最終章だ!!主人公は緑とどういう風に生活していくのだろうかな!!?
ん?お??レイコが出てきて、、、??? ええ、、、!??
何故、最後にレイコなのだろうか、彼女はもうすでに40歳の中年だ。なおこのことを語り合うのはいいのだが、、、ええ!!?
そんな感じである。それも描写を見る限り、主人公は一番の盛りを見せているのだ。最初はまぁ、そういう感じなんだなと思っていたが、のちに考察などを見ると納得した。レイコはその時直子の服を借り、着ていた。そして直子のことを直子ロスした二人が語っていたのだ。これはその穴を埋めるためにやったものなのだ。主人公はきっと、本気でレイコのことを直子だと思ってやったに違いない。
そう思えば、この描写にとても納得を感じ得れた。なるほどな興味深い。さすがはかの、村上作品である。
《ここから得るべき教訓はァ》
・性描写って生々しいネ
・人生って難しいネ
うーん、浅はかぁ。もっと何か感じるものがあったと思うのだが、もう薄れてしまった。自分の感受性を恨みたい。
読書を始めるにあたって、自己啓発本のあと一番目に手にとったのがこの本だったが、読み切った後は胸にオーロラのように揺らめく、エモさがあった。エモさ、、もっとそれを言い表せる言葉を書きたいが自分の語彙力、ボキャブラリーを攻めたい。いや、いい本であった。そう断言できるいい本であった。
ぜひ、一度手にとってほしい。ぜひ、最後のレイコ、、見てほしい。
以上!