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間抜け話と時計の一枚 #あこはる企画
すみませんでしたあッ!いやもう本当に!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
多分人生で一番申し訳ない気持ちになった瞬間でした。
二年前、私は東京の高校を受験しました。受験日前日に最寄り駅から電車に乗って空港へ向かい、東京へ飛び、一泊して受験して帰るという旅です。
その日、私は母なるチハヤと共に家を出て、駅へ歩いて向かっていました。そして途中ではっと気が付いたのです。
時計を忘れた。
試験は時間との勝負でもあります。試験会場にも多分壁掛け時計はあるでしょうが、手元に置ける時計があるとないとでは安心感が違うのです。母チハヤの腕時計を借りても良かったのですが、やっぱり使い慣れた、文字盤の見やすい自分の腕時計が良いし…。
電車の時間まではまだ、来た道を戻る余裕がぎりぎりありました。私たち二人は時計の為に引き返しました。
無事時計を持って再び家を出発した私たちは、否、私は、焦っていました。母チハヤは、私を安心させようと、まだ時間はあるし、次の電車に乗っても飛行機には間に合うから大丈夫、と言ってくれていました。しかし、縁起を担ぎたいのが3割、時計なんていう重要なアイテムを忘れたことによる気の動転が7割で、私はとにかく急いで、乗る予定の電車に乗ってしまいたいと、そればかり考えて頭をいっぱいにして焦っていました。
駅前の最後の直線道路に差し掛かったところまではなんとか落ち着いていられましたが、そこで駅前の信号が青に変わるのが遠目に見えました。このままのペースで歩いていては、横断歩道にたどり着く頃に信号が赤に変わってしまいます。ここの信号は一度赤らむと容易には青ざめません。電車の時刻は刻々と迫ってきています。私の中で何かが切れました。私は全速力で走りだしました。
…って、何やっとるんじゃボケえええー!と今の私は叫びたい。このあと何が起きたか、想像に難くないと思いますが、ええ、それはもう見事に転びました。
母チハヤが。
そこで冒頭のセリフに戻ります。結局電車には間に合いましたが、私はそれはもう沈みすぎてブラジルに頭出しそうなくらい自己嫌悪に沈み、力なくごめんなさいと繰り返していました。母チハヤは顎から血を流していました。ふたりして力のない、ごめんなさい、いいよ大丈夫、のやり取りを繰り返しました。もうあとのことは殆ど何も覚えていませんが、とにかくそんな事件を乗り越えて、私たちはなんとか東京まで行って帰ってこられたのでした…。
というわけで、
撮った!
お前だよ、すべての元凶は。いや、元凶は私だけれども!でも!この腕時計だよ!
後日談:
チハヤはチハヤのほうで、自分が転んだことで私の受験にケチがついては申し訳ないと思っていたそうです。どうですうちの母、天使みたいに優しいでしょ。まあ悪いのは私なんですけれども。この場を借りて再び。チハヤさん、私の油断とミスと、勝手な焦りで怪我させてごめんなさい。
まあ合格したからね!いいんですよ。母親が転んでも娘は受験にこけなかったよ!だから全国の受験生、自信もって行け!
…何を言っているんだ私は。ちょっと話の方向性が見えなくなった。
というわけで(どういうわけだか)、私の間抜け話と時計の一枚でした。ここまで付き合ってくださったあなたと、素敵なお題をくださったあこはるかさんに、盛大な感謝!ありがとうございました!
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