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仮題 「空と」1

〜第一章〜


奥へ、奥へと入ってくる。
空に、甘い口付けを重ねながら、ゆっくりと、官能的に男が迫ってくる。
軽い痛みと共に、快感の波が空の全身に広がっていく。

空は、恍惚とした表情が浮かび更に思考がバラ色に染まった。
奥深くに到達した男のそれが、脈打つのを感じ
甘く重ねた唇の力が抜けていった。

少しづつ男が動く度に空は吐息を漏らし
興奮で体温が上がり、密着している部分の神経が敏感になっていく。
男が額に浮かんだ空の汗を優しく舐めとると
少しづつ男は動きを大きくした。

敏感になった神経に触れる刺激は
より大きな快感となって、空の頭の中は、
「もっと。もっとほしい...。気持ちいい。」
という言葉達で埋め尽くされる。

部屋には、空と男の漏らす吐息と
濡れた粘膜が擦れ合う湿った音が充満し
ベットのスプリングの軋む音が空の体に響く。

空は、携帯のアプリで知り合った男とことを済ますと
快感の余韻に浸り、ベットから動けなくなっていた。

キングサイズのベットの天井の大きな鏡に
裸でうつ伏せになって紅潮した空が映る。

隣接したバスルームからシャワーの音が聞こえてきた。
有名なラブソングだ。
「愛してるの響きだけで強くなれる気がしたよ」
はぁ。うぅん。

ベット掛け布団は半分ずれ落ちシーツは乱れ
ローションの容器が転がり、所々に濡れた跡がある。
ほんのりとする甘いにおいと性液のにおい。
汗と唾液のにおいが鼻につき
さきほどまでの激しい交わりを思い出した。

ゆっくりと、空の秘部はうずき、頭の中がとろけていくような感覚におそわれた。

でも思考が働きだすと
「また、やってしまった。」と後悔の嵐がやってくる。
だけど、この後悔さえ、どこかで求めているのかもしれない。
いや、淋しさを埋めたいだけだ!
違う、求められるから応えているだけ。

空の頭にとめどなく押し寄せる思考の波。
それは後悔の嵐を助長し、更に思考の高波を起こし
言葉にできない絶望感を蓄積させる。

そしてその原点には、
空のそばから離れてしまった、
「鬼頭 愛」という女の子の存在があった。


「鬼頭 愛」という女性は
まるで少年漫画のような強さと元気で人生を突き進み
映画のヒロインのような美しさと可愛らしさを持ち合わす女性。
愛を言い表すのにぴったりの言葉を探した時
こんな言葉が浮かんだこと思い出した。

続く

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