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【超短編】幽霊の正体

幽霊の正体、その多くは、単なる肉体の残像でございます。

墓場や集会に集う肉体の残像は、既に魂は抜かれております。

確かな魂は純粋な源へと消(帰)し、本来の自魂を取り戻しますが、不確かな魂の多くは不純なる(見間違いの)光、もしくは混濁した偽の闇へと消(帰)し、月を経由してサイバババアメーバの活力源として再利用されるのでございます。そう、抜かれてしまった魂は、すべてサイバババアメーバの餌食となっているのでございます。

地球の一部地域ではそれを輪廻と呼んでおりますが、本来、このシステムは、純粋な世界では作動することのない怪システムでございます。輪廻システムが潤えば、サイバババアメーバの動力源も潤う仕組みとなっておるのでございます。

幽霊たちの中には、想いが重すぎて、まだ自身の肉体の残像に心があると思って浮遊しつづけている者もございます。これは、生前に肉体に装備されていたエゴシステムを強化し過ぎて無意識状態で生きていた幽霊達でございまして、こうした幽霊達の中には、人間に対して、自分の思い通りに動くように指示する者までございます。

例えば、身内の誰彼が危ないから、こうこうするように言ってくれだの、もう少し頻繁に墓参りしてくれだのと、死んで幽霊になってしまってからも、エゴシステムの声を心の声だと誤認して、つまらぬ我欲を捨てきれずに浮遊し、人間にちょっかいを出して誇示欲求を満たしている残像さえあるのでございます。

日本では、武士道というものが流行った頃に、かなりの数の幽霊が、生まれてしまうはめとなりました。武士に道という言葉は不要でございます。武士とは、愛の道の極め方を誤認した者達のことでございます。ただ、日本には、まだそれを道と思って生きて逝かそうとする武士霊も多数存在し、中には新人霊を吸収合併して巨大化しているものまである始末でございます。

こうなると、誰の何が悪いと言い当てることはもうできません。今、生きている人間にできることといえば、本来の自分を取り戻し、型を見破り、偽善の行いやなりすましの愛を、止(や)めるということくらいでございます。ですが、「愛」ですら、地球の大人に限って言えば、全体の八割ほどの人間も、芽生えてなどいない状態なのでございます ―――


ええ、わたくしですか?

わたくしは、滅する者、でございます。



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