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あおいの自由帳
2021年7月7日 15:20
窓際に立っていたM教授に、完全オリジナルで作ったイヤホンを見せたところ、彼はいかにもつまらなそうに鼻をほじった。「オリジナル、とかいう前置き、いらんで」今度はケツを掻きながら、大きな欠伸をひとつした。「イヤホンでもメガホンでも、それを100に分解できるとして、そのなかの1/100でも、オリジナルってものは存在せんでな」そう言ってこちらを振り向いたM教授の顔は、窓からの逆光で真っ暗だ
2021年7月2日 09:35
アブラカタブラの隅っこには、宛てのない絵葉書がころがっていた。「ただでさえ忙しいというのに」吐き捨てるように言ったことばは、それほどエキゾチックでもなかった。アブラカタブラらしくない、と、彼はおもった。らしくなくても、自分のほんとうの気持ちを言えたのだから、それでいいじゃないか、とも思った。足を磨き、靴を投げ捨て、頬杖をついたあたりは、耐え難いほどの日陰だった。「耐え難くっ