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10p10fp展2024で展示した、写真と手紙の背景

はじめに

この記事は10p10fp展2024で展示しているキャプションのQRコードを読み込んだ方が、作品の説明として読むことを想定しています。
まだ作品を観ていない人にとってはネタバレになる可能性がありますことをご了承ください。
*本記事に10p10fp展で展示する写真は含みません

【追記】10p10fp展2024は終了しました。ありがとうございました!
















10p10fp展で展示した作品

前半は最終的な展示になるまでの経緯なので、シンプル展示の背景を知りたい方は最後の項目「写真と手紙の背景」をお読みください。

・写真が40枚から1枚になるまで

直前まで、夫の寝顔を2Lでプリントして40枚を展示するつもりだった。

展示する写真や枚数、サイズなどを決定して後はプリントだけという頃のこと。
Xのスペース#10p10fp2024 作家対談にお招きいただき「なぜ写真を撮るのか?」「どんな写真を撮りたいのか?」を問われて、改めて考え始めた。

当時は「自分にしか撮れない写真を撮りたい」という、どこかで聞いたことのある回答をした。でも、同じ時間、同じ場所、同じ構図でも、全く同じ写真は存在しない。全てその人にしか撮れなかった写真だと思う。

では本質的には何なのかを考えると「自分しか見てないものを撮りたい」だった。その希少な写真を不特定多数の誰かに見せたいかというと、そうでもない。私の撮る写真は、私が私の人生を肯定するための写真で、利己的な写真だと気づいた。

そんな答えに辿り着いた頃、SIGMAのWHAT’S A GOOD PHOTO TO YOU?blurを観た。

展示する予定の、夫の寝顔40枚。

「旦那さんのことが大好きなんだろう」

それはきっと伝わる。
それでいいのか。それだけでいいのか。

大量の写真をびっしり壁に貼った展示が好きだけど、私はその中でどの写真が好きだったのか、思い出せない。

・10年前と同じ喫茶店で考えたこと

29歳になった翌日、10年ほど前に母と来た亀戸の喫茶店へ行った。
たまたま両国まで用事があったので、なんとなく。

そこで、19歳の毎日不安でいっぱいだった頃の気持ち思い出した。
涙目になったのは猫舌なのに食べたカレードリアが熱すぎたからか、当時の自分に感情移入したからかは分からないけど、ずっと忘れていた気持ちが甦ってきた。

あの頃の自分に伝えたいと思った。

・写真と手紙の背景

結局展示したのは2つ

  • 夫の寝顔の写真1枚

  • 結婚式で夫に対して読んだ手紙1通

子ども時代から20歳前後にかけての誕生日は、憂鬱になることが度々あった。これまで人から頂いた手紙は数百通あるのに、家族からもらったはずの子ども時代のお誕生日カードは一枚も残っていない。

自分の存在が社会にとっての荷物に思えて、生きていることを申し訳なく感じることが多かった。かといって死ぬほどの苦しさや、生きることに対して死ぬほどの罪悪感もなくて、「生きている」というよりは「死なない選択を続けている」状態だった。

そんな私が夫に出会って、一緒に暮らし始めた。

夫と暮らしてからもやっぱり希死念慮に襲われたりしながら、昔よりだいぶ穏やかに生きていた。

二人暮らしを始めてしばらくした頃、カメラマンさんを招いて写真を撮っていただく機会があった。
1ヶ月後に納品された一緒に写真を見ている時、夫が涙を流していることに気づいた。

「葵さんがいなくなるのが怖くなった」

泣きながらそう言う夫を見て、この人を悲しませたくないと思った。

幸せであると同時に、この時間はいつか終わると言い聞かせながら生きていた。どんなに好き同士の恋人でも大抵別れるので、私たちもそういうものだろうと思っていた。

そう思っていたのに、関係は終わらずに続いている。夫婦になっている。

穏やかな日常が、出会って3年経ったいまでも非日常のように尊い。
その気持ちで撮る写真が、夫の寝顔。

展示に添えた手紙には、夫が好きだという気持ちと、日常を愛しいと思う気持ちが詰まっている。
でも手紙だけで背景までは伝わらないと思い、ここに書いてみた。

さいごに

10p10fp展2024という写真展で展示した作品の補足として書いた文章でした。
下記の日程で開催しているので、ご都合の合う方はぜひお越しください。

日程:2024年11月1日(金) - 11月4日(月祝)
時間:11:00 - 19:30
 初日は13:00開場、最終日は17:00閉場
場所:建築会館ギャラリー(入場無料)

*見出し画像:photo by kuppography

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