あなたのギターが聞きたい
10センチもの床ずれを作ったとあるお客様は傷のせいで私の名前も忘れてしまっていた。
彼女との出会いは3年半前。当時からツンツンしてて冷たい感じの人でしたが、私は猪突猛進なので無駄に話しかけて、冷たくあしらわれても心開いて貰いたくて何度もアタックしてました。
そんなある日、とある方からギターをもらった話をすると、「あなた、いつギター弾いてくれるの?」とよく私に話しかけるようになりました。
元々、うちの職場では月に1〜2回、ドライバーさん(ギターマンとボンゴ)の2人で演奏会をやってくれてます。
私は看護師なのでそこに参加する必要はないですし、自分の仕事しろよと怒られるので参加したいけど出来ませんでした。
彼女は入退院を繰り返し、ついに動けなくなったので一人暮らしは無理との決断が下され施設に行く事になりました。
3年前にギターの話をした事覚えているか尋ねると、なんと「覚えているわよ、あなたはいつギター弾いてくれるの?ずっと待ってるんだけど」と言われました。いや、今まで私の話なんて全く興味なく「ふーん」っていつもそっけないのに、まさか覚えてくれていたとは!
私はそれから彼女の好きな曲を聴き、ギターマンのドライバーさんにお願いして彼女が施設に行く前に一緒に一曲だけお願いします!とお伝えしました。勿論、優しいおっちゃん達は快諾。譜面も全部くれて、何回も一緒に合わせてくれました。
1度目はドライバーさんのファンが楽器周辺を占領しちゃうので「聞こえなかった!」と怒られました。2週間後の2回目は彼女の席を最前列にしてもらいました。
歌ったのは、森山直太朗さんの『さくらー独唱ー』
実は2回目の時、私の頸椎ヘルニアが再発してて左手はほとんど動かないし、首カラーもしていたので恥ずかしいスタイルでしたが、今日が彼女のラスト来所という事で5分だけ貰いました。
一曲だけでしたが、チラ見した時彼女は泣いてました。嬉しかったですね、後から「まあまあですね」と言われましたが、彼女はツンデレなんで。
彼女が帰った後、凄まじく上長に怒られました笑。当たり前ですよね、看護師はひとりしか居ません。急変なんてあればぐうの音もでない。5分とは言え、趣味レベルのギター弾いてお前は何やってんだと正論言われても文句言えません。
デイサービスはお客様を喜ばせる。
それを自分で選んだ私は間違っていないと信じたい。
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