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妹がツンデレ過ぎてまともな恋愛が出来ません! 第4話
第4話 「妹が怖くてエロ本も買えません!」
俺は猛烈に悩んでいた。同じ悩みを抱えているであろう親友に勇気をもって相談する。
「なぁ、弘樹。お前んとこの雪ちゃんってどんな感じ?」
「急にどうしたんだ? 田畑。しかもまた傷増えてるし。ほら、バンソーコ」
「あぁ……」
お前は女子かよ、ってくらい弘樹はポケットの中に絆創膏を持っている。
多分、妹の雪ちゃんからもらって来たんだろうけど、可愛らしい猫の模様がプリントされている黒い絆創膏はちょっとだけ恥ずかしかった。
生傷が丸見えなのも衛生的に良くないので好意に甘えることにする。
しっかし、顔に傷……いつできたっけ?
あの、「実はコッソリ隠れて父さん秘蔵のAV見てました♡」事件の後から、麻衣が起こしてくれなくなった。
それでも俺は何とか目覚まし時計のご機嫌を取り、2度寝しても起きられるように努力はしている。ただ、努力はしているのだが、これがまた大変なのだ。
やっぱり低血圧ってやつなんだろう。何度も立ちくらみを覚えてはフローリングに転んでしまうのであちこち生傷が絶えない。
多分、その頬の傷も今朝テーブルにぶつけたか、またどこかで擦ったのだろう。
「例えばだけどよ、お前がAV見てたら雪ちゃんってめっちゃ怒るかなあ?」
普段動揺しない弘樹が珍しくぶふぉっと飲んでいた抹茶オレを噴出していた。
「ご、ごめん! なんだよ、喧嘩の原因はそれか?」
弘樹はごめんと詫びつつ自分の口元と吹き出して汚した机の周りを全て綺麗に拭いていた。
「どうなんだろう……雪の場合は、ふてくされて、口利いてくれないかも」
そうだよ、まさにソレ。
雪ちゃんみたいにぷぅ~と膨れてるだけならはい、カワイイ。
弘樹が「ごめんな」とか、「よしよし」したらすぐに笑顔になる雪ちゃんと、うちの麻衣は全く違う。
最近は本当に汚らわしいものを見るような目で睨まれるし、麻衣のプライベートゾーンに入ると攻撃態勢に入られるので、とにかく怖くて一歩も近づけない。
一体いつまでこの関係が続くんだ?
終わらない悩みに俺はあの時1人で観ないで父さんを待つべきだったと激しく後悔した。
「よぉ~、忍。また暗い顔してんなぁ。どうしたんだよ?」
「あぁ……実は──」
机の上に突っ伏している俺を心配して、もう一人の友人、磯崎 雄介(いそざき ゆうすけ)が声をかけてくれた。
俺達は3人で彼女なんていなくても困らないってくらい仲良くしてきた間柄なのに、雄介はちゃっかり隣のクラスのスタイル抜群の美女・高階 真知子(たかしな まちこ)ちゃんと付き合っている。
一応こうなった経緯について真剣に相談したのに、想像通り雄介はぶはっと大笑いして俺の悩みを一蹴した。
「ばっかだな~忍。男がAV見て何が悪いんだっつの。書店に行けばエロ本だってごっそりあんじゃん? 今なんてコンビニでも買えるってのに」
「あ~、言われてみたらそうかも……」
そういえば、発想が先に行き過ぎて生シーンに行ってしまったけど、もっと手軽に麻衣に見つからないで見れるものがあるじゃないか。
エロ本でぐっとくるものがあれば、それで抜いたりできるわけだし。
「──なんか、くだらねえことで悩んでたな俺」
「おぅ。解決して何より。忍は大丈夫そうだけど、弘樹も早くブラコン妹から卒業しろよ?」
「は、はは……」
矛先が弘樹にも向かってしまって、それはマジで申し訳ないことをしたと思う。
でも弘樹ん所の雪ちゃんはアイドルみたいに屈託なく可愛い笑顔だ。あんなのが身近に居たら確かに他の女にホイホイ食い付けないかも。
俺も雪ちゃんみたいに一途で、しおらしくて、そんで性格が可愛い妹だったら……俺も妹っていいなぁと思うんだが。
やっぱ俺が羽球やってたせいか、麻衣があんなに凶暴になったのは。
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「で、結局買ってきたわけか」
「うん。あそこの書店のばーさん、いちいちエロ本買う奴の顔なんて覚えてねーだろ」
書店で参考書を買う友人とは別に、俺は雄介のおすすめ通り、父さんから貰ったお小遣いでエロ本を買った。
よく考えたら、いきなり18禁なんて刺激が強かったのかも知れない。まずはスタンダードに「エロ本」レベル1から始めるのが無難だよな。
この女の裸とかで興味が湧いてこなきゃあちょっとヤバイ。そうなったら俺も弘樹も「なんだお前らただのシスコンか」のレッテルを貼られてしまう。
断じて違う! 俺だって、彼女が欲しい!
もし彼女が出来たら……まずは1週間前からデートプランを考えて、彼女が何処でもいいよ、忍君とだったら。とか可愛いこと言ったらあちこち調べて頑張って考える。
ストレートに映画館、水族館、ダーツもいいなあ……ボーリングで汗を流すのもアリだし、彼女がスポーツ好きだったら俺の過去の栄光でもある羽球の腕を披露してもいい。
食事は、出来ればファーストフード店は避けたい。いくら貧乏苦学生とは言え、折角の一大デートの時くらいはちょっとだけこじゃれた店を選んでみたいじゃん?
アイスクリームを半分こしたり、彼女が新しく出来たパンケーキのお店に行きたいって言うなら俺は喜んで長蛇の列に並ぶ。
そんな妄想ばっかり膨らむんだけど……ただ、今まで本当に恋愛という切欠が無かっただけで。
そうだよ、この麻衣に呆れられた状態を打ち切るには、誰かとデートすりゃいいんだ。
今度雄介に頼んで彼女関連の知り合い紹介してもらえね~かな、とかちょっと他力本願な事を考える。
弘樹と途中の交差点で別れた後、俺は新しい刺激をゲットした事でスキップしたいくらい気分が昂っていた。
帰ったら、早速エロ本をみよう。確か、最近ブレイクしてる何とかユニット? の子が初ヌードしてるんだっけ?
同じくらいの年齢の子が見えそうで見えない、そのパンチラ具合を出してくるのが堪らない……! って、俺はおっさんかよ。
思わず自己ツッコミしながら家の鍵をカバンの中から探してごそごそしていると、横から無言で麻衣が鍵穴に鍵を入れた。
「お? 麻衣お帰り」
「……ただいま」
相変わらず麻衣は言葉数が少ない。というか、まだ怒ってるのか……!?
別に俺と麻衣は兄妹なわけだし、兄貴が男としてごくごく普通に女の身体に欲情して、ちょ~っと興奮しても仕方がないと思うのだが?
生物学的にそういう風に作られてるんだからしょーがないじゃん。ってことでいい加減機嫌直してもらいたいんだけどなぁ。
麻衣に鍵を開けてもらった俺はそのままアパートの内鍵を閉め、カバンをフローリングに置いたままトイレへと逃げ込んだ。
軽くスッキリしてトイレから出てくると、置いていたはずのカバンがいつもの勉強机の上に片付けられており、俺が買ってきたエロ本の入った茶色い袋包みがないっ!
まさか……と思い冷や汗が伝う。そしてリビングで突っ立っている麻衣を見つめると、彼女は一冊の雑誌をまじまじと見つめていた。
「ま、麻衣ちゃん……あのぉ~……それ、兄ちゃんの……」
「『榊原真理子、マリコ様初めてのカッコはーとまーくカッコ閉じ』……ふーん」
「………………」
一切感情のないその声、本当に怖いっ! 怖いよ、麻衣ちゃんっ!!!
しかも今めっちゃ棒読みだったでしょ。俺、マリコ様のヌード写真見たらダメなの!? ねぇっ!?
別に麻衣から何か追及されたわけでも、怒られたわけでもない。ただ、そのよくわからない反応が一番怖いんだ。
どうせだったら、雪ちゃんみたいに言葉と態度で怒ってくれた方がまだ全然気持ちが楽だ。
「……はぁ」
あぁっ! また蔑んだ目に重いため息っ!
麻衣は一体俺に何を望んでいるんだ。お前の兄ちゃんは一般の男なんだよ、性欲だってあるし、当たり前だが女好きだ。決してシスコンではない。
「──兄貴、こんな女の裸がいいの?おっぱいでかくて形は悪いし、なんか演技してますって顔してんのに?」
俺が一瞬トイレ行ってる間にそんな所まで見たのかよっ!
ぴらぴらと際どいページを開いたまま蔑んだ目でこちらを睨んでくる麻衣にずかずかと近づく。
麻衣とは身長差10センチあるから、プライベートゾーンにさえ入ってしまえば俺の勝ちだ。
形勢逆転とばかりに俺は麻衣を見下ろしながら人の悪い笑みを浮かべてやった。
「へー。じゃあ、麻衣ちゃんのを触らせてくれるの?」
「ハぁ?」
こいつは何馬鹿なことを言ってるんだ、と言いた気な麻衣の顔にむっとした俺は、冗談のつもりで麻衣の両胸を触ってやった。
某アニメを見て思ったけど、14歳とは言え、発育がいいのって本当らしい。
あ、柔らかい。
俺の意識は、そこで完全にぶつっと途切れた。
ソファーで目が覚めた時は夕飯時刻で、俺の後頭部には5センチはあろう、たんこぶが出来ていた。
あの後、何が起きたのか一切記憶がない。腹部に感じる異常な程の痛みと、後頭部のたんこぶがズキズキ痛んだ。
そしてふと視線を動かすと、俺が初めて買ったエロ本は言うのも悲しくなる程無残な姿でゴミ箱に捨てられていた。
妹が怖すぎておちおちエロ本も買うことが出来ないなんて。コレから先、俺は一体何で抜いたらいいんだろう。
あ~……しかし柔らかいおっぱいだったなあ……。
多分、同じ事をしようとしたら、命が幾つあっても足りないだろうけど、やっぱり生は最高だと思った。
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