記憶

一番古い記憶は
祖父の姿だろうか。母の車かもしれない。

お風呂に入れてもうとき、真っ先に目に入るのは祖父の背中だった。
磁気治療のシールをたくさん貼った祖父の背中。
振り向いて、母から私を受け取る。
祖父は、ガーゼで洗う前に、石鹸を持ったまま身体を撫でてくれた。それがとても気持ちよかった。

「ほぅ、ほぅ。」
と笑顔で私をあやしながら洗ってくれる。

そんな0歳の記憶。

母の車は鮮やかなブルーの色。
車に乗る時、母の腕越しに見えるブルーがとても綺麗で、今でもはっきり覚えている。

「そういえば、あの車はどこに行ったの?」
小学生の頃、ふと聞いてみたら、幽霊でも見たように驚く母の顔。
1歳になる前に手放した車だった。

他にもいろいろあるけれど、父親がいないことも自覚していたし、祖父母と叔母たちが育ててくれたことも覚えている。たまに会いにくる父のことも。

1歳前に歩き始めて、話しはじめて、家の電話番号を覚えた。夜泣きもあまりせず、おねしょもしたことがない。おむつは自分で外してくれと頼んだ。
その日のことも覚えている。

遊ぶのに、ゴワゴワしたのが嫌でたまらなかった。
縁側から、母にむかっておむついらないとアピールしたけど、受け入れられなかった。
でも、祖母が言う通りにしてやれと言ってくれた。
ちゃんと、おしっこのときは言えとおしりを軽くペチペチされて遊びに飛び出した。

ちゃんと
「しーしー」
と言って帰った。
なので、トイレトレーニングもしていない。

迷子になったときのために、母が繰り返しつぶやいて教えてくれた言葉。住所と電話番号。電話番号を祖父に喋ったら、驚いて大変だったそうだ。

全部1歳前のお話。嘘のようだけど。
大人になった今、自分でもおかしいなと思う。

ても、この記憶を思い出すと、とても幸せな気持ちになる。大切な記憶。


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