.。プラスチック一枚隔てた向こう側。.『生きる気力が無くなった』
どうしようもなく、世間に怒りが沸いて、自分のやっていることが無意味に感じた途端、全てがどうでもよくなった。
※以下の記事は、自分が体験してきたことで湧き上がった感情をただひたすらに吐露しているだけのものになります。新型コロナウイルス感染症に関するすべての方々へ対する差別・批判などが目的ではありません。万が一読んでいただいた方に不快な思いや不利益などが発生いたしましても筆者は責任を負いません。下記閲覧は自己責任にてお願いいたします。
※ただ、一個人として今まで感じたこと、思ったことを形にしたいと思い綴っています。
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父の仕事がいわゆる無職になったある日
「パパが、鬱っぽいんだよね」
そんな言葉が母からのラインでぽこん、と現れたのはいつだったか。
私がコロナ病棟の看護師として日々を淡々と消化していた間に、父の自営業の仕事はほとんどゼロになってしまったらしい。もともと、少しこだわりが強くて、一度感情が傾くとなかなかそこから戻ってこれない気質はあるような人だった。
そんな父が、「鬱っぽい」。
同じ看護師として、尊敬してもしきれない年数を過ごしてきた母がいうのである。これは我が家の緊急事態だぞ、と思い同県・同市の実家へ一度帰宅した。
ただいま、と自宅の玄関を抜けリビングへ行くと、そこには表情のごっそり抜け落ちた、父がいた。
一目で、「あぁ、鬱かもな」と感じた。
現在、仕事は変わらずな状況だが母の尽力もあって、大分コロナ前の様子を取り戻した父だったが、初めて身内の「鬱の顔」を見た瞬間、私の胸に、書き表せないような、悪い意味での衝撃が走った。
それが、悲しみなのか、絶望なのか、何も現状を打破しようともせず鬱を抱え込みゲームをし続ける父への怒りなのか、細かく区別をつけることは未だに難しくて、できればもう二度とあんな父の「鬱の顔」は見たくないと思ってしまうくらいには衝撃が強かった。
そんな父は前述したように、自営業の収入が傾き実家の家計の支えがほぼ母一人によるものになっても、ただ毎日をゲームをして過ごしていた。
もともとゲームが好きで、ゲームが嫌いな母とは折り合いが合わないことも多々あった。
けれど段々と父に対し、ふつふつと怒りが沸いてくる。
私もコロナ病棟で少なからず頑張っている。母もこの歳になっても夜勤までして収入を得てくれている。なのになんでこの人、自分だけ可哀想みたいな態度で引きこもってるんだろう
なんか、自分のやってきたことがバカみたいだ。
世間よりももっと身近な父の、ほぼ失業ともいえる状態、それに甘んじて引きこもりにも近い姿を見た時、それにつられて自分の頑張りがどうしようもなくどうでもいいことのように思えた。
なんで私だけこんなに頑張ってるんだろう
見方によってはかなり理不尽な怒りかもしれないけど、この時期の私はそんな思いばかりを抱えて、プラスチック一枚向こう側のコロナと対面していたので、それはもう気が重いどころの話じゃなかった。
自分のやっていることに無意味さを少しでも感じてしまったらその次は生きる気力もだんだんとなくなってきて、遺書めいた母あての手紙を書いたこともある。
コロナに感染する方が先か、ストレスに耐えきれなくなって自分で人生リタイアさせるのが先か。そんな精神状態にあったので、全てのことがどうでもよくなったし、一向に減らない感染者数に怒りが収まらなかった。
「飲食店はもう限界です」
「遊びに行けないのしんどい」
「昼呑みしなきゃやってらんないよ」
じゃあ、増えた感染者はだれがケアするの。
お医者様がさも「私達も大変です」というように取材を受けているが、実際病棟でコロナと長い時間対面するのは看護師で、暑い防護服を着たまま何時間も汗を流しながら仕事をしているのも看護師だ。
私にとって世間の声やテレビに出ているひとの言葉は、プラスチック一枚隔てたコロナに対面したこともなく、何時間も暑い防護服をきたままケアをしたことも無く、自分で望んでコロナ対応にあたった人たちの、結局は一番コロナに対面している人間の辛さもしんどさも分からない人たちの意見にしか聞こえなかった。
すべてがストレスだった。なんでこんな思いをしてる自分がコロナ対応をしているんだと思ったし、自分で望んでコロナ病棟の看護師になったわけではない分、「やってられない」と思った日も沢山ある。
毎日テレビをつければコロナ、コロナ、コロナ。
職場に行けばコロナ受け入れ、コロナ急変、コロナ受け入れの繰り返し。
その繰り返しの中で、ついにテレビをみることをやめたのはまた違うお話。
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