見出し画像

名前を呼ぶ

私は、人の名前を呼ぶのが苦手だ。初対面でも知り合いでも仲良しの友人でも、ファーストネームだけではなく、ファミリーネームであっても。誰かに話しかけるときはいつも深呼吸してからだし、会話の中で相手の名前を呼ぶのにも四苦八苦している。そんな私が、頑張ってでも名前を呼ぼうと思えるようになった出来事があった。

きっかけは新しいバイト先でのこと。初日から、不思議なくらい居心地よく働くことが出来た。少人数で和気あいあいとやっている職場ではあったが、それにしても居心地がいいのだ。人がいいのはもちろんそうなんだけれど、それだけなのだろうか?相性?などといろいろと考えてみたところ、ひとつの結論に行き着いた。

それは、「名前を呼んでくれる」ということ。

「あおいさん、おはよう」「あおいさん、これお願いしていい?」「あおいさん、お昼にしよう」「あおいさん、また明日~!」といった具合に、みんながそれはそれは自然に名前を呼んでくれるのだ。それはまるで「あなたがここに居てくれて嬉しいよ」「あなたと仲良くなりたいよ」と言ってもらっているみたいで、安心して働けたし、私からも安心して話しかけることができた。

よくよく聞いてみると、「名前を呼ぶ」のは対面だけではなく、電話の相手にも同じように行われていた。「黒田さん!いつもお世話になっております。」「小林さん、ご無沙汰してます~」「佐藤さんお疲れ様です!今よろしいですか?」と、電話の第一声に名前を呼ぶのはもちろんのこと、会話の中でも大事な場面では「○○さん、あの件なんですけど~」と相手に呼び掛けているのだ。

さらに、メールやLINEなど文章でのやり取りでも、文頭で相手の名前を呼んでいる。これに気付いたときはさすがに、その徹底ぶりにビックリした。そして、即真似した。口にしない分、心理的ハードルが低い。その割に「○○さん」と呼びかける行為に慣れることが出来るので、初心者にはとってもオススメ。やり続けると、相手の名前を呼ぶことが身体に染みついてくる。言葉のリズムと、自分から相手との関係性をつくりたいと意思表示する姿勢が、自然になってくる。

今でも「名前を呼ぶなんて馴れ馴れしすぎてひかれるだろうか」「相手は私のことを忘れているかもしれないから、名前を呼んで親しげにしたら気まずくなるかもしれない」などと、不安になることもある。それでも、名前を呼んでもらえたら嬉しいって、体感したから。明日もドキドキしながら、相手の名前を呼ぼう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?