双葉葵

幼い頃京都で出会い、偶然にもそれぞれの仕事で東京で暮らすこととなった2人。そんな彼らの…

双葉葵

幼い頃京都で出会い、偶然にもそれぞれの仕事で東京で暮らすこととなった2人。そんな彼らの文通物語。

最近の記事

俺からお前へ3

拝啓 友よ、 わざわざ南方の島より手紙をありがとう。 いつにも増して重量が乗った便箋を頂いた気持ちだ。 運んだ潮の分だけ増したのであろうか。 君の沖縄探検記?は魅力的だな。 率直に言ってうらやましい。近頃思うが人生にはバケーションは必要だよ。つくづくおもう。 視点を洗ういい機会だ。コンクリートジャングルはまさしく毒さ、実りがしょぼいな。 俺は今、我らが京都の実家から筆をしたためている。 深夜は午前四時。時期では朝日が出かけている。 日頃は他人と分かりあうために、プロ

    • 私から君へ 3

      またまたお返事遅くなってすまない。 寒暖乱行下に振り回された冬の終わりに家を移し、バタバタしていると気付けば桜が咲いていた。 新しい家と共に、新しい仕事を始めようと、これまでの仕事に加えて勉強を始めた私の新生活は大変忙しくスタートを切った。 そんな中、これまで世田谷区内やその周辺で家が近くてよく会っていた友人達が、かわるがわる門前仲町の私の家まで遊びに来てくれて大変嬉しい限りだ。 たしかにそんな粗悪なヤツもいたなあ。 心当たりのあるアイツは、自身の誕生日に私の家にきて夜

      • 俺からお前へ2

        拝啓 友よ、 3月が来ましたよ。 冬と初春を行ったり来たりする気候に、振り回されてはいないかい。 俺はぶん回されて、体調を崩す瀬戸際ギリギリから動けずにいる。 「もうずっと18℃ならばいいのに!」 と、四季を誇るこの国の生まれじゃなさそうな発想を抱いてしまっている。すみません。 春夏秋冬、ありがたや。 今日はお前の新しい住処にお邪魔させてもらったな。帰宅したてで、この手紙を書いている。 新しい家は実家のような安心感があっていいじゃないか。 お前は先輩と住んでいるが、す

        • 私から君へ 2

          友よ、返事遅くなってすまない。 私から唐突に手紙を出しておいて、貰った返事にこんなに返さずいるとは無礼者だ。 ビシッと厳しく叱っておくから安心してくれ。 反省の色もこの辺りにして近況報告をさせてもらうと、今日引っ越した。 2年間暮らした梅ヶ丘を離れ、門前仲町という街に移った。 東京都内というのは、十数キロ東に移動するだけでこんなに色が違うものなのだな。 これまで暮らした西側にはやはり、私を含むようなクリエイティブな仕事に取り組んでいる人が多いように感じる。 それに対して東

        俺からお前へ3

          俺からお前へ1

          やあ、友よ。 手紙をありがとう。キツネ顔の男から手紙を貰ったりなんかすると、なにか化かされる兆しなんじゃないかと思ってしまうよ。 キツネさん、ねだってもお揚げはあげませんからね。 盛り沢山の内容で大変光栄なんだが、一つ言わせてもらうと追伸は文末に書くものだと思うぞ。 追伸: ポテトはカリカリ派の人間に会ったことがない。ひょっとするともう絶滅してしまったのでは、、? ヒートテックの秘密に関して、ずっと前に俺も同じことを調べたことがあるが、俺はお前のように反発姿勢は呈さなかっ

          俺からお前へ1

          私から君へ 1

          友よ、お元気か。 私は今、下北沢のマクドナルドでこの手紙を書いている。追伸:私はマクドのポテトはしなしな派である。 長い付き合いになるが、手紙なんて互いに書いたこともないので驚いただろう。ことの発端は君だ。君に勧められた書簡体小説を読んだ。もう3年恋人がいない私だが、次の恋人とは文通で結ばれてみせると本気で誓った一冊であった。馬鹿らしいだろうか。だが、バカとロマンチストは紙一重である。 何でもかんでも便利に、効率的にしてしまうこの令和6年に、手紙なんぞという無駄と待ちが多

          私から君へ 1