10/5 「新しい生活」

ちくま学芸文庫の『徒然草』を読み始める。ちくま学芸文庫の『方丈記』を読んだときにも感じたことだが、このシリーズ?の註釈を見ると、古典がいかに古典を基に書かれているかがよくわかる。訳文は学校的な現代語訳に慣れた身には親しみにくいものだが、とはいえおもしろい。例えば五段、

顕基の中納言の言ひけん、「配所の月、罪無くて見む」事、然も覚えぬべし。

とある。「配所の月」とは流刑地で見上げる月を言うそうだが、これはつまりは、鎌倉版「ここではないどこか」だ。

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『こころ』を読んでいて、「その頃は覚醒とか新しい生活とかいう文字のまだない時分でした」という一文がある。しかし、「新しい生活」とは! コロナにおいて日本が要請したものは「新しい生活様式」であったが、開国や開化において要請したものもまた「新しい生活」であったようだ。そうなると、日本人においては、コロナも開国や開化も共に、生活を変異させる社会的なウイルスとして体験されているのかもしれない。

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