20240613 すなおに、ずばりと、大胆に率直に

岡崎裕美子『発芽/わたくしが樹木であれば』の粉飾された赤裸々さの感じが嫌になって手に取った『啄木歌集』だが、寡聞にして存じなかった薮野椋十なる人物の序文が、(当時の感覚はわからないが)軽快でおもしろく、そこに「こんな事をすなおに、ずばりと、大胆に率直に詠んだ歌というものは一向にこれない。」とある。「すなおに、ずばりと、大胆に率直に」! まるで岡崎裕美子ではないか……などと思って、そういえば岡崎の歌集の解説を読んでいなかったと思い本棚から取り出すと、岡井隆の解説がある。どこかに「すなおに、ずばりと、大胆に率直に」などと書かれてないかと思ったのだが、しかしそんなことはなく、むしろ「精霊が、みにくい肉体をまとふときに、現実が生まれるのだらう。この歌集は、あちらこちらに、現実の断片が…中略…出てはゐるけれど、男女は、現実となる一歩手前のところで、精霊の性の踊りををどつてゐる。」とある。私の歌や歌の評を読む経験の浅さのせいでもあろうが、どこか掴みどころのない批評なのだが、「すなお」どころか、私の言葉でいう「粉飾」の方に着目されているようで、自分の歌を読む力の無さを改めて感じるのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?