20220804 『君は永遠にそいつらより若い』を読む

津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』を読み終える。津村記久子の小説は初めて読んだと思う。シーンの一つ一つはおもしろいが、最終的に、グッとくるものがない。2009年の本であるそうだが、この小説の問題意識というのは、大事には違いないのだが、そして美しい表現が為されているのだが、一方で、目新しさのようなものに欠けて感じられたかもしれない。現代的な現代文学は、老いてしまうものだ。

ここ数年、現代文学よりも古典と呼ばれるようなものを読むことの方が多くなったが、古典は、少なくとも古びてはいないという安心感をもって読むことができて良い(というのも、それが古典の定義なのだろうが)。学生の頃は現代文学ばかり読み、卒業論文も修士論文も現代文学についてのものであった。卒業論文で扱った古井由吉はおそらく古典めいたものがあったろうが(古典として残るのかどうかは疑問だが……)、さておき現代文学ばかり読んで楽しめていたのは、やはり現在形で、リアルタイムでそうした作品に接することができていたからで、『君は永遠にそいつらより若い』の13年は、現代文学を古びさせるには十分な年月なのではなかろうか。仮に13年前にこの小説を読んだとして、自分がどのように感じたかなど、まったく想像が及ばないけれども、あの頃の本谷有希子なんかを僕はおもしろく読んでいたわけだから、きっと津村記久子もおもしろかっただろう(何となく、本谷有希子を思い出した(津村とは同世代だろう)。今読んでもおもしろいと感じることができないであろう作家、という意味で思い出したのであって、思い出深い、好きだった作家である)。

しかし、「君は永遠にそいつらより若い」か。これが希望に感じられるのも、若いうちなのではないか、と、絶望的な気持ちにならなくもない。


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