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【1】完璧主義ライターさんたちと、どう向き合う?- 「報酬が見合わない」という壁

税金に関する記事のライターを募集すると、国家公務員の方が応募してくれることがあります。国税庁で働いていたり、税制改正に関わったりするなど税に深く関わる仕事をされているので、経験をライティングに活かすことができるからです。

国家公務員出身のライターさんは、仕事がほぼ完璧です。マニュアルをしっかり読み込み、こちらの希望を正確に汲み取って、高品質な記事を納品してくれます。日本語も正確なので、編集者としては安心して仕事を任せられます。

でも、大きな問題が一つあるんです。それは、長続きしないこと。しっかり作り込む分、時間や労力がかかり、報酬と全く見合わないんです。

リサーチや執筆、作図なども含めると、10時間以上かけて3000文字の記事を仕上げていると思います。そうなると、ライティング報酬が数千円では全く割に合いません。


私自身は国家公務員出身ではありませんが、完璧主義に近いところがあり、記事を何度も練り直して驚くほどの時間をかけてしまうことがあります。時給にすると、わずか数百円です。

こうした働き方をしていると、振り込まれた明細を見てどっと疲れが出ます・・・。

だから、国家公務員ライターさんから契約終了の連絡があると、「やっぱりそうなってしまうか〜」と感じます。これまで何人かの国家公務員ライターさんと一緒に仕事をしてきましたが、半年以上続いた方はいませんでした。

国家公務員ライターさんに仕事を続けてもらいたい気持ちは山々ですが、報酬をたくさんお支払いできない以上、「やりがい搾取」になってしまう気がして、引き止めることができません。

どうしたら、国家公務員ライターさんも私も「win-win」の状態で働けるのか、いろいろと模索した結果、1つの答えにたどり着きました。

それは、編集者として働いてもらうこと。

私が考える編集者の仕事は、70%のクオリティーを100%に上げることです。表記ルールを守り、正しい日本語に訂正することで、記事の品質を70%から80%へと向上させることができます。国家公務員ライターさんなら、編集者の経験がなくても記事を80%まで仕上げることができる、と思ったわけです。

残りの20%は、制度の本質を理解して噛み砕いた表現に直したり、ライターさんやファクトチェック担当の税理士さんにヒアリングして一次情報を追加したり、表記ルールにない細かなテクニックを使ってわかりにくい表現を訂正したりするスキルが求められます。これは、税務会計の知識や編集者としての実務経験が求められるため、チームの仕事を通じてスキルアップしてもらうしかありません。

逆に言えば、このチームで編集経験を積むことで、この20%分のスキルが身に付くわけです。これは、ライターさんにとって得るものが大きいのではないかと。

でも、正直なところ葛藤しました。

だって、 低報酬で経験を積むって、 まさに「やりがい搾取」 そのものですよね。

私自身がそういったテイカー(搾取する人のことでGiverの反対の気質)なクライアントに対してアレルギーがあるので、 自分がそうなるかもしれないことに大きな抵抗感があります。

「メンバーにたくさん報酬を払えたら、 こんなことで悩まずに済むのにな」と、なんだか情けない気持ちになっています・・・。

ー次回に続きますー

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