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牡丹雪がふる街で


雪が降ると、辺り音が止む。

僕が世界から取り残されたような静寂。

氷の結晶が落下していくとき、周りの空気を巻き込んで、

冷気のカーテンが僕らの生活音を遮断する。

深々と降る、雪。

東京に大雪が降った、3月29日の朝。

それは静かだった。

自粛を要請され、それぞれの家で、それぞれの場で、生活をしている。

別に当たり前のこと

生活をするということ、それ自体。

確かに目に見えない危険におびえている。

普通に暮らしていたい。

それだけなのに、

当たり前というのはそうも簡単に崩れてしまうのか。


否。


僕たちは生活をしている。

生活をやめることなどできない。

そうも簡単に崩されてしまっていいものか。


Instagramに、Twitterに、

牡丹雪がふる街が写しだされる。

それは立体的な雪の花が降っている。

上空から、白く先の見えない、はるか上空から。

一人じゃなかった。

みなが同じ景色を見ていた。

華々しく喜べないそんな時期の雪に、

不穏なノイズはかき消され、

ただ降る雪を眺めていた。

撮っていた。

僕たちは繋がっていた。

牡丹雪の降る街で、

少しの不安と、

少しの寂しさと、

少しの時間。

僕たちは繋がっていた。


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