予期せぬ大惨事 〜タロットとの出会い〜
タロット。
このアイテムに惹かれないはずがなかった。
不思議な魅力を放っているこのカード。
奇妙な色使い。
見慣れない図柄。
怪しげな文言。
気になって仕方がなかった。
大体好奇心が旺盛なため、気になれば即行動するのだけど、タロットに触れるまでだいぶ遠回りをしてきた。
まず僕の占いの世界への入り口は星占い、西洋占星術の虜になったのがきっかけ。
占星術のことを調べてみると、時折タロットや心理学など、様々な占いや学問、思想、考え方が顔をのぞかせる。
本格的にのめり込んでいくには、なぜだか身構えてしまって触れることが出来なかった。
が、最近になってようやくタロットと向き合うことにしてみた。
まだ西洋占星術の習得も道中半ば、踏み入れたばかり。
けれども、軽やかに、そして移り気に、他の興味対象を広げて行きながら、深めていくのが僕自身のスタイルでもあるので、あまり気後れせずに楽しんでいきたいと思う。
(なにせ僕は太陽:天秤座、月:牡羊座の持続力ないタイプなもので)
デッキも手に入れた。
カード一枚一枚と向き合う中で、いつから、危険な匂いのする目の離せないカードに惹かれていたのか、僕自身の過去にぐぐっと迫ってみた。
だんだんと思い出してくる情景。
そう、大学生の時に遊びに行った、横浜中華街でのこと。
豚まん、餃子に、胡麻団子。
食べ歩きを楽しんで、わいわいきゃっきゃと、4人ぐらいのグループで盛り上がっていた。
確か、高校生の時に、初めて訪れた以来の中華街である。
テンションは高めだった。
ふと、目に留まる二文字。
「占い」
そういえば、対面占いってしたことないな、と。
「ちょっと視てもらわない?」
お腹も満たされて、上機嫌の大学生グループ。
その瞬間のノリの良さは、中華街一だったと思う。
当時、“横浜の母”と名乗っていた占い師の元へと足を運ぶ。
「10分、千円」
お手軽だな、おい。
千円ぐらいだったら大学生でも気軽にやってもらえる。
だいたい10分ぐらいだと、姓名判断・手相・タロットぐらいが相場だろう。
僕の前に先に2人の友達がみてもらう。
恋愛・仕事・健康、、、、
皆、手相を視てもらっていた。
「来年運命の人が現れるかもね」
「離婚の可能性高いから、注意だよ」
結婚線に一喜一憂。
ノリがよければ、反応も絶好調。
とても騒がしいブースだった。
僕の番になって、同じように手を差し出す。
「あなた結婚は30代半ばで遅いわね、あと人気線があるから人に恵まれるでしょ。あとは、、、あら二重生命線だわ。とっても珍しいわけではないけれど、これがある人はバイタリティ溢れるのよね。人の2倍の人生を生きるわ。ほらだから仕事も2つぐらい全然違うものに取り組むかもね、頑張りなさい。」
と、横浜の母は言う。
結婚線に関しては、少々残念であったが、二重生命線があったのは発見。
健康に産んでくれた両親に感謝である。
ちなみに、二重生命線のおかげか知らないけれど、確かにタフ、というより立ち直りが早い。恐らくちょっとやそっとじゃ挫けないので、そう言う意味では当たっているのかもしれない。風邪もひきにくいし。
気になる方はこちらで二重生命線があるかチェックしてみては?
ここで、大体10分立つのだが、
やけにぽんぽん進んだのと、どう言う思し召しかわからないが、僕だけタロット占いもやったげると、横浜の母がにこやかに言う
おもむろに取り出したタロットカード。
存在は知っていたが、実物をみたのはこの時が初めてだった。
「10分お手軽占いだから、じっくりは出来ないけれど、お試しってことでね。このカードを両手でぐるぐるシャッフルしなさい。満足するまでシャッフルしたら、1枚だけ選んで。直感に従ってね。」
ぐるぐるぐるぐる。
僕は人気者だし、二重生命線もあってバイタリティがあるし、きっと良い感じのカードが出るだろう、と。
「じゃあ、このカードで」
19歳の僕は、一枚を選ぶ。
大体僕は、今までも運が良かった。
なんというかラッキーなことが多い体質だと、子供の頃から思っていた。
今回の占いだってそう、なぜか僕だけ。
出たカードは、
『THE TOWER(塔)』
え、なんかこの絵、不吉じゃない?
直感的にダメな匂いしかしない。
雷落ちてるし、人飛び降りてますけど。
横浜の母の顔を、僕はみた。
ちょっと苦笑い。
ねぇ、そんな顔しないで、なんなのこのカード、意味は?何?どういう事!?
母は口を開く。
「そうね、ちょっとこのカードは不吉なカードなのよね。(苦笑)、何かこう災難とか、思ってもみない大惨事とか表してて。でもそう言うことが起こってもあなたは人の2倍の人生があるから大丈夫よ〜。心配しなくていいわ。」
全然心配するんですけど。何、災難?大惨事??。怖いわっ、、。
ワクワクしてた気持ち返して!ねえ…。
「THE TOWER(塔)」のカードは、キーワードとして、悲惨さ、苦悩、極貧、逆境、恥辱、欺瞞、没落、とくに予期せぬ大惨事を指すカードとして扱われている。
アンソニー・ルイス•鏡 リュウジ•片桐 晶(2018)『完全版 タロット辞典』
大学生ノリが一瞬にして冷ややかなムードになった。
これが僕の初めてのタロットリーディングの出会いである。
正直、いい出会いではなかったと思うが、これまでずっと気になって仕方がなかったのは違いない。
あれから、何度かタロットで視てもらったことがある。
やはりその時の、タロットの印象は不思議なもので、なんとなく吸い込まれるような感覚を覚えている。
見入ってしまっていたのは確かだったし、カードから感じる何か鋭さ、明るさ、から目を離せなかった。
そういえば、書きながらもうひとつ思い出した。
その日の中華街の帰り、財布をなくした。
高校生の時から使っていた二つ折り財布。
動揺しすぎて、電車で落としたらしい。
横浜の母は、このことを当てたのだろうか。
これまでそこそこ、予期せぬ変化や惨事を経験してきたけれど、今となってはあの「THE TOWER(塔)」のカードが意味していたものは分からない。
けれど、人の2倍の人生を生きる(らしい)ので、大したことないと思っている。
2020.04.20 青日タロウ
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