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12/29

12/29

 明日、12/30の夜に地元の山梨に帰郷するので、今夜が東京で過ごす2023年最後の夜ということになる。時計に目をやると、14:06を示している。午前中は昨日と同様、プログラミングやらマーケティングやらの学習で図書館にこもっていた。集中していたせいか、想定よりも長くそこに滞在していたため、今日の昼食はいつもより遅めに始まった。午前中に集中したい時は、眠気防止のために、炭水化物を除き、野菜とフルーツを中心とした軽めの食事をとることにしている。ちなみに朝何も食べないということはできず、何かしら摂取はしておきたい。そしてこれから年内、東京の自宅でしなければならない最重要タスクが待ち受けている。それはこのエントロピーが増大し放題なこの部屋の掃除である。掃除しなければ、片付けなければ、と常日頃感じるのだが、その都度それを先延ばしにしては、未来の自分に託してきた。そして、その未来の自分が今ここに立っている。様々な本や文具がそれぞれ自由気ままに過ごしているこの部屋は、ある意味では完成されているとも言える。ベッドの上にで寝る直前まで私の手元にあった小説や、しばらく開かれることのない床にそのまま置かれた中国語の教科書、明日も着ようと脱ぎっぱなしのままの服などで溢れている。私は誰が見ても綺麗だと思うような空間が一番機能的だとは思えないものの、やはりある程度の整いがこの部屋の怠惰な空気を中和することも知っている。
 何から手をつけて良いか優柔不断になる程バラエティに飛んだ散らかり方をしているこの部屋、まずは断捨離ということで70Lの大容量ゴミ袋を用意し、手当たり次第不要なものを詰め込んでいく。いざ捨てようと物を手に取ると、それにまつわる思い出が走馬灯のように一瞬で駆け巡るから苦しくなる。するとなかなか捨てることが億劫になるのだが、いつかお掃除マイスターのような人が言っていたセリフを思い出した。「捨てるのではなく、手放すのです!1年使っていないものはこの先の1年もきっと使いません!」"捨てる"も"手放す"も根本の行為同じではないかと突っ込みたくなる気持ちを今は放っておいて、先ほどのセリフに登場した1年を基準に選別してみる。あっという間に1つ目のゴミ袋が満タンになってしまった。口を閉じなければいけないので、70Lちょうどではないものの、四捨五入でそのくらいになるほどの物を"手放す"ことが決定したのである。物を捨てることと別れは似ている行為で、それが物なのか人なのかにかかわらずさよならを告げることである。ある曲の中で「サヨナラに強くなれ。この出会いに意味がある。」と謳われていた。別れがあろうがあるまいが、"出会い"があったことには変わりはないく、それが大事なのだとと私は解釈している。今日でこの部屋を旅立つ物もこれからもこの部屋にいるものも、過去にいた物も過ごした時間に関わらず、一緒にいてくれてありがとうと感謝の気持ちを伝えたい。
 誰もが知っているように掃除には各フェーズがあるのだが、順を追って全てに言及していては年を越してこの文章を書いている私だけが2023年に取り残されてしまう。それだけは絶対に避けなければならないので、象徴的なシーンの話だけ。
 乱雑に展開していたこの部屋にもある程度の秩序が育ってきた頃、最後のい今年たくさんお世話になった楽器たちの掃除を始めた。まずは何よりも今年触れてきた、シンセサイザーのYAMAHA MOTIF7。私の父のサポートメンバーを長年務めてきたキーボーディストが使用していた機材だが、買い替えに伴い長い間実家に放置されていたところを拾ってきた。押入れの埃まみれの状態から考えると、随分と動き回ってくれていると思う。この部屋に迎え入れて以来、ほぼ毎日触っているのでもう埃など被っていないと思っていたのだが、改めて近くで見ると思っていた以上に汚れが目立っていた。電源を全て切り、完全なピアノに比べるとやや少ない75個の鍵盤を一つ一つ拭いていく。拭くことによって押下した鍵盤の側面にも同様に埃が溜まっていた。丁寧に水拭きと乾拭きを繰り返すと、鍵盤の思っていた以上の白さに驚いた。毎日見ているはずのそれが改めて見ると違う楽器になったようで、ゲシュタルト崩壊に近い感覚を味わった。この鍵盤のおかげで2023年は本当に充実した年になったと思う。感謝しても仕切れない。来年はもっと上手く弾けるようにたくさん練習するから、もうだいぶ長いこと頑張ってきていると思うけど、まだまだ衰え知らずで美音を鳴らし続けてね。
 その後ギターとベースも弦をわざわざ抜いてボディとネックを丁寧に拭いた。ついでに弦も張り替えたのだが、そこでとんでもない事件を起こした話はネタが切れた時のために取っておきたい。東京で過ごす最後の2023年、綺麗になった部屋で心地の良い睡眠が取れるといいな。


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