法政大学の小論文過去問から考える「命に目的はない、という視点」の大切さ

今回は法政大学キャリアデザイン学部の2018年度のキャリア体験特別入試(社会人)の小論文の過去問から、AO入試・小論文対策で最も大切な「社会への問題意識」を鍛えていきましょう。まずは、問題を自力で解いてみると良いでしょう。回答時間の目安は45分〜60分です。回答を添削してもらいたかったら、saiki@aogijuku.com(塾長直通)まで送ってみてください。(忙しいと返信できないかもしれませんが、できるだけ返信頑張りますw)

問題文とAO義塾の解答例

【問1】下線部(1)「現代のような排除の時代」とは具体的にどのような時代のことか。50字以内で書け。 

【問1:AO義塾の解答例】
排除の時代とは、競争社会が進展し、競争の勝者が礼賛され競争に勝てない者は疎外される現代の一側面だ。(49文字)

【問2】下線部(2)「命に目的はない、という視点」が教育にとって大事なのはなぜか。自分の考えを400字以内で述べよ。

 この視点が教育において重要な理由は、問1でも述べた「時代の歪み」に対応できる視点だからだ。
 冷戦が終焉し、資本主義陣営が勝利してから30年近くが経った。グローバル化も相まり、現代は大競争の時代とも呼ばれる。保護者達もそんな時代性の中で、教育に「時代の勝者」となる能力を身につけさせることを期待し、教育者も「社会に役に立つ人」となることを、動機はともかくとして推進した。文章でも紹介されたように教育現場では「成績を上げる人」「頑張って能力を出し切ること」が賞賛され、強調されてきたのだ。
 そんな価値観の行き過ぎた結果が「LGBTは生産性がない」「障がい者を支援する費用は無駄」というような偏った意見ではないか。   
 「命に目的はない」という視点は、そうした偏った見方、競争社会の副作用への処方箋だ。競争に勝てる人であろうがなかろうが、命それ自体に価値があることを教育が伝えることで、上記のような言説に反論できる。(396文字)

解説

この小論文を読み解く上でのキーワードは「現代のような排除の時代」ということです。それは問1でまさに問われていることからも明らかです。小論文で高得点を叩き出すようになるためには「日頃から「社会」について関心を持っておくことが大切だ!」とよく言われるわけですが、それは今回の問題のように、難関私大の小論文には私たちが生きている「現代社会についての問題意識」が問われる問題が多いからです。

とは言っても、多くの受験生の皆さんにとって「現代は排除の時代である」と説明されてもピンとくる方は少ないのではないでしょうか?でもそれは自然なことだと思います。多くの受験生は「現代っ子」であり現代以外の時代を当然生きてきたわけではありません。「現代はこんな時代だ」、「昔に比べて現代はこうだ」と言われても、「最初から現代は現代、どこからの時代とも比べようがない」という答えになるでしょう。

だからこそ意識的に「現代社会って昔の時代と比べてどんな違いがあるんだろう?」「私たちの生きている時代って何が問題とされているんだろう?」と考えるクセをつけることが大切です。

その現代社会の一つの特性に「排除」や「分断」というキーワードがあります。ぜひこれを機に覚えておいてください。「現代は排除の時代」ということのインスピレーションを得るために、トランプ大統領の選挙演説動画を紹介します。

アメリカは言うまでもなく移民社会なわけですが、中南米からの移民が非常に多いのです。その移民に対して「壁を作ろう(Build the Wall!)」と呼びかけているわけですが、僕が初めてこの演説を見た時の印象は「なんだか怖いな、、、。」「こんな人がアメリカ大統領になるのか、、、。」そんな印象です。

もちろん、不法移民が白人社会を脅かしていること、麻薬の流入や犯罪の増加など、不法移民に対処しなければならない気持ちはわかります。一方で、法を侵してまで移民をしている人々に対する想像力を働かせることも大切です。移民が多い理由に、中南米社会の政情不安や貧困の問題があり、「祖国にいては生活できない」と命からがら米国に移民しているような実情もあります。当然ながら、複雑に絡み合った問題の背景に目を向け、白人の立場も、中南米移民の立場も、一つ一つ解きほぐすように考えていかなければ、問題は解決していく方向には向かわないでしょう。

けれどもこの演説で強調されているのは「憎悪」や「分断」、「排除」。複雑な社会問題を単純化してしまって、「あんな奴らが入ってこれないように壁作っちゃえばいいんだよ!」「壁作る費用は俺たちじゃなくてメキシコに負担させようぜ!」「イエーーーーイ!」と、、。子どもでも理解できるように物事を単純化させて、トランプ大統領は自らの支持を呼びかけているわけです。これが世界随一の影響力を持つトップリーダーのあるべき姿なのだろうか?と疑問を持ってしまいます。(ちなみにこうした問題を深めて慶應大学法学部のAO入試に合格した学生の志望理由書も公開しているので、参考に読んでみてください。)

そしてこうした問題を「けど、結局はアメリカの出来事だよね、、。」と他人事のように考えてしまっては勿体ないです。こうした「排除」や「分断」はグローバルな現象であり、決して日本社会も例外ではありません。

例えば、それが「障がい者の連続殺人事件」であったり、「LGBTには生産性がない発言」であったりするわけです。

相模原殺傷事件の容疑者である植松被告は「障がい者の福祉にかかる費用は莫大で、この国のために誰かが殺さなくてはならない」という主張を展開しています。また最近、自民党の杉田議員が「LGBTは子どもを産めない。だから生産性がない。」という発言したことも大きな問題となりました。

「トランプ現象」や、「相模原殺傷事件」、「生産性ない発言」、こうしたバラバラに見える問題も、「排除」や「分断」というキーワードを用いればその共通項を見出すことができます。トランプ現象が排除しているのは「移民」であり、相模原殺傷事件で排除されたのは「障がい者」、杉田議員の発言で排除されたと強く感じたのは「LGBT」でした。なぜ排除するのかといえば、「役に立たない人間は排除してしまえ」「生産性の低い人間は生きてる意味がない」という言説が「時代の言葉」として猛威をふるっているからです。

僕自身、生まれた時から右手に分娩麻痺という軽度の障がいがあり、小学校のドッチボールが極度に弱いということがありました。(僕の運動神経が著しく低いということが最大の要因な気もしますがw)ドッチボールですから、二つのグループに分かれるのですが、そのグループ分けで必ず最後の「残り物」になり、最後は「じゃんけんで負けた方が斎木をグループに入れる」みたいな選抜方法となり、、、。幼心に傷付いた経験があります。でもグループ分けをしている多くの同級生たちも「積極的に差別してやろう!」とか「排除してやろう!」とかそんな気持ちではなく、「ただ勝負に勝つためにはどっちが有利になるか」そんなことに必死になった結果として起きたことでした。

競争社会が進展し、競争に勝つことの大切さが、学校でも家庭でも、よく語られるようになりました。社会に役に立てる人ばかりが礼賛される時代の中で、私たちは無意識の中で、「役に立たない人」を排除したり、差別したりしてはいないでしょうか?

そこで改めて今回の小論文の原文を読み返してみると、また違った視点が得られるのではないでしょうか。ぜひ現代社会が「排除の時代」となっている側面があるのではないか?なぜそういう時代になってしまったんだろうか?そんな時代をどうやったらより良くできるだろうか?こうした素朴な問いを大切にして、考えてみてください。それが難関大のAO入試や小論文の一番の対策になります。

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