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夢がひとつ叶った日

絵を描くことが好きだった。


とは言っても、本気で絵ばっかり描いてたわけじゃなくて、たまに描いては楽しいなって、それくらい。

いつかこの絵を何かの形で作品に出来たらなって、すこーしだけ思ってた。


すこーしだけ。





大人になった私は絵を描いていた。


「ここ、こんな感じでどうですか?」

「天才!それでいきましょう!」

「ちなみにここの表情とかは?」

「あぁー、今のままでも全然いいけど、一旦もうちょい哀しげな感じで見てもいい?」



打ち合わせをしながら、修正したり、色々試してみたり。

自分じゃ思いつかない構図とかを提案されたり、その逆もあったりして、すごく面白い。



あぁ、なんか絵の仕事してるみたい。


いや、そうなんだけど、まさかこんな急に絵のお仕事もらえると思ってなかったからびっくりだ。





Twitterに流れて来た募集。

あ、これだ。って思って応募してみたら、まさかの採用…!



すこーしだけ思ってた、小さな夢が急に目の前で大きくなって、それを捕まえようと必死になった。




私は今、絵本の絵を描いてる。


まだ捕まえる途中なのかもしれないけど、きっと手は届いた。


この絵が本になって、沢山の人に私の絵が届くんだ。


へへ。





「いやぁ、早くこの絵見てもらいたいよねぇ。みんな気にいるだろうなぁ!ワクワクするね!いい人見つけたぜ。って言いふらすんだー!」

「あ、でも私、顔出しとかしない方向でいこうと思うんですよね」

「あら、そうなんだ。じゃあペンネーム作ろうよ!可愛いのがいいよね」

「前ちょっと考えてたのがあるんですけど、○○○○ってどうですか?」

「えっ!!ごめん、それはちょっとあの、ごめん!」

「なんかマズかったですか?」

「元カノの名前と全く一緒なんよ」

「あ!それはやめときましょう!笑…じゃあ、うさぎとかどうでしょう?もりのうさぎ!絵本の世界観にも合ってるし、セーラームーンみたいで可愛くないです?」

「100点!それでいきましょう!」





そして出来上がった絵本。


「うさぎ先生!届いたよ、絵本!」



そこには本の形をした私の絵。


表紙には「え もりのうさぎ」。



うわぁー、ホントに出来ちゃった!


前からすこーしだけ、ほんのすこーしだけ、そうなったらいいなぁって思ってたことが形になったんだ。

ちゃんと捕まえられたんだ。

まだ最初だけど、これからどうなるか分からないけど、私の小さな夢がひとつ叶ったんだ。

今それがすこーしずつ、ほんのすこーしずつ大きくなろうとしてるんだ。




あの時、思い切って応募してみてよかったなぁ。



へへ。



「次はどんなの作りますか?」

「えっとね、次はねぇ…」






第3話〜夢がひとつ叶った日〜

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