ゲーム開発プロジェクト上流のプロデューサーとディレクターとプロジェクトマネージャーの三権分立

はじめに

本記事では、ゲーム開発においてプロデューサーやディレクターに比べて縁の下の力持ちで影の存在になりがちなプロジェクトマネージャーの仕事について、理想とするあるべき姿を定義していきます。

主観入りまくりの心構え的な話で恐縮ですが、プロジェクトマネージャーを目指す人やそのキャリアアップを考えている人、開発のクオリティを上げるため、など何かしらの一助になれば幸いです。

気が向いたら開発にもう少し役立つかもしれないネタの記事も書いていくつもりです。

ゲームプロデューサーとゲームディレクター

まずゲーム開発でプロジェクトのトップといえばプロデューサーやディレクター、という役職を思い浮かべると思います。
この2つの役職の定義は曖昧なことが多く、会社やプロジェクトによっても様々で、領分が重なるところもでてきます。
共通イメージとして、プロデューサーは売れる企画を考える人、ディレクターは面白い企画を考える人、というくらいの定義はできそうです。

もう一歩踏み込んで定義をしていきましょう。
売れる企画、面白い企画、を実現可能な仕様(設計)に落とす役割はディレクターにあるといっていいでしょう。
その仕様(設計)を実現するためにプロジェクトメンバーが動いてゲームがつくられていきます。
このような状況からディレクターは現場監督、であり、企画から開発まで一手に責任を負っているゲーム開発の花形、といったイメージが一般的にあると思います。

開発の規模によって生まれるプロジェクトマネージャー

もしプロジェクトの規模が小さい場合、仕様書をつくったり、メンバーのタスクやスケジュールを把握するのはディレクターが一人で賄えるかもしれません。

規模が大きくなるにつれて、このディレクターの仕事を分担する必要が発生します。
プランナーに機能毎の仕様やタスク(スケジュール)管理を渡していくか、プロデューサーやプロジェクトマネージャーに全体のタスク(スケジュール)管理を渡していくか、その合せ技です。

このあたりでようやくプロジェクトマネージャーの出番です。

プロジェクトマネージャーのいちばん大事な仕事

このように役割が細分化されてくると、誰が何を決めるか、が曖昧になってくることもあります。
要は人手が足りてないという事象から起こるので、とある現場ではプロデューサーやプロジェクトマネージャーが仕様を決めることもあったりします。(現場が混乱なく動けていれば悪いとは思いません)

このような状況で需要が生まれるので、プロジェクトマネージャーの仕事は第一に「プロジェクトを円滑に回すこと」です。
そのためには時にプロデューサーやディレクターより強い裁量でプロジェクトを推進する必要もあります。

プロジェクトマネージャーというと、当たり前のようにタスク管理、スケジュール管理、所謂ヒト・モノ・カネの管理、が主な仕事になってきます。
しかし、本当に必要なのは、普段管理している情報や開発の経験から、プロジェクトをより良く推進するための判断をする、ということです。

時に費用対効果の悪い仕様を差し止め代案を出し、時により良いワークフローを提案し、開発機能の優先度を精査したり、とその範囲はかなり広く、
スケジュールを守るだけではなく、限られた資源で最高のクオリティを出す、もっともクリエイティブな仕事だと思いましょう。

これができないと、ただ決まったことを推進し、工数が増えたら注意し、決めてくださいと迫る、だけの人になってしまいます。
タスクやスケジュールを管理しているからこそ、プロデューサーやディレクターに、決めてもらう立場、から、一緒に決める立場、を目指しましょう。

最強のプロジェクトマネージャーの定義

ゲームプロデューサーやゲームディレクターに必要なスキルとして、プロジェクトマネジメント、というワードはよく出現します。

・ゲームプロデューサーが読むべき本

・ゲームディレクターが読むべき本


現場によってはプロデューサーやディレクターは「決めるだけ」で、「あまりマネジメントはしていない」、という印象もあるのではないでしょうか。
偉い人ほどやらなくて良い雰囲気もあったりするかもしれません。
(が、そういう人が現場に権限を委譲できていないと不幸なプロジェクトになりやすいです)

プロジェクトマネージャーや進行管理といった役割の人がいるのが当たり前という環境になれていくと見失いがちですが、本来「何をつくるのか」と「どうやって作るのか」は合わせて考えるものであり、決してヒト・モノ・カネ、だけを切り離すことはできません。

プロジェクトマネージャーがタスクやスケジュールを見ることになるのは、そこが役割として切り出しやすいことと、上流の工程において敬遠されがちなところ(クリエイティブな仕事ではないという誤解)、からきていると思います。
裁量を持たなかったりスキル不足のプロジェクトマネージャーが生まれると、プロデューサーやディレクターとのパワーバランスが崩れ、計画はよく狂い、開発は遅々として進まなくなる、という可能性が高くなります。

現場理解がないプロデューサーは予算や社内政治等で不適切な制限を設け、
予算(スケジュール)理解のないディレクターは無茶な企画(変更)で計画を壊し、
企画(設計)理解のないプロジェクトマネージャーはリスクのある計画を立て、
プロジェクトが不幸になります。

逆にいうと、売れる面白い企画を理解し、実現するための設計手法(仕様)や開発を理解し、ヒト・モノ・カネを把握した上で、はじめてすべてを俯瞰してプロジェクトマネジメントができると言えます。

すべてを理解したプロデューサーとディレクターとプロジェクトマネージャーが、適切に業務を分担することができれば、理想のプロジェクト運営ができるでしょう。
とはいえ実際にはそれぞれの得手不得手を上手く分担し、適切な役割分けや指揮系統の確立を行い、ボトルネックにならないような体制を構築、していくことになります。

そのため、私が思う最強のプロジェクトマネージャーは、プロデューサーよりもプロデューサーらしく、ディレクターよりもディレクターらしくある、ということを目指すべきだと思っています。

異なる意味のPM

本記事で定義したプロジェクトマネージャーとは明らかに定義が違う役割がゲーム業界にもあります。

同じヒト・モノ・カネでも、環境や資源の管理を中心にし、総務や法務など開発以外のことが業務である、と定義するものです。

また、ゲーム業界ではあまり使われませんが、プロダクトマーケティングマネージャー、プロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、といった言葉もあります。
順にプロデューサー、ディレクター、プロジェクトマネージャー、が近しいニュアンスだと思います。

同じPMという言葉でくくられていても定義が違ったりするややこしい職種です。

まとめ

極論かもしれませんが、プロジェクトマネージャーが必要になる規模のプロジェクトにおいて、その理想はプロデューサーやディレクターの代わりを務められること、と言っても過言ではないでしょう。

冒頭でも書いた通り、気が向いたら他にもプロジェクトマネージャーに関する内容を記事にしてみようと思います。

↓こんなイメージの記事書こうかなと構想中です。期待せずにお待ちください。

【スケジュール管理は誰の仕事?プロジェクトマネージャーがボトルネックになる罠】
 → すべての職種に当てはまる、分業による悲劇
 → 掛け算のチームと足し算のチーム
【進行管理からプロジェクトマネージャーになるための壁】
 → 起きた事象を整理整頓する(進行管理)
 → 事象を予測しコントロールする(PM)
【プランナーからプロジェクトマネージャーになるための壁】
 → 分業の檻から抜け出して企画・仕様・デザイン・実装・テストまで一貫して把握しよう

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