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その鞘を私の形にしてみたい (閑吟集2)



「奥山の朴の木よなう 一度は鞘に なしまらしょ なしまらしょ」 (閑吟集)

日本の工芸品となっている日本刀は、刃の美しさだけではなく、その反り返った刃を余すことなくぴったりと納める鞘もまた忘れてはならない。

そのかたち、長さに見合ってきちんと綺麗に収める鞘のほうが、刃よりも素晴らしいのかもしれない。

日本刀と比喩されることがある男の分身も、その大きさ、形は、人によって大きく異なるもの。

それはまさに顔が違うように、体型が違うように、男の個性を表し、長刀から短刀まで、妖刀から鈍刀まで、しっかりと砥がれた刀から、錆付いてしまっているものまで。

この個性は男よりも、女のほうが良く知っているはずで、 それは見た目の感じや、口に含んだ味や、そして自らに取り込んだときの感触などから自然に経験として蓄積し、気がつかぬままに自分の鞘の個性も知っていくのかもしれない。

男の刀の形は生まれもったものでどんなに経験を積もうともそれを変えることは出来ないけれども、
女の鞘は相手によって変幻自在になれる力もあり、あたかもこの世に一つしかない日本刀を納める鞘にだってなれる。

その時は何事も切り落とす日本刀も、暖かい鞘の中で安らぐことになる。それまでに鞘の中でさんざん抵抗して暴れることを過ぎれば。

さて、男の刀が女の鞘を自分に合うようにしていくのか。。

それとも女の鞘が男のかたちに合うように変わってゆくのか。。

「奥山の朴の木よなう 一度は鞘に なしまらしょ なしまらしょ」 (閑吟集)

あなたのそれはまるで山奥の伝説の樹のようだ。その樹を切って私のこの刀の鞘にしてみせよう。

抱きたい女とめぐり合った時、自分の日本刀をその鞘に納めてみたいとい男の心理。

もしも自分の形に合わないのなら、合うようにその鞘をなじませてみせよう。 あなたの鞘を、私の日本刀しか納められないような鞘に変えてみたい。

他の男のなまくら刀などでは、感じない鞘にしてみせる。 

そう思われたら女は幸せか?

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