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わずかな時間でも会えることが喜びならその恋は本物 (宗安小歌集13)


「一夜二夜とも言はばこそな よしせめて、朝顔の花の露の間なりと」(宗安小唄集)

恋人との一回の逢瀬でできることは限られている。

理想的には、食事しながらたくさん語り合い、映画か買い物をゆっくりと楽しみ、一緒に歩き、そしてたっぷりと時間を気にせずに、抱いては休み、休んでは絡み合いながら裸で過ごす。

そんな理想的な時間を過ごすことができれば、きっと身も心も充実して満足できるのは言うまでもない。

しかしそんな恵まれた時間をいつも共有できる恋人たちなどなかなか無く、環境や仕事や家庭のことなどで逢うことすらなかなかままならない場合がほとんどであろう。

互いの体を知ってしまうと、おのずと逢うたびに体を求めたくなり、セックスをするための時間と場所があるかどうかが逢瀬の条件となってしまうこともあるやもしれず。

しかし、それでも、そんな贅沢な時間などなくてもいいから、一目だけでも会えるなら会いに行きたい。

そんな気持ちになれるのもまた恋の力。

そして短い逢瀬の後に、じゃあまたね。今度はゆっくり。と手を振って別れる。
でもそれでも一目会えたのだからとっても幸せな気持ちになれる。
会えなかった間の時間をゼロに戻せる。

そんなふうに想いあえるようになったときこそ、その恋は本物なのだ。

「一夜二夜とも言はばこそな よしせめて、朝顔の花の露の間なりと」(宗安小唄集)

一夜、二夜も一緒に過ごしたいなんて言いません。そう、せめて朝顔の花にしたたる朝露のような短い時間でもご一緒できたならそれで幸せなのです。

あなたがそう想って会いに来てくれるならそれに応えようと思い、自らの心もまた潤うのなら、その恋も本物。

だから、次にたっぷり時間があって会えたときもまた格別の時間となるだろう。

一目逢って心が潤わせ、
ゆっくり逢って体も潤わせる。

その時はあなたの花芯も豪雨の後の朝顔の露のように、たっぷりと湿ることだろう。

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