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いとも難しき機嫌を損ねた女の心のほどきかた (閑吟集37)



「ただ置いて霜に打たせよ 夜更けて来たが憎いほどに」(閑吟集)


恋人が冷たい雨の中あなたに会いに来てくれたら、

普通なら何をさておいても扉を開けてあったかい部屋に招きいれ、

濡れた服、髪を拭いてあげるだろう。


ところがいろんな心理が複雑に絡み合ってこんがらがっている時に、

自分でも不思議なくらい偏屈になって、

扉を叩く音に耳を塞ぎ、知らないふりをしてしまうこともある。


なによ、あんな奴、風邪引いてしまえばいいのだわ。

さっさと帰ってよ。

と思う気持ちの裏に、

はやく招き入れたいという気持ちも、

心の中にゆらゆらとよぎっていることがわかっていながら。


そんな複雑な気持ちになってしまうのは、

男のちょっとしたデリカシーのなさ、些細な失言、

あるいは浮気心に対する嫉妬心。


男から見れば恋人が機嫌を損ねた時ほど、

その対応に困ることはなく、

なだめようと思って言ったこと、

したことがかえって油に火を注ぐことになったりして、さらにうろたえてしまう。


こんな時の男は普段の恋人の前での、

いつもの凛々しい姿、男らしい姿など見る影もなく、

ただたたうろたえた、おろおろする姿を見せるのみ。


そんな格好悪い男の姿を見て、

女は逆に心をほどくことになったりするから、また女の心は難しい。


かっこつけたり、言い訳したりするほうが逆効果。


「ただ置いて霜に打たせよ 夜更けて来たが憎いほどに」(閑吟集)


ただ外に立たせて、霜に打たせていたらいいのよ。

夜も更けてきたけどあんな憎たらしい奴、どうなってもいいわ。


女の心理がとっても良く伝わり、

そして霜に打たれて軒下で震えている哀れな男の姿も目に浮ぶ。


でも何かほんのちょっとした解決策があれば、

女の心の氷は一気に溶け、湯気を上げる温泉の湯に変り、

冷えた男性の体を温めることになる。


その激変もよくあることで、

男はそれまでの冷たさが身に染みているから、

なおさらそのときには狂喜乱舞する。


しかし、そのほんのちょっとした解決策が、

男にも女にもなかなか見つからないから、恋は難しい。

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