そんなに見つめたらだめですよ (閑吟集10)
「な見さいぞ な見さいぞ 人の推する な見さいぞ」
「思ふ方へこそ 目も行き 顔も振るられ」
(閑吟集)
自分の恋人がいわゆる一眼をひくいい女、いい男の場合、
とっても贅沢なことであり、幸福なことであることは言うまでもない。
もてる人気者を彼女、彼氏にできたのだから、それは人からの羨望のまとにもなり、鼻が高いこと。
しかしその反面、あまりに素適な人、人気のある人だから、もしかしたら他の人にとられてしまうのではないかという漠然とした不安、あるいは嫉妬心にさいなまれると言うことにもなってしまうから厄介。
では、どうすればよいのか。
素適な人を彼(彼女)にすることが出来た、贅沢税みたいなものと思って、笑っているしかないのだろう。
素適な人を恋人にすると、その人が目立つから、二人の間柄が露見してしまいかねないという心配もあり、 そして貴重な逢瀬の時間までも人の目がどうしても気になってしまう。
忍び逢いをしていると言うのに、あなたの美貌は目立ってしまってしかたがない。
しかし実はもっと目立っているのは、その恋人を見つめる自分のほうだと言うことに、自分が意外と気が付いていないのだ。
「な見さいぞ な見さいぞ 人の推する な見さいぞ」
「思ふ方へこそ 目も行き 顔も振るられ」
(閑吟集)
「そんなに見つめたらだめですよ。二人の仲を人が気が付きますよ」
と男をたしなめる女の言葉に対し、
「あなたが愛しいからこそ、あなたを見つめ、顔も振り向きたくなってしまうのだよ」
と返す男の返事。
人に知られては困ることはわかっているのに、でも心からにじみ出る行動、言動を包み隠すことは、恋の道にいとも難しき。
それでは、もてない人、人気の無い人を好きになればよい。
自分が好きになればその人が世界で一番の人。
されど最初からそんなことを意識して人を好きになったりする人はいない。
結論は、周りがどうあれ、二人しっかりと絆を固くしておくことがなによりのこと。
あなたが美しすぎるからいけないのだ。
どんな女が現れようとも、自分よりもふさわしい女は他にはいないという自信を揺らがせないことが、何よりもあなたをさらに美しくする。
そしてあなたの自信がさらに私を虜にする。
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