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ただのコメディー映画ではない!?「Don't Look UP」感想と考察 *視聴後推奨

こんにちは。今回紹介および考察をいう映画はNetflixオリジナルの映画である「Don't Look UP」です。

この映画の主演はレオナルド・デカプリオ、ジェニファー・ローレンスです。あらすじは、ある日人間を滅ぼすほどに大きな地球に衝突する彗星を見つけてしまった天文学者は大統領にそのことを報告する。しかし誰も本気にせず大統領も人気取りの道具としてしか使わない。自体は悪化するばかり。といったものです。

この映画は必死な天文学者と何も気にしない人たちのその温度差から生じるブラックジョークであふれており、特に結末はネタバレになるので詳しくは言及しませんが普通の映画なら泣いてしまう場面でも笑えるという良質なブラックコメディー映画です。

ですが今作はそれだけではないメタファーのようなものが多分に含まれていてただのコメディ映画というよりこの世界を痛烈に風刺していると感じました。そこでこんかいはネタバレ込みで考察をしていきたいと思います。見た後に読んでもらうのが良いと思います。

今作はコロナ後の世界の強烈な風刺になっています。制作自体はコロナ前から企画していたようですからそういった意図はないかもしれないですが、実際この作品を見ると今のコロナ自体と重なるところが多分にあります。

1.専門家以外誰も数字を理解できない

まずひとつはデカプリオやNASAの長官、専門家以外誰も本当の意味で危機を理解していない点です。専門家は数式を駆使したり統計を使って物事を予測、理解しそれを発表しますが一般の人間でそれを理解できる人は本当に少数です。そのため理解できないことは陰謀だ、嘘だと言う人が本作でも沢山います。更に本質を理解しているが故に警告を発する人間を先導者のように扱っています。またセンセーショナルな言葉では理解できても、専門的な言葉を調べ理解する人というのが今作ではほとんどいません(信じている人、信じていない人も両方において)。

これは実際コロナ下のもとでよく見られた光景です。実際現場の医師や研究に携わっている学者の意見というのは実は数字で溢れており解釈がとても難しいものです。そんな情報をニュースでそのまま使うわけには行かないのでセンセーショナルで目につくような見出しで報道することが多々ありました。それもむべなることでほとんどの人が論文を読んだことすらなく正しく解釈できないからです。そのため数字を起因としていることを信じない人というのは驚くほど多く、ワクチンの接種後副反応についても大いにその傾向が見られます。ワクチンの副反応を数字を起因としたデータでは陰謀だと信じることをせず、周りで後遺症がでているというセンセーショナルな情報を信じる人が一定数います。一方で盲目に調べることをせず信じている人が(危険性がないとも誰も断定していない)一定数いることも、このコロナ下で過ごした人なら一度は目にしているでしょう。そんな今の状況を意図的ではないにしろ表しているこの映画は、ただのフィクションとして笑えるもの以上のリアリティを持っています。

2.タレント化する専門家たち

今作で一番興味深いのはデカプリオ演じる天文学者が最初は非常に学者らしい物言いと、姿で登場しますがテレビに英雄のように取り上げられてから研究からは外れ非常にTVタレントのような人物として変貌していくさまです。これ自体はコメディとして非常に面白い点ですがこれもこのコロナ下で何度も見た光景です。

「学者というのは断定的な言葉を使わない」こんなセリフが今作ではありました。これは正しく専門家や学者は実はデータを確からしいという点でしか評価できません。なぜならほとんどの学問はデータを集め総合的に統計を駆使して確からしいということを証明することで進んでいます。この結果は確からしいというだけで断定できないのでひっくり返ることがあることも学者たちは認識していますし意識しています。それ故に断定的な物言いをしません。しかしそれではショーとしてはおもしろくないがために断定的な物言いを求められます。最初はそれに抗いますがその後、断定的に面白く言うタレントのような専門家たちが(そちらのほうが求められていることもあり)増えたのをみなさんは思い出せることでしょう。彼らは少しずつ評論家のようになり専門外にも口出しし始めてしまいます。このようになさそうである話なのです。

3.民主主義最大の弱点

今作では彗星はあくまで政治の道具として扱われます。そのため危機に対する適切な対応ができないというまさにこれもコロナ下で何度も見たような光景です。

民主主義は民衆の支持をより得られる方向に進むことでよりよい結果に導くという政治体型です。この政治体型には良い点も勿論ありますが、悪い点があります。それは権力者たちの人気取りに先行していて、正しいことを行うことに焦点が向いていない点です。そのため正しい(化学的に)な政策でも人気取りに関係がなければ実行に移されることはありません。これもアメリカでトランプ大統領がコロナウイルスを軽視したため(支持層が軽視派だったため)に爆発的に感染が広がった経緯からも見て取れるように現実世界で実際に起こりうるシナリオだということがわかります。

4.決断は人生を変える。

一方でこの映画では前向きなメッセージもあります。デカプリオ演じる天文学者はアプリ会社BASHのCEOにAIの分析によってその最後は孤独であると告げられます。このAIの性能は確かで、大統領はそのとおりの死を迎えます。しかし天文学者は自分で考え、決断し最後は家族と一緒に孤独ではない死を迎えます。このように決断さえすれば(今作では殆どの人間が決断せずお金などに流される。)人は運命を変えることができるのです。そのような前向きなメッセージを受け取りました。

5.結論

この映画は、コメディ映画だから起こり得ないよねということでは片付けられないなんだか底冷えするような映画でした。これを見ればいかに今の状況が馬鹿げているかもわかるし、そしてどうしたら失敗しないかを教えてくれます。しかしこのような視点を持たなくても勿論楽しめる映画ですし、コメディとしては最高のできだと思います。Netflixおそるべし…。

長い文章読んでくれてありがとうございます。ではまた。









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