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びっくりの夫婦

お友夫婦の話。
19歳で結婚して子供1人を抱える若夫婦が僕の身近なところにいる。

若い夫婦だから貯金もほとんどなければ収入も多くはなく、奥さんは働こうと思っても子供を抱えていては身動きが取れない。
旦那さんはクラブで働いていたけど、自分の夢を追い求めて360キロ先の東京に自分の店を構えた。
「家族が生活に困らないだけのお金は毎月送るから」と、渋る奥さんを説得し地方に2人を残して単身赴任というか出稼ぎというかに行った。
お店を構えようかと悩んでいた時には、僕も相談に乗ったし、家族を困らせないことを条件にするのであればと、賛成もした。

そこで突然、奥さんから僕にLINEがきた。
あたりまえのことだが、普段は話すこともないし連絡を取り合うような間柄でもないから嫌な予感がしたが、案の定その予感は的中。
「〇〇が2ヶ月生活費を入れてくれないんだよね…実は、私の実家に生活費の面倒を見てもらってるの」ということだった。

旦那は一体何を考えているのだろうかと、事情を聞くと、これまた予想通りお店の経営が厳しくてお金を送れるような状況ではないとのこと。
僕も賛成した手前、簡単に「辞めろ」とか「もう帰ってこい」などと言えるはずもないが、だからと言ってお金を出して助けるだとか経営を手伝うなんてバカなことをするつもりも毛頭ない。

そもそも、結婚してもなお自分の夢を追うことは許されるのだろうか。
個人的には、旦那さんには家族を持つことの重みをもっともっと理解してもらいたい(自分は未婚なので余計なことは言えないが)。
自分の夢を追うことを最優先にするのであれば、結婚をするにも子供を作り育てるにもタイミングというものがあったはず。
持論であるが、男が過度に強い家庭というのは経験則からしてろくでもない。
「強い」というのは何もバイオレントというだけでなく、決定権を牛耳っていたりやりたいことをやりたいままにやれる状況にあるという意味も含意しているが、小さいコミュニティであれば余計に、何事も独裁的な状況というのは好ましくない気がする。

なんだかんだあったとて、結婚に至ったのだから仲は良かったはずだし夫婦としても個々の男女としても信頼関係ができていたと思う。
だけど、彼氏彼女という恋愛関係から夫婦という関係になってようやくわかってくるお互いの性格や考えもあるだろう。

「夫婦は所詮は他人」という言葉があるが、全く理想的ではないとて、事実ではある。
だとすれば、相手に譲歩するということが非常に大切なことであり、今回の一件にこれを当てはめると奥さんはすでに大きな譲歩をしているし、旦那さんは譲歩の恩恵を受けている。
どう考えても、ここから奥さんがもう一歩二歩と譲歩する余裕も余地もないし、旦那さんだっていつまでもやりたいことをやれるような立場ではない。

立場上とはいえ、仲間なのに「辞めてしまえ」言えない僕も僕で情け無い。
そもそも、根本を辿れば結婚しようかという段階でそれを考え直させることをするべきだったのかもしれないが、流石にそこまでプライベートに介入することは不可能だし、やってはいけない。

今回の件で自分自身が考えさせられたことは、実は夫婦論的なところではなく、人(のプライベートや自己決定に介入するという意味で)にどこまで関わるべきかということだった。
相談されれば何かしてあげたいと思うのは人間としても仲間としても当然のことだと思っているが、結局のところ僕は彼らの親でも配偶者でもないし、僕の子供でもないからして、最終的な責任を取ることはできない。
だからと言って彼らを放っておくことだってできやしないし、そんな強さも持っていない。

かなり抽象的な繋がりではあるが、そんな意味で、競技者ではなく表現者として自分の身体で何かを伝えるべく最後の試合に臨もうと覚悟を決めた昨日、4月3日の夜。

そういえば、「たこわさびいかがですか?」に便乗し、調子に乗って3つも頼んだら辛くて食べられなかったいつしかの飲み会でも同じことを思っていたような。

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